第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.6
「それでね、健斗くんがこの前料理が苦手って言ったから、私たちお昼ごはん健斗くんに任せてみたの」
客足が少なくなってきたころ、健斗と麗奈と店長は三人でカウンター席に座って話していた
「楽しみに待ってたら、キッチンから変な匂いがしてきて、すごい不安になってきたんですよ〜……そしたら健斗くん、ナポリタン持ってきたんです」
「あぁ……この前ちゃんとナポリタンのレシピ教えてやったもんな」
と店長は健斗に言うと、健斗は店長と目を合わさず苦笑していた
「そのナポリタン、色黒かったんですよ?」
「はっ?」
店長は口を開けて驚いていた。普通ナポリタンはトマト色だけど……
「……イカスミでも使ったのか?ナポリタンに?」
健斗は頭を掻きながら恥ずかしそうに言った
「いや……あの、その……ちょっと焦がしちゃったみたいな?」
「あれちょっとどころのレベルじゃなかったよ!?真っ黒だったじゃん!!」
「う、うるせ〜な!!俺だって自分なりに頑張ったんだよ!!」
と健斗はむっとして麗奈に怒鳴った
「私とお父さんとお母さん、食べるの断念しましたから」
「そ、そこまで酷くはなかったっしょ?食おうと思えば食えたのに……」
「食べられないよあんなの……」
すると店長は呆れ返るようにため息をついた
「まぁ確かに……以前厨房でサンドイッチを作らせたら見事に失敗しやがってな〜……こいつ料理がものすごく下手くそなんだ」
「健斗くん知ってる?料理が上手な人ってモテるんだよ」
「う、うるさいうるさいうるさ〜い!!別に料理が苦手でも死にはしねぇ!!」
健斗が怒ったように怒鳴ると麗奈と店長は声を立てて笑った
「アッハハハハ♪健斗、麗奈ちゃんに料理教えてもらったらどうだ?」
「教えてあげよっか?」
健斗はしばらく麗奈を見た……確かにこいつ、本当に料理が上手だもんなぁ……
こいつに料理教えてもらったら、本当に上達するかも
……
麗奈が今言ってた……料理出来る人間と料理が出来ない人間どっちがいい?って訊かれたら……やっぱり料理出来る人間の方がいいよな……
「また今度教えてもらうよ」
「あらそう?じゃああたしが教えてあげよっか?」
ふと健斗の後ろから、商店街のおばさんがそう健斗に言ってきた
どうやら話を聞いてたらしかった
健斗は苦笑しながら答えた
「遠慮しときま〜す……」
「何だい、つまらないねぇ?あ、竜平さん。ごちそうさま。勘定お願い」
「はいよ」
と言いながら、店長とおばさんはレジの方へと歩いていった
もう今は客がいない
健斗は店長にもらったミルクティーを飲みながらふぅっと息を吐いた
「……ん?」
麗奈がニヤニヤしながら健斗のことを見ていた
「なぁ〜んか、働いてる健斗くんも新鮮だったなぁ〜」
「何だよそれ」
「いつもこんな感じ?」
ふと麗奈がそう聞いてきたから、健斗はゆっくりと頷いた
「まぁ。こんな感じなんじゃない?」
「そっかぁ〜。楽しそうだね?私もここで働こうかなぁ〜?」
「やめとけよ。結構しんどいし」
健斗はふうっとまたため息をついた
「お前は部活やれって。もったいないよ」
「……健斗くんもサッカー部やればいいのに……」
健斗はそれを聞いて苦笑した
「そうだな。けどあいつのいないサッカーなんてやっても意味ねぇよ」
と言いながら健斗は笑った
「翔くんってそんなにサッカー上手だったんだ」
「んあぁ。スゲー上手かったよ。俺と勝負して互角にやりあえんのはあいつくらいだったからなぁ」
麗奈はそれを聞いて、ふと笑った
「健斗くんってサッカーそんなに上手いんだ?どんくらい上手いの?」
「……さぁ……」
「え〜?県代表になるくらい?」
するとだった
おばさんが去ってから店長がおうっと時計を見ながら驚いていた
「健斗、そろそろ店閉めるぞ」
「え?」
健斗もやっと何時間ぶりかに時計を見た
するとだった。時計は8時半を越えていた。閉店時間までいたのは初めてのことだった
今日は麗奈がいて、色々話をしてたので、時間を忘れていたのだ
「うわっ……ワリィ麗奈。めちゃくちゃ長引いてた」
健斗が謝りながら立ち上がり、Yシャツのボタンを外していた
麗奈は笑いながら首を横に振った
「ううん。楽しかったし。別にいいよ〜」
店長は、机を拭いたり椅子を上に乗せてたりしていた
健斗はそれを手伝おうとしたが、それを麗奈が止めた
「あ、私が手伝っとくからさ。健斗くん着替えてきなよ」
「あ……ワリィ。すぐ着替えてくるわ」
と言って健斗は急いで店の奥へと入っていった
麗奈はそれを見ると店長のやってることを真似をした
主に店長が机を拭いたあとに、机を乗せるという動作をした
店長に微笑みながら「ありがとう」と言われたときは何だか心地よい気分だった
「麗奈ちゃんは、部活何やってるんだっけ?」
ふと店長にそう訊かれて、麗奈は苦笑しながら答えた
「いえ……まだ何も入ってないんです。でも、吹奏楽やろっかなぁって」
「吹奏楽?いいじゃないか。知ってるか?健斗は吹奏楽の演奏が大好きなんだ」
「そうなんだ」
店長は笑いながら言ってきた
「毎年この商店街の祭になると、吹奏楽の人が演奏しに来るんだ。健斗は小さいころからそれを聞いてたよ」
「へ〜……でも今から入っても七夕祭には間に合いませんね?」
「ま、そりゃ仕方のないことだな」
麗奈はそれを聞きながらふと楽しみにしてた。今は6月の中旬。梅雨の時期だ。そして、7月に入れば七夕祭がある
七夕祭ってどんななのなんだろう?
すごく楽しみだった
「七夕祭って、すごいんですか?」
麗奈が訊くと、店長はゆっくりと頷いた
「そうだな。この田舎町では規模の大きい祭かな。毎年他の町からも人が来るくらいだしな」
「へ〜」
「七夕祭は3日間やるんだ。その1日目とかは踊りとか店とかもいっぱい並んでる。あと2日目でも神乃高の生徒によるバンドや演奏とかもあるし、最終日には花火がある。私が思うには最終日が一番盛り上がるから、その日だけ行けば充分だよ」
麗奈はそれを聞いてますます楽しみになった
「そっかぁ♪すごい楽しみ〜♪」
そんなことを話してると健斗が店の奥から戻ってきた
時刻は9時10分前になりかけている
「ワリィワリィ。店長すみません」
「あ、来た。じゃあ帰る?」
「あぁ。そだな」
「あとはやっとくからいいぞ」
「すみません。じゃあお先失礼します」
「竜平さん、さよなら〜」
と言って店を後にしようとした。するとだった
「おう、麗奈ちゃん」
ふと麗奈は名前を呼ばれ、ゆっくりと振り返った
店長はキッチンの棚から何かを取り出して麗奈に渡してきた
「はい。この店オリジナルブレンドの紅茶のTパックを10個入り。持って帰りなさい」
「え?いいんですか?」
「さっき失礼なこと言っちゃったからね。その機嫌直しで」
それを聞いて麗奈は急に恥ずかしくなった
「そんな機嫌直しだなんて……私そんなこと思ってませんから」
「そうか。そりゃよかった。まぁ、またいつでも来なさい?いつでも大歓迎するからね?麗奈ちゃんがいるとこの店の雰囲気がかなり良くなるんだ。それは今日のお礼ということで」
「そんな……ありがとうございます」
麗奈が嬉しそうに笑うと店長は優しい笑顔になった
「また来たくなったらいつでも来なさい」
「はい♪絶対また来ます!!ありがとうございます」
「その笑顔が見れれば充分。それじゃあな」
「はい。さよなら」
麗奈は嬉しそうに笑いながら、健斗の元に走っていった
二人は店長にお辞儀をするとゆっくりと店を後にした
健斗は微笑みながら麗奈を見た
「よかったな」
「うんっ♪エヘヘ♪」
子供みたいに笑う麗奈が何だか可愛いくって、健斗も見てるだけで嬉しくなった
麗奈を後ろに乗せて、二人はゆっくりと暗い商店街の中を走っていた
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