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第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.21

麗奈はまた一人、この祭りの中を歩いていた。鷹への感謝と後ろめたさが麗奈を引っ張ったが、自分の判断は間違ってないと確信があった

麗奈はとりあえず健斗たちと再び合流出来るかもしれないと一番確率の高いところに向かうことにした

そこは麗奈がはぐれた神乃崎神社だ。もしかしたら、まだそこにいるかもしれないと考えたのだ

麗奈は階段を上り、先ほどの風景を見た。相変わらず人が多い。そしてまるで時間が巻き戻ったような先ほどと同じ風景だった

大勢の人が輪になって踊っている。さっきまで麗奈もあそこで踊っていたのだ。そう考えると、麗奈はふとその手振りを見せていた

「かんの〜ざきお〜〜ん〜ど〜で、おどり〜ま〜しょう〜」

麗奈は周りを見渡してみた。けれど、やっぱり人が多くて、健斗たちがいるのかどうかすらまったく分からない

途方に暮れていると、麗奈はあるものが目に映った

あれは何だろうか?

その目に映ったものの方へと麗奈は歩き出す。それは展示物だった。絵だ

何の絵だろう?そんなことを考えていると、その奥の方にも他の絵が連なっていることに気がついた。なるほど、ここから入って決められたルートに色んな絵が展示されてるんだ

それを歩きながら見れるということだ。けど、何の絵なんだろう。見たところ、子供が描いた絵だというのは分かった

と、するとだった

「おら」

麗奈は突然頭の後ろを小突かれたような感覚を覚えた。びっくりしてすぐに後ろを振り向く。それが誰かなのか分かったとき、また麗奈の胸が高鳴った。そして胸をなで下ろすというのはこういう感覚なんだろう、ものすごく安心感を覚えた

そこには健斗がいた。呆れたような表情を浮かべて麗奈を見ていた。少し離れてただけなのに、その大好きな顔を見ると嬉しさのあまり、涙がでそうになった

「……ったく、どこ行ってたんだよ。バカ」

「あ……うん……ごめん……」

麗奈が戸惑いながらそう答えると、健斗はため息をついてきた

本当にどこに行ってたのかは追求してこない。いや、ただたんに迷子になっただけだと考えてるのかもしれない

麗奈はふと気になって健斗に聞いた

「あれ?みんなは?」

健斗は顔をしかめて答えた

「先に花火の席取りに行ってもらった。これから焼き鳥とか食いながら、花火見に行くよ」

「うん……ん?健斗くん、どうやって私がここにいるって分かったの?」

麗奈がそう訊ねると健斗は後ろ髪を触りながら答えた

「みんな大体、誰かとはぐれたら、まずそのはぐれたとこに行くもんだろ?だから俺、お前がその階段を上ってくんのをずっと待ってたってわけ。お前あそこからしか神社の入り口知らないもんな」

なるほど……と麗奈はそう納得した。射的のときもそうだったけど、健斗は意外と賢い方なのかもしれない

それから健斗は怪訝そうに言ってきた

「お前のおかげで30分くらいあそこで待たされたし」

健斗にそう言われて、麗奈はむっとした表情になった

「すみませんでしたっ!!勝手にはぐれちゃったりして」

麗奈をそっちのけにして、自分は早川とデレデレしてたくせに……

「何だよ」

「別にっ……」

「何だよ。何で怒ってんの?」

「別に怒ってないも〜ん」

プイッと健斗から顔を背けながらそう言うと、健斗は納得行かなそう表情を浮かべた

「……あ、お前これ見てたの?」

健斗が突然麗奈にそう言ってきて、麗奈はふと前を向いた

健斗はこの連なってる絵のことを言ってきたのだ

「うん……ねぇ、これ何の絵?」

麗奈がそう訊くと、健斗は少し考えてから言った

「この辺の小学校の児童が、この祭りにちなんで絵を描いてくれてんだ。それをずらーっと展示してるっつーわけ」

「へぇ〜……」

「ちょっと見てく?」

健斗にそう言われて、麗奈は微笑みながら大きく頷いた






健斗と麗奈は並んで歩きながら、その連なってる絵を眺めていた

健斗の言うとおり、祭りにちなんでの絵など多い。けど、それだけじゃなくって、どうやらその小学校の児童が自分たちで決めたテーマに沿って絵を書いているようだ

例えばこの「神乃崎の自然を守ろう 僕らの手で」なんというキャッチフレーズで始まるこの絵は七夕祭とは関係がない。麗奈はこれらは全て、絵というよりも手書きのポスターなんだということに気づいた

「わぁ~♪可愛い♪」

麗奈の言っていることは確かだった。みんな可愛いらしい絵ばかりだ。子供らしいとも言うべきか

「懐かしいなぁ~……あ、ほら、この学校。俺が通ってた小学校だよ」

と健斗が一つの絵を差して言ってきた。その絵には「神乃崎第1小学校 5年1組 矢島加奈」と書いてある

注目すべきとこは、学校名だけだ

「小学校はみんな一クラスしかないのに、1組とかちゃんと書いてあるんだな」

と言いながら、健斗は可笑しそうに笑った

「どうして1クラスしかないのかな?」

麗奈がそう訊ねると、健斗は微笑みながら答えた

「やっぱり子供の数が少ないからだろうな。そのくせに、この町、小学校が二つあるんだぜ?神乃崎第1小学校と、神乃崎第2小学校があってさ。どっちも一学年に一クラスしかないんだ」

「どうして?」

「だから児童の数が少ないからだって。その二つの小学校の子たちが、神乃崎中学校に集まるんだ。神乃中は一学年に二クラスあって、それプラス隣町の人が加わったのが神乃崎高校になるってわけ。まぁ、どっか街を離れて違う高校を受験する人もいるけど、大体がみんな神乃高だよ」

「ふぅ〜ん……どうして児童が少ないんだろうね?この町って。神乃高でもさ、一学年に二クラスしかないじゃん?それでも一クラス25人でしょ?東京なんて、中学のときは一学年に5クラスもあったよ?しかも一クラス40人前後」

麗奈の話を聞いて、健斗は妙に納得したように頷いた

「それはやっぱり……過密と過疎が原因なんだよ」

「過密と過疎?あ〜……確か、都市部の方に人口が集中しちゃうやつでしょ?」

「それが過密化だよ。で、この町のような田舎町から東京みたいな都市に出て行って……まぁつまり上京か。そんでこの田舎町の人口がどんどん少なくなっていく。それが過疎化。やっぱりそれが一番の原因だと思うよ」

健斗の話を聞いて麗奈は頷いた。

「田舎町には辛い現実だね」

「だよな。人口が減っていくから、家を継ぐ人がいなくなる。さらにその影響で、第一次産業の割合がどんどん減っていく。さらにその影響で、日本の自給率が低下していくんだよな」

それもこれも……と健斗は言いながら続けた

「全部少子高齢化が原因なんだけどな」

「……ねぇ健斗くん」

麗奈は苦笑しながら健斗を見ていた

「健斗くんってさ、意外と物知りだよね」

麗奈にそう言われて健斗はむっとした表情になった

「意外は余計だよ」

「まったくぅ〜、余計なとこに頭ばかり使ってるよね〜?勉強にもそのくらい頭使えばいいのになぁ〜♪」

図星を突かれて、健斗は少しむきになった

「う、うるさいなぁっ!!」

「それに〜、子供の絵なんだからそんな難しいこと考えないでもっと純粋な気持ちで見なよ」

「お前が話を振ってかたんだろーがっ!!」

「アッハッハッハ♪」

麗奈は笑いながら小走りで健斗から離れていき、どんどん連なってる絵を見ていく。健斗は軽くため息をつきながら、その走っていく後ろ姿を見ていた

そして何も言わず、口元だけそっと笑みを浮かべた






「あ〜、面白かったぁ♪」

麗奈は満足そうにそう言うと、全ての絵を見終わって元の場所へと戻っていた。小学生の絵は本当に純粋で可愛くて、心が癒やされたように感じた。たまにああいうのを見物するのも、悪くないものだ

健斗も満足そうな面向きだった

「最後から三番目の子の絵、上手だったな」

「ねぇ?あんなの私でも書けないよっ」

「俺絵なら自信あるからなぁ。あんくらいなら描けそう」

「え〜、嘘だぁ。じゃあ今度描いてみてよ」

「いいよ。お前絶対びっくりするからな、俺の画力に」

「しないし〜♪アハハ♪」

麗奈と健斗は笑いながら、そんな他愛もない会話を広げていた。それから、二人は神社の敷地から出て行く。もちろん、これから花火を見に行くのだ

「川辺から見ると、よく見えるんだぜ?」

と健斗が言ってきた

「ちなみに花火は1時間は続くしな」

健斗とこれから花火を見に行くということは、麗奈にとってちょっぴり嬉しいことであって、またドキドキするものだった

好きな人と花火を見に行くなんて……何だかロマンチックだ

麗奈は上機嫌だった。この気持ちがこのままずっと続けばいいのに……


麗奈と健斗は川辺に向かう途中、ある難関に直面した。それは、この人の多さである。大勢の人が流れるようにある場所へと向かっているようだった

この方向からして、みんなも川辺の方に向かうらしい。当然だ。だってそこが花火がよく見える場所なんだから

詳しく説明すると、この方向に川がある。道になっているとこの横沿いに川が通っているという状況だ。その川とは健斗が麗奈に話したとおり、健斗の家の目の前を通っている川の延長だ

その川辺は小さな坂になっている。芝生が生えている坂、そこから見るのが一番いい。毎年、そこで大勢の人が集まって打ち上げ花火を見るのだ

ということを健斗は麗奈に話してくれた。それにしてもこの数、いくら何でも人が多すぎるような気がする

川辺に行くのすら大変だ。

途中ではぐれちゃったりしないか心配である

「麗奈」

そんなことを考えている麗奈を呼びかける健斗。麗奈はすぐに健斗を見た

「ほい」

「え……」

麗奈はしばらく呆然とした。突然健斗が麗奈に手を差し出してきたのだ。健斗は苦笑しながら、麗奈に言った

「さすがにこの人だし……はぐれないように手繋いでおこうぜ」

麗奈は健斗の言葉を頭の中で復唱した

健斗と手を繋ぐ……手を繋ぐ……

麗奈の顔は一気に赤上した。今までだったら何ともないことだったのに、妙に意識してしまう自分がいた

健斗は戸惑っている麗奈に不思議な違和感を抱いているようだった

「どうしたんだよ。ほら、早く」

健斗に促されて麗奈は顔を赤くしながら頷いた

「う……うん」

麗奈はそっと健斗に近づき、そっと……本当にゆっくり健斗の手に触れる

その瞬間、胸が高鳴った。麗奈が健斗の手に触れた瞬間、健斗から麗奈の手を握ってきたからだった

健斗の温もりを感じた

「離すなよ」

健斗にそう言われて、麗奈はゆっくりと頷いた

と、その瞬間だった。突然健斗が走り出して、麗奈も慌てるようにつられていっしょになって走る

健斗たちは走りながら、この人ごみの中を通り過ぎていく。手を繋いだのはこのためだったのかと、麗奈は納得していた

それでも良かった……健斗と手を繋いで走る……走るを抜かして健斗と手を繋いでいるということが、麗奈なとってどれくらい嬉しいことなのか……

健斗は通れそうなとこを見分けては、麗奈もいっしょに連れて行く

麗奈はそんな健斗の後ろ姿をずっと見つめていた

その後ろ姿を見ると、あの後ろ姿も連想出来た

健斗が松本絢斗と勝負しに行くとき、スパイクの紐をギュッとしめたときの、普段の健斗とはどこか違う雰囲気だった

そんなことを考えると、麗奈は走っている中健斗の後ろ姿を見ながら、色んなことを思い出していた

どうして、こんなに健斗のことを好きだというこの感覚が、どことなく懐かしい気がするのかが分かったような気がした

ずっと……ずっと好きだったんだ。自分でも気づいてなかった。もしかしたら忘れてたのかもしれない

健斗と初めて出逢った日……10年前のことだ

あのとき……あの頃から麗奈は健斗のことが好きだったんだ。健斗と別れた日から健斗にずっと会いたくて……会いたくて会いたくて仕方がなかった

健斗が大好きだったから……

電話しようかと思った。声だけでもいいから、聞きたかった

けど、何て話せばいいのか分からないし……第一照れくさくって電話なんて出来なかった

それから月日が経った。月日が、麗奈の淡い恋心を心の奥底に封印していた

それを忘れて過ごしていた

あんなに大好きだったのに……

けど、健斗とまた再会した……すごく懐かしかった。でも、健斗の方は麗奈のことなんて全然覚えてなかったみたいだ

態度を見れば分かった

けど、麗奈は覚えていた。健斗のことを……

覚えてたよ。けど何だか恥ずかしくって、そのことを隠すことにした

健斗と過ごしていく中、健斗の優しさに触れた

お母さんが死んじゃってから、あんな優しさなんてしばらく忘れていた

健斗といると暖かった。健斗といると楽しくて嬉しくて……幸せだった

そしてまた思い出したんだ。麗奈が健斗のことを好きだったこの気持ち

今みたいに……こんなドキドキを……






健斗たちは一気に川辺に着いた。

川辺に着くと、大勢の人たちがこの道を行き交っている

そして、その川辺の坂にはこれまた大勢の人が座っていた

健斗と麗奈はしばらく走ったせいで、息を荒らしていた

「いや〜、何とか着いたな〜。大丈夫か?」

と陽気に健斗は麗奈の顔を覗き込んできた。健斗はふと麗奈の手を離す
麗奈は少し頬を赤くしながら、俯きながら頷いた

「ヒロがこの道のどっかで立って待ってんだって、だから早く――」

健斗が言いかけているときだった。

突然爆発音が聞こえ、空に光の花が咲いた。健斗と麗奈はすぐにその花を見た。打ち上げ花火が始まったのだ。周りにいる人たちも、歓声をあげていた

健斗と麗奈は一瞬その花火に見とれていた。

綺麗で艶やかな光の花……美しく感動した

爆発音が鳴り響き、周りもかなり盛り上がっていた

「始まっちゃったな……早く行こうぜ」

健斗がそう言うと、また再び歩きだそうとする

麗奈はそれを見た瞬間、嫌な感じが頭の中によぎった

また……ここでみんなのところに戻ったら……また健斗は早川のことしか見ないんだ。麗奈のことなんか忘れて……また早川だけを

せっかく麗奈だけ、今麗奈だけを見てるのに……

そんなんなら……



麗奈はギュッと、健斗の服を掴んだ。麗奈に服を掴まれたことに気がついた健斗は、すぐに佇む麗奈の方に振り向いた

「どうした?」

麗奈は左手を胸に添え、頬を赤くし、目線は若干下に向けていた

健斗の服を右手でしっかりとつかみ、動こうとはしなかった


胸の高鳴りが収まらない……

「……嫌……」

麗奈は呟くように言った

目を伏せて、静かに言った

「……二人がいい……」

「え……」

健斗の表情が変わった。頬を赤くし驚いた表情で麗奈を見つめていた。麗奈も……健斗を見た

次々と打ち上げられる花火の音が聞こえる

健斗は戸惑いながら、顔を赤くして苦笑しながら言った

「な……何だよ。また……男の子の口説き方パート何かかよ……そ、そういうのは好きな人にやれって」

胸の高鳴りが一層酷くなる。健斗のその言葉を聞いた瞬時、鷹に言われたあの言葉を思い出す

『もっと素直になっていいんだよ』

麗奈は……静かに言った



「……好きだよ……」

「え……?」

健斗が聞き返す。麗奈はもう一度……言った



「……健斗くんのことが……好きだよ……」



健斗は口をぽかんと開いていた。麗奈から出た言葉が信じられないのだろう

麗奈がそう口に出したとき、また夜空に大きな花が咲いた


ようやく第6話が終わりました

続いて第7話に入りたいと思います

けれど次の更新は若干おくれるかも

なので、今の評価をよろしくお願いします




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