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第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.5


健斗はオーダーなどを取ったり、その頼まれたものを運んだりして、麗奈はナポリタンを食べながら店長と楽しそうに話していた

麗奈は健斗の働いてる姿を見て、笑っていた

「健斗くん、しっかり働いてるみたい」

と健斗の後ろ姿を見ながら、クスクスと笑った

「よく働くよ?あいつは。小さいころからここに来てたからなぁ……」

「へぇ〜」

こんなお洒落な店に小さい頃から来ていたなんて少し驚きだった

けどそれと同時に、少し羨ましい気がした

楽しそうにお客さんと話している健斗を見ると何だか……

心が暖まった

「この町には慣れたかい?」

ふと店長が聞いてきて、麗奈はゆっくりと笑いながら頷いた

「はいっ♪最初は不安だったけど、今はすごく好きになりました」

「そうか。でもこんな田舎には戸惑うよな。ビルとかがないもんな」

「そんなことないですよ。すごくいいところです。東京よりも空気が美味しいし……私こういう生活に憧れてたんです」

と麗奈は嬉しそうに笑った。そんな麗奈を見ると、店長を可笑しそうに笑った

「何か……健斗から聞いてたのと全然違うなぁ」

「えぇ?」

麗奈は頬を膨らませて健斗を見た

「何て言ってました?変な女〜とか、訳分かんねぇ〜とか、バカ〜とか?」

麗奈の言葉を聞いて、店長は大笑いした

「ハッハッハッハッハッハ!!確かにそうも言ってたなぁ」

「もう〜……私変な女の子ですか?健斗くんの方が変な人です」

と言って、頬を膨らませたまま健斗に向かって舌を出した

それにふと気がついた健斗は不思議そうな表情を浮かべていた

「いや、それよりも……何て言うか……心配してるんだよ、いつも」

麗奈はそれを聞いて、店長を見た

「心配……?何をですか?」

麗奈は本当に不思議そうな表情を浮かべた

心配って……私健斗くんに心配させるようなことしたっけ?

店長はふむっと息を吐きながら、答えた

「2週間くらい前かな……君が時折寂しそうな表情を見せるって……そう言ってたんだ。それが今でも気にしてるみたいだよ?」

「え……」

麗奈はふとあの時の言葉を思い出した

私が畑仕事を手伝って健斗くんがバイトから帰ってきたときに、健斗くんが寂しそうな表情を浮かべて言ってたこと……

『お前……さ、今……楽しいか……?』


そっかぁ……自分じゃそんな表情をしていることに気がつかなかった

ちゃんと見られたんだ……

何だか健斗くんに……悪いことしちゃったなぁ

「過去に辛かったことでもあったのかい?」

「いや……別に……」

と麗奈は苦笑しながら言った。

竜平さんが信用出来ないわけじゃないんだけど……出来れば昔のことは話したくなかったし、思い出したくもなかった


それに……今は楽しいというのは本音だった

毎日が楽しかった

いっしょにご飯を食べる家族がいて、いっしょに遊んでくれる友達がいる……

久しぶりに感じている何も変わらない日常の幸せ。その幸せを少しでも無くすことがしたくなかった

誰にも話す気はなかった……

それに……

「私なんかより……健斗くんですよ」

麗奈はとっても美味しいナポリタンを食べ終わると、静かに続けた

「健斗くんの方が……すごい辛い思いをしてるんですよね」

「……健斗から聞いたのかい?」

店長の言葉を麗奈はゆっくりと頷いて、健斗を見つめた

「健斗くんが、親友を亡くしたって言ったとき……私本当にびっくりしたんです。すごく辛かったよね……」

麗奈は健斗から目を剃らして再び店長を見た

「なのに、あんな風に笑って……怒って…………楽しんで……本当に辛かったはずなのに、ああやって強く生きようとしてる健斗くんが……すごいと思います。一生悔やむような思いをしてるのに……」

麗奈は紅茶を口に入れると、苦笑した

「私だったら無理だなぁ……結衣ちゃんが自分のせいで死んじゃったらなんて……想像するだけで怖いよ……」

本当にそうだと思う

親友を……しかも自分のせいで亡くした過去を一人で背負っていくなんて出来ない……

きっと思いが爆発して、耐えられないと思う

二度と笑うこともできなくなって、ずっと自分を責めて……前を向いて生きようなんて思えない……

「私は健斗くんみたいに強くないから……それに比べたら、私なんか……」

麗奈の言葉の一つ一つを店長は静かに聞いていた……

お皿を拭きながら、麗奈の哀しそうな表情を見ていた

ふと麗奈から目を剃らして、健斗を見た

健斗は楽しそうに、商店街のおばさんたちと話している

前と違う、本当の笑顔を見せて……店長はそれを見るとふと笑った

「ちょっとそれは違うかもな……」

店長が静かにそう言うと、麗奈は静かに耳を傾けた

「違うって?」

「あいつは全然強くないよ」

と言うと、店長はカップにブレンドコーヒーを注いだ

麗奈はその言葉の意味がまったくわからなかった

「そんな……竜平さんは健斗くんがすごいって思わないんですか?竜平さんだって仲の良い友達とかいるでしょ?もしその人が自分のせいで亡くしちゃったら……」

「もしそれで立ち直れるなら、すごいとは思うけどね」

「どういうこと?」

麗奈が訊くと、店長はふぅっと息を吐いた

「あいつは情けなくって弱い男だと思うけどなぁ〜」

「そんなっ!!」

麗奈は店長の言葉に怒りを感じてしまい、怒声になった

「健斗くんは情けなくなんかありません!!弱くもありませんっ!!」

それだけは言えた

それだけは私が保証する

誰がなんと言おうとも、健斗は情けなくない。弱くもない……

強くて、かっこいい人間だ!!

それをバカにするのは許せなかった


そんな麗奈を見て、店長はにっこりと笑って肩を揺らして笑っていた

「麗奈ちゃんは健斗が好きなんだなぁ」

それを聞いて、麗奈は戸惑いながら顔を赤くした

「ち、違いますよっ……健斗くんは……ただの家族ですから」

「そっか。あいつも同じこと言いそうだな。ハハ♪」

店長はそう言いながら笑っていた

店長の言葉が意味がわからなかった

店長は健斗のことが嫌いなのだろうかと、思ったくらいだった

健斗くん以上に心の強い持ち主なんているのかさえ、疑問だった

少なくとも私はそう思う

だから私も健斗くんみたいに強い人間になりたかった……


健斗くんは私の憧れにもなっていたのかもしれない……

「健斗っ!!」

店長は健斗くんを呼ぶと健斗くんはすぐに店長の方をみた

「ブレンドコーヒー入ったぞ。6番テーブルに頼む」

「はい」

健斗はカウンター席にコーヒーを取りに来た

ふとコーヒーを手に持つとき麗奈を見た

「そのナポリタン美味いだろ?店長特製なんだ」

「あ……うん」

「あ、店長!!俺の給料から代金引かないでくださいよ〜?」

「お、よくわかったな?」

「バレバレです」

と言って健斗と店長は笑いあっていた

そんな様子を見て、麗奈は何だか急に切なくなった

理由はわからなかった

ただ、店長とこんな話をしてたから……


急に切なくなった

それだけだった





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