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第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.20

「やっぱり大森さんだ。どうしたの、一人で」

その男の子は微笑みかけながら、麗奈に優しくそう言ってくる

麗奈はその男の子を見て、少し驚きを感じていた。まさか、こんな大勢の人の中で、彼に出会うなんて微塵にも考えていなかったからだ

まぁ出会うことを考えることというよりも、彼自体のことなどまったく心に留めてなかった方が正しい

けど麗奈は驚いた。また、それと同時に不安を抱いている麗奈に安心感を抱かせたのも事実だった

麗奈もにっこりと彼に微笑んだ

たかくん♪」

鷹と呼ばれる男は、少し照れくさそうに笑った

「鷹くんこそ、何してるの?」

麗奈が鷹にそう訊くと、鷹はまた照れくさそうに笑った

「このフランクフルトの店、僕の父さんがやってるんだ。僕はその手伝いをしてるの」

麗奈は目の前にあるフランクフルトの店を見た。確か……さっきここでフランクフルトを買ったような気がする

でもあのときは鷹の姿は見えなかった。いや、もしかしたらいたのかもしれないが……鷹のことなどこれっぽちも視界に入ってなかったのかもしれない

「そっかぁ♪鷹くん偉いっ♪」

「そ、そんなことないよ。僕、本当は祭りに行きたいんだけど……お父さんが無理やり……」

鷹は言いかけてから、軽く咳払いをした

「えっと〜……大森さん、確か……山中くんや、早川さんたちといっしょにいなかったっけ?彼らはどうしたの?」

と言いながら、あたりを見渡している鷹を見て麗奈は不思議に思った

「うん……あれ?どうして健斗くんたちと来たってこと知ってるの?」

すると鷹はまた少し照れくさそうに言った

「その……実はさっき大森さんたちが、ここでフランクフルト買ってたの見てたんだ。けど、なんとなく声がかけられなくて……」

やっぱりか……と麗奈は思った。さっきから照れくさそうにしてるのも、そのためなんだろう

「そうだったんだぁ……ごめんね?気づかなくて」

麗奈が素直に謝ると、また鷹は慌てふためいた


「い、いやっ!!そんな謝ることないよっ!!あの……それでもしかして、大森さん、はぐれちゃったとか?」

鷹にそう訊かれて、麗奈は苦笑しながら言った

「……え〜っと〜……えへへ♪……はぐれちゃったみたい」

麗奈がそう笑いながらはぐらかすと、鷹は少し慌てるように言った

「そりゃ大変だっ……僕もいっしょに探すよっ!!」

鷹にそう言われて、麗奈は戸惑いながら首を横に振った

「あ〜っ!!い、いいよっいいよっ!!大丈夫だからっ!!」

本当はまったく大丈夫じゃない。これからどうしようかと悩むくらいだった。けど、何故はぐれたのかというと、麗奈のしょうもない嫉妬のおかげだなんて、恥ずかしくて言えたもんじゃない

けど、真面目で誠実な彼は、そういうわけにはいかないと言いたげな表情で言ってきた

「一人じゃ心細いだろ?そーだっ!!今、お父さんに言って、みんなに探すの手伝ってもらおうっ!!ちょっと待ってて――」

鷹の気を遣ってくれる優しさに麗奈は好感を覚えた

けれど……

「ううんっ!!平気だよっ!!きっとすぐに見つかると思うから……それに……」

麗奈は少し寂しげな表情を浮かべた。悲しげな笑みを浮かべて、静かに呟くように言った

「それに……今は、一人でいたいから……」

麗奈の様子が変わったことに、鷹は気がついた。すぐに顔を覗き込むように、麗奈に訊ねた

「……大森さん?」








麗奈はある小さな椅子に座っていた。鷹に案内されて、とりあえずという形で座らせてもらったのだ

麗奈は足をブラブラさせていた

そんなところに鷹がフランクフルトを二本持ってきた

「よかったら食べて?」

鷹にそう言われて、麗奈は戸惑いながら言った

「えー?いいの〜?お金は?」

「僕の奢り。ほら」

鷹に微笑みながらそう言われて、麗奈は軽く笑ってフランクフルトを受け取った

鷹の優しさを感じた


紹介に遅れたが、彼の名前は見空鷹みそらたか。名字と名前がぴったりな彼だが、優しく誠実で、とても真面目なそしてとても良い人

優しくて勉強も出来る。さらにさらっとしたおろしたシンプルな黒髪に、美男子と呼べるような顔立ち。きっと女の子からは相当人気があると思う

実際麗奈にとっても鷹は相当な好感度だからだ

麗奈とどういった関係なのかというとだ。一言で言えば、「部活仲間」である

そう、彼は数少ない男子の吹奏楽部なのだ

ちなみにパートはトロンボーン。けれど他の楽器にも(フルートやトランペットなど)詳しいから、分からないところがあると優しく教えてくれる

鷹とは、吹奏楽部に仮入部をした次の日に仲良くなった

麗奈が一人で練習しているとき、上手くフルートの音が出せないと悩んでいたところに、鷹がやってきて、麗奈に教えてくれたのがきっかけだ

以来、学校でも会うと手を振ったりはする。もちろん会話だって

ちなみに鷹はもう一個の方のクラス――1年B組だ


麗奈は戴いたフランクフルトをパクリと口にした

ケッチャップとマスタードの味のハーモニーが絶妙で、外の皮はこんがりとしているが、中の肉はジューシーだ

つまり一言で言うとだ――美味しい

「美味しい〜♪やっぱり祭りと言えばフランクフルトだよね〜」

麗奈がそんなことを言うと、鷹がクスッと笑いながら言ってきた

「そう?祭りと言えば、焼き鳥とか焼きそばじゃない?」

「チッチッチッ。も〜、わかってないなぁ鷹くんは。フランクフルトが一番美味しいんだから」

すると鷹は可笑しそうに笑ってきた。そして麗奈はふと思い出すように鷹に言った

「そういえば、演奏見たよ?すごかったねっ?」

麗奈がそう言うと、鷹は少し照れくさそうに笑った

「ホントに?」

「特に、Believeがよかった♪」

「あ〜、でもあれ僕ちょっとミスっちゃったんだよね〜……」

「そうなの?全然そんな風には見えなかったけどなぁ」

「まぁ、みんなの音で消されちゃってたしね。でも自分の中では納得出来てないんだ」

鷹は真面目な故、そういうとこがありそうだと麗奈はふと思った

それでも麗奈はすごいと感じていた

「ふぅ〜ん……でも感動したよ♪私もあれに加わるんだな〜って思うと、ちょっと不安……」

と麗奈が苦笑しながらそう言うと、鷹が微笑みながら言ってきた

「平気だよ。僕だって、高校入ってから吹奏楽部に入ったんだから」

「えっ?そうなんだっ」

「最初は全然出来なかったけど、1ヶ月くらいしたら、ある程度は出来るようにはなってたから。大森さんもきっと頑張って練習すれば上手になるよ」

「うんっ。じゃあ頑張ってみよっと♪」

「その意気その意気♪」

麗奈は声を立てて笑った。鷹も、そんな麗奈の笑顔を見て、微笑んだ

「よかった」

「え?」

鷹にそう言われて、麗奈は不思議そうな表情を浮かべた。鷹は、笑いながら安心したように言ってきた

「大森さん、さっきすごく悲しそうな顔してたから……でも大森さんの笑ってるとこ見て、安心した」

鷹にそう言われて、麗奈はふと笑って下を俯いた

さっきまでの想いを思い出してしまったからだった

「うん……」

麗奈は素直に頷くと、鷹が少し戸惑いながら訊いてきた

「何か……あったの?」

鷹にそう訊かれて、麗奈はしばらく黙り込んだ。黙り込んだのには理由があったからだった

鷹に話してもいいのだろうか……こんな恥ずかしい話、鷹が聞いたらどう思うのだろうか

麗奈の心境は複雑だった

「別に、話したくなかったら無理に話さなくていいよ。僕も簡単に訊いてごめん」

鷹が優しく麗奈にそう言ってくれた。その瞬間、麗奈は少し胸が高鳴った

胸が高鳴ったのは、鷹の優しさに触れたような感覚がしたからだった

優しく麗奈を気遣ってくれる鷹に深く感謝の気持ちを抱いていた

こんなことで単純なのかもしれないが、この言葉を聞いた瞬間、麗奈はこの人になら話せると思えた



「……実はね……私、みんなからわざとはぐれたんだ」

麗奈がそう言うと、鷹は眉をひそめた

「わざと?」

鷹にとっては意外だったのだろう?そして何でわざとはぐれたりしたのかを、訊ねてくるに違いない

麗奈は頷きながら続けた

「……今日いっしょに来た人たちにね……」

麗奈は顔を赤くした

「好きな人が……いるの」

その言葉を聞いた鷹はピクンッと反応した。しばらく沈黙が続いた。麗奈は鷹の反応を待っているのだ

「そう……なんだ」

麗奈はそう呟くように言ってきた鷹を見た。鷹は、どことなく寂しげな雰囲気を出していた。寂しげな笑みを浮かべていた。悲しい表情に見えた……

けど麗奈は特に何も思わず、さらに続けた

「でもね、その好きな人……私の気持ちにまったく気づいてないの。鈍感だから」

それから麗奈は少しため息をついた

「それにね……その好きな人、他に好きな人がいるんだよね」

「え……」

鷹は苦笑しながら麗奈を見た

「辛いね……今日、その人の好きな人もいっしょなんでしょ?」

鷹にそう言われて麗奈はしばらく黙り込んだあと、静かに頷いた

「その人ね、その子のこと中学のときからずっと好きだったんだって。だから、きっとすごく大好きなんだと思う……そのこと、私前から知ってたから……だから本当は応援しなきゃいけないんだけど……でも」

麗奈は苦しい想いになりつつあった

「やっぱり……辛いんだよね」

麗奈の瞳からは今までの苦しかった想いが流れ始めた

手の甲にポタポタと流れ落ちる

「その人が、好きな人と仲良くしてるとこ見てると……何だか、すごく胸が苦しくって……お、思っちゃいけないのに……大好きなお友達なのに……その子に嫉妬しちゃったり……」

溢れる感情が止まらない。零れる言葉が止まらない

想いが涙となり、言葉となり……自然に流れ出る

「そんな自分が……すごく嫌で……もう、自分でもどうすればいいのか……分からなくって……」

麗奈はそれ以上何も言えなかった……鼻を啜り、顔を拭く

「……えへっ……ごめん……何でだろう……涙が止まんないや……」

鷹はしばらく泣いている麗奈を見つめていた。それから空を仰いだ

麗奈は鷹の隣でしばらく啜り泣きしていた。追い詰められた切ない想いを全て吐き出しているかのようだった

「……僕……あまり恋愛とか疎いからさ……何て言うか……その……」

鷹は困ったようにそう言っていた。きっとかけてやるべき良い言葉が見つからないのだ。けれども麗奈はしっかりと鷹を見た

「そのよく分からないけど……大森さんがそんな風に想うのも仕方がないと思うな。多分……」

鷹はそれから真っ直ぐな瞳で麗奈を見た

「だから、その想いを溜めるようなことは……しないでよ」

「え……」

鷹はふと笑った

「今の大森さんを見てると、きっとその辛い想いをずっと溜めてきたんじゃない?」

麗奈は鷹にそう言われて、ふと考えた。鷹の言うとおりだ。ずっと……健斗と早川のああいう光景を見た度、辛い想いを抱いていた。そして、それを誰かに吐き出そうなんて……しなかった

いや、しなかったというよりも……出来なかったのかもしれない

だって、話す相手がいないし……第一……自分が許せなかったから

「大森さんが、嫉妬心を抱く自分が嫌だって気持ち……なんとなく分かるような気がする。でも、それを抑えることなんてないよ。今みたいに素直に涙を流してみればいいんじゃない」

「……涙?」

鷹はゆっくりと頷いて、麗奈から零れる涙を指差した

「その涙は、大森さんの感情なんだから。止めずに泣いて、泣いて泣いて泣いて……そしてまた笑って。涙が、きっと疲れた大森さんをそっと癒やしてくれるはずだから」

そして鷹はにっこりと微笑んだ

「もっと素直になっていいんだよ」

鷹の言葉に、麗奈はしばらく感動していた。またさらに涙が溢れてきた

「……って、僕……何言ってんだろ……くさい台詞吐いちゃって……恥ずかしい……」

と鷹は顔を真っ赤にして、俯いた。麗奈はそんな仕草を見せる鷹を見て、可笑しさが込み上げてきた

そして嬉しそうに微笑む

「ううん。ありがとう鷹くん……ありがとう……♪」

麗奈がそう言うと、鷹は顔を真っ赤にした。唇を噛み締めて、また俯いた

するとだった

「あ……あああ……あのさ……あの……」

鷹がそう言って、麗奈は涙を拭いて鷹の言葉を聞いた

鷹は恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしていた。溜まった唾を飲み込む音が妙に生々しかった

「あの……もしよかったらなんだけど……これから、花火があるんだ……あの、それで……」

鷹は顔を真っ赤にしたまま麗奈の瞳を見た。鷹の瞳は真っ直ぐだった

「もしよかったらなんだけど……ぼ、僕といっしょに見に行かない?」

「えっ?」

花火を……鷹といっしょに……麗奈はそんな鷹の瞳に心を奪われていた

鷹はさっきから恥ずかしそうに、けれども麗奈のことをチラチラと見ていた。鷹は、麗奈の答えを待っているのだ

麗奈は特に深い意味として考えようとはしなかった……どうしようかと考える……

いいんじゃないか?これから健斗たちを探そうとしても、合流出来るわけがないし……

それにまた健斗のところに戻っても、せっかく吐き出せた辛い想いをまた溜めることになる

そんなことするくらいなら、優しい鷹といっしょに見に行きたい

だから……だから……

「うん……」

麗奈がそう呟くと鷹はかなり驚いた表情に変わった。だけど……

麗奈は静かに笑いながら鷹に言った

「……って言いたいけど……ごめん。私、みんなのとこ戻る」

麗奈が下した決断に鷹の表情は少し気の抜けたものになった。麗奈はさらに続けた

「みんなも私のこと探してるかもしれないし、私もみんなのとこ戻るよ……ごめんね」

本当は……鷹といっしょに花火を見に行きたいという想いも強かった。けどそれ以上に、それでいいのかという疑念があった

健斗のところへ戻ると、また辛い想いをしなければならないかもしれない

でもだからと言って、鷹という逃げ場を作るのが果たして正しいと言えるのか……

答えは否だ。そんなの自分自身が許せないし、第一にそんな気持ちで鷹と花火に行くなんて、こんなに優しい鷹にも失礼な話だと思った

逃げるんじゃなくって、向き合う必要があるのだ

鷹はそんな麗奈の想いを察したのか、ふと寂しげな笑みを浮かべた

「そっか……分かった」

どことなく寂しそうな鷹に麗奈は心を痛めた



麗奈は鷹と別れる際に、鷹に自分もいっしょに探そうかと言われたが丁重に断った。そこまで鷹にさせたくなかった

「色々……ありがとう鷹くん……すごく気が楽になった♪」

麗奈がそう言うと、鷹は顔を赤くして謙遜した

「いや……別に僕……じゃあ、また今度ね」

「うん。ありがとう〜♪バイバーイ」

麗奈は元気に笑って手を振りながら鷹から離れていく。鷹も麗奈が見えなくなるまで手を降り続けた


麗奈の去っていく姿は鷹にとって切なく、心苦しいことだった

嫉妬……か

鷹はそう心で呟くと、そんな自分に深くため息をついた



健です

ユニークアクセス数が26000人を超えました

いつの間にか、第一巻を越す人気となりました

次回で第6話は終わりです

これからもよろしくお願いします

また評価の方もよろしくお願いします



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