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第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.18

健斗たちはそれから色んなところを回りに回って回りまくった

焼き鳥とか、焼きそばにかき氷はいっぱい食べて……その他にもフランクフルトやチョコバナナ、たい焼きなどを買って食べたり、他にもヨーヨー釣りやお面やなども楽しんだ

そしてそれから幾時か時間が経った

健斗は手にヨーヨーを吊り下げて、さらに射的のときに手に入れた花火セットを持ち、頭にはお面をかけて、少し疲れたような表情を浮かべていた

散々、麗奈に付き合わされて、健斗は疲れてしまったのだ

麗奈と来たら、はしゃぎにはしゃぎまくって、歩いている途中行きたい店があると、健斗の手を引っ張って、健斗たちをいっしょに連れて行く

それの繰り返し。いつの間にか健斗は大きな疲労感を感じていた

けどもちろん、麗奈に振り回されたことが全ての原因ではない

健斗はこういう人の多い場所はあまり好きではないのだ。麗奈とか関係なしに、人ごみの中に入ると、歩き疲れてしまう

そして何よりも自分もはしゃいだ。麗奈に振り回されたことにだけ疲れたのではなく、そう言った理由を含めて疲労感を感じているのであった



今健斗たちは神乃崎神社にいた。ここも七夕祭の一部となっている場所だった。

ここも少しだけ祭りの食店があるけど、この場所に主に使われているのは踊りや展示物などだった

健斗たちがここにきた理由は主に踊りだった。麗奈が踊りを見てみたいと言い出したので、ここに来たのだ

麗奈はすでに満足そうだったのだが、前々から来てみたいと言っていた


神社の方は太鼓や音頭が流れていた。神乃崎音頭に太鼓を合わせて、たくさんの人たちがヤグラを囲んで輪になって踊っていた

そんな様子を見ながら、麗奈は感嘆の表情を浮かべていた

「わぁ〜、すっご〜い♪」

「これ神乃崎音頭って言うんだぜ?」

健斗がスピーカーから流れる神乃崎音頭を聞きながら、麗奈にそう話した

すると麗奈は面白そうに笑いながら健斗に聞いてきた

「ふぅ〜ん。健斗くん踊れる?」

「そりゃ……子供のときから踊ってたし。なっヒロ」

ヒロにそう聞くと、ヒロも懐かしむように笑いながら言ってきた

「よくあの輪の中に入って踊ったよな?」

「……かんの〜ざきお〜ん〜どで、おどりましょう〜。ハイハイ。わになって〜さぁみ〜ん〜なで、おどり〜ま〜しょう」

健斗が歌いながら神乃崎音頭の踊りを麗奈に見せた。早川と佐藤が可笑しそうにクスクス笑っている

ヒロもそれにつられていっしょに踊ってきた

「「ゆめをえがい〜て〜、そらを〜あるく〜。このうたに〜おどりを〜つけて〜。おどろう〜おどろ〜よ。かんの〜ざきお〜んど〜ハイハイハイハイ」」

「ってな感じ」

健斗が可笑しそうに笑いながら言うと、麗奈も面白そうに微笑んだ

「へぇ〜♪何か面白そう〜♪」

「ねぇ、踊りに行こうよ」

と佐藤が麗奈に踊りを誘う。もちろん麗奈の答えは決まっていた

「うんっ♪」

麗奈と佐藤は笑いながら真っ先に踊りの輪の方へと走っていった

そんな麗奈たちの様子を見て、健斗は半ば呆れるようにため息をついた。まだまだ元気が有り余っているようだ……

女の子ってすごいなぁ

すると早川がクスクスと笑いながら、健斗に言ってきた

「麗奈ちゃんたちまだまだ元気だね」

早川が可笑しそうに笑うので、健斗の呆れた表情も次第に緩んだものとなっていった

「じゃあ俺らも踊りに行こうぜ」

とヒロが走るポーズを見せながら健斗と早川に言ってきた

本当ならば健斗もすぐにそうしたいはずだった。けど……健斗は苦笑しながらヒロに言った

「ワリィ……俺ちょっとここで休んでる」

やっぱりちょっとくたびれていた。少々はしゃぎすぎたから……

ヒロは「そっか」と一言言うと、輪の方へと振り返り、走っていった

健斗は胸の奥からため息を吐き出すと、近くに設置されているベンチに静かに座った

座ると健斗はしばらくこの祭りの景色を一望した。多くの人たちで賑わっているこの七夕祭。こんなにも楽しく感じるとは思ってなかった

いつ以来だろう……こんな風にみんなと楽しい時間を過ごしたのは……

翔が死んだあの日からこんな風に楽しめることなんて少なくなっていた。ずっと翔がいなくなった喪失感に駆られていたから、日々を楽しめることなんてできなかった

ずっとそんな感じになるのが怖くて、ずっと喪失感にかられるのが怖かった

でも……そんな俺はいつの間にかこうしてみんなと祭りにきて、めちゃくちゃ楽しい時間を過ごせている

それが健斗にとってどれだけ嬉しいことなのか、自分でも分からない

ただ、健斗の毎日に明かりが灯ったその理由には健斗も薄々気づいていた。健斗は輪の中に混じって不器用だが、楽しく踊っている麗奈の姿を見つめていた

そんな麗奈を見て健斗は胸の中が温まるような感覚を覚える。ふと自然に口元が緩んだ

「……健斗くん」

ふと声をかけられた。健斗の前には早川がいた。まるで暖かな光のような微笑みで、健斗を見つめていた

そんな早川を見ているだけで自分の体に熱を帯びていくのを感じていた

「大丈夫?疲れちゃった?」

早川に優しくそう言われてふと幸せな気分になる。健斗はちょっと苦笑しながら早川に言った

「まぁ……ちょっとね。早川は踊りに行かないの?」

「だって、健斗くんだけ置き去りだと可哀想じゃない」

早川にそう言われたとき、また胸の奥の高鳴りに気がついた。早川が自分のためにここに残っていてくれているということを知ったからだ

早川は静かに健斗の隣に座った

健斗は平然を装いつつも、内心体温が上昇、心臓の動きが活発になっていくのを気にかけていた

「……どうですか?2年ぶりの七夕祭は?」

早川にそう聞かれて、健斗は冗談めかすように答えた

「ん〜まぁ、悪くはないですなぁ?たまにはこういうのも」

早川は健斗の言い方に可笑しさを感じたらしく、クスッと笑ってきた

「でも俺、こういう人の多いの苦手だからさ、めちゃくちゃ疲れちゃうんだけど」

「そっかぁ。でも確かに、クタクタになっちゃうよね。今日は本当にお疲れ様です」

「どうも」

健斗と早川は笑い合いながらそんな会話を交わしていた。やっぱり、早川と話をすると何だか胸が暖かくなる

心地よい気分だ……他の人にはない早川の魅力の一つを健斗はしかと感じていた


それから頭にふと浮かんだ。ずっと抱いていた小さな不安を言葉に出した

「今日…何かゴメンな?」

「ん?」

今度は早川が不思議そうな表情を浮かべた。健斗は頬を赤く染めながら、照れくさそうに言った

「その……嫌じゃなかった?俺やヒロみたいなのといっしょに祭りに行くだなんて……しかも麗奈に振り回されてばっかりで……」

麗奈に振り回されてばっかりというのは今思いついたことだった

すると早川はしばらく目を見開くと可笑しそうに笑った

「今更。全然嫌じゃないよ。健斗くんといっしょに来れてよかったって本当に思ってる」

とにっこりと微笑んできた。健斗はそんな表情を見ると一気に顔の表面温度が上がったような気がした

そう言ってくれるのは分かっていたような気もしたけど……やっぱり直接言われるとすっごく嬉しかった

「それに、私もよかった♪」

早川にそんなことを言われて、健斗は不思議そうな表情を浮かべた

「何が?」

早川はクスッと小さく笑うと優しい微笑みで健斗に言ってきた

「健斗くん、今日すっごく楽しそうにしてたから。何だか安心した♪」

健斗はそんなこと言われてふと可笑しさを感じて、口元で小さく笑った

健斗は微笑みながらまたしばらくこの祭りの景色を見つめた

そしてそれから静かに、呟くように言った

「俺さ……こういうの、すげー久しぶりなんだよね」

「え?」

早川が健斗の穏やかな横顔を見つめる。健斗は楽しそうな祭りの風景をただただ眺めていた

「こんな風にさ、みんなとはしゃいで、遊んで……何かすげー楽しいっつーかさ。ずっと……こんな感じ……忘れてたような気がする」

そう、忘れてた。こんなに楽しいなんて。生きることも……楽しいと思えるようになっていた

「翔が死んじまったあの日から……俺、迷っててばかりだったもん」

健斗がそんな風に言うと、早川が少し真剣な面向きで言ってきた

「……健斗くん、この前翔くんのお墓に来た理由って……」

早川は一息ついてから続けた

「やっぱりまだ、自分のこと責めてるから?」

早川にそう訊ねられて、健斗は首を傾げながら苦笑した

「どうかな……?やっぱり今も……少しは思ってるよ……後悔はしてないなんて言ったら、それは嘘になると思うし」

健斗はそう言いながら、ふと思い出すように笑った

「前さ、麗奈と大喧嘩したときさ、あいつに話したことがあるんだ。翔のこと」

早川は何も言わず、静かに聞いていた。それが健斗にとって話しやすいものだったから、健斗はすらすらと口から零れ落るように話した

健斗が、やっぱり今でも翔のことを悔いていて……“翔を殺したのは自分だって”言った

『もし……過去をやり直せるなら……あの日に戻りたい。あの日をやり直せるなら……俺は……』

この言葉に健斗の全ての想いが含まれていた

それを麗奈は感じ取ってくれたんだろう……

「それであいつ……俺に、“今を生きて欲しい”って言ってくれてさ。何だか俺、心が救われたっつーかさ……すげー嬉しかった」

健斗がそんなことを言うと、早川はゆっくりと優しく微笑んできた

「きっと……健斗くんが今楽しいって思えるのって、麗奈ちゃんがいるからなんだね」

早川にそう言われて、健斗はふと考えた

麗奈がいるから……俺は今毎日が楽しいって感じられるようになっているのだろうか……少し違うような気がした

「麗奈だけじゃないよ」

健斗がそう呟くように言うと、横を向いて早川の顔を見た

そして、穏やかな表情を作って見せた

「ヒロがいて、佐藤がいて……早川もいて、母さんや父さん、ゴンタ、学校のやつらとか……みんながいるから、今楽しいって思えるんだとおもう」

それに……と呟いてから、健斗は口を閉じた

「それに?」

「いや、なんでもない」

健斗は苦笑してそう誤魔化した

それに……やっぱりこうして早川と仲良く出来ていることが、健斗にとっては一番の幸せだった

それが恥ずかしくて言えるわけがない

だからその言葉だけ鵜呑みすることにした。また、こんな風に日々が変わったきっかけ……

それはもちろん、麗奈と出逢ってからだということに、健斗は薄々気がついていた

いや、麗奈とは“再会”と言った方が合うのだろうけど……

麗奈と出逢ってから、少しずつ……健斗の日々が変わっていった

麗奈に逢うまで露頭の道をさまよい歩いていた。それが、麗奈が道しるべとなり、少しずつ希望の光へと進んでいったような気がする

だから健斗は感謝していた。最初は、麗奈がこの町に来たことに戸惑いと嫌気を感じていたが、今は出逢って本当によかったと思っている


「……私も今の生活が好きだな」

早川が微笑みかけながらそう言う。健斗は口元で笑みを作った

「健斗くんがいて、麗奈ちゃんがいて……マナやヒロくんがいる。今の生活が大好き♪」

純粋にそう言ってくる早川に健斗は好感を覚えた

早川がそんな風に言ってくることに喜びを感じたし、嬉しかった

「そっか♪」

健斗はせいっぱいの笑顔を早川に向けた

「うん♪」

早川も眩しい笑顔を健斗に送ってくる

幸せな時間が過ぎていくようだった。祭りでの疲労感など忘れていた

二人は笑い合っていた……



「……ふぅ〜ん……随分と二人とも仲がよろしいことで……♪」

健斗たちの間に意地悪い声が邪魔をしてくる。前を見ると、佐藤とヒロがニヤニヤして健斗たちの様子を見ていた

「なるほど〜、健斗が疲れた〜なんて言い出したのは、早川と二人っきりになりたかったからなのか〜?」

「巧みな手を使って〜♪健斗ったらやる〜」

佐藤と早川に茶化されて、健斗は自分の体温が急上昇するのを感じた

おそらく、顔が真っ赤であろう……

チラリと横を見ると、早川も……だった

頬を赤上させて、口元押さえ、下を俯いて照れていた

照れた様子を見せる早川も可愛いく見える

「や、やめろよお前ら。ただ話してただけだよ」

健斗がそういうも、ヒロたちのにやついた顔は変わりはしなかった

健斗は立ち上がって、慌てて言った

「ほら、踊りに行こうぜ」

それから笑みを浮かべて、早川を見る

「早川も〜……行くだろ?」

早川は健斗を見上げながら、にっこりと可愛らしい笑顔を向けてきた

「うんっ♪」



健斗たちも踊りの輪に入り込む。健斗にとってこの踊りを踊るのは実に久しぶりだった

「かんの〜ざきお〜ん〜ど〜で、おどり〜ま〜しょう〜。わになって〜さぁみ〜ん〜な〜で、おどり〜ま〜しょう〜」

久しぶりに踊る神乃崎音頭は、とても可笑しく面白く楽しいものだった。が、それだけではなく早川といい雰囲気で話が出来たことに喜びを感じていて、気分がより高調にもなっている。健斗はしばらく時間を忘れて笑いながら踊っていた

そのためか……一人、見失いかけている者を忘れて……



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