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第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.16

そして健斗たちは、揃って七夕祭へと向かった

とりあえず商店街の方へと向かってみると、いつも賑やかなのが、より一層賑やかになっていた

たくさんの人が行き交っている。多いのが、この辺に住むおじいちゃんやおばあちゃん、商店街の人たち、神乃崎の子供たちで、さらにプラス隣町の人々だ

笛や太鼓の音が、商店街に流れている

そしてたくさんの店が、商店街の奥の方まで伸びていた

さらに商店街の中だけではなく、その入り口の前から店が並んでいた

いつも通り、賑やかな祭りになっているみたいだ。とは言っても、2年ぶりに来た健斗にとっては少し新鮮な気分だった

麗奈はというと、かなり興奮した状態にいた。まぁ興奮というより、はしゃいでいるという方が正しい。

いつも以上に賑やかな商店街を見て、驚きつつも、嬉しそうだった

「わぁ〜♪すっご〜いっ!!」

と言いながら、健斗たちの前を小走りで、商店街の入り口へとどんどん進んでいく

健斗たちは並んで麗奈の後ろを歩いていた

どんどん進んでいく麗奈に、健斗は少しだけ声を大きくして言い放った

「あんまりうろちょろすんなよ〜。迷子になっても知らねーぞ」

が、健斗の言葉なんかまるで無視するかのように、どんどん離れていく

「……聞いちゃねぇし……」

健斗が呆れたように言った。と、するとだった。健斗の隣で歩いている早川が、口に手を当ててクスクスッと笑っていた

「フフ♪なんか健斗くん、麗奈ちゃんのお兄ちゃんみたい♪」

それを聞いて、健斗は照れくさそうに笑いながら早川に言った

「そ、そう?まぁ確かにあいつ、手がかかるし……」

「でも、麗奈ちゃん楽しそうだね。なぁ〜んか子どもみたい」

と佐藤がそう笑いながら言う

「まっ、そこが麗奈ちゃんらしいんだけどね♪」

と佐藤が最後につけ加えると、健斗は大きく頷いた

でもまぁ……麗奈がこうはしゃいでしまうのも分かるような気がする

健斗もこの七夕祭は2年振りだった

そのためか、昔からずっと来てたはずなのに何故か不思議な新鮮感を感じられた

この賑やかな感じ、健斗は少し苦手なはずなんだけど、この祭りは別。昔から来ていたこともあって、慣れっこになっていた

まぁ、それでもとても疲れてしまうんだけど……



すると麗奈が商店街の入り口にある看板のところでふと止まった

健斗たちも歩いていき、その看板の前で立ち止まると、看板に目をやった

その看板らしきものは、この七夕祭のプログラム的なものだった。何時から、どこで、何のイベントがあるのか、それが書かれている

それを見ると、佐藤がケータイを取り出して

「写メ写メ♪」

と言いながら、そのプログラムを写真に収める

なるほど、そうしておけばいつどこでもプログラムを確認することが出来る

「最初にあんのが……広場で“龍鼓会たつのこかい”の披露かぁ。ばっちゃん、やってるんだっけなぁ」

ヒロがそう言うと、健斗がヒロに訊ねた

「じゃあ見に行く?もう始まってんじゃない?」

プログラムには、5時45分からって書いてある

「え〜、いいって。これ、お年寄り向けだし。俺らには退屈だよ」

とヒロが言うのを、健斗は微妙に笑っていた

「ねぇねぇ。タツノ、コカイって何?」

麗奈が健斗の袖を引っ張りながら聞いてきた

「んあぁ。タツノ、コカイじゃなくって。タツノコカイ。龍乃鼓会ってーのは……まぁ簡単に言えば太鼓だよ太鼓」

健斗がそう言うと、麗奈はふぅーんっと納得するように言う

「ヒロのばっちゃんがさ、龍乃鼓会に入ってるんだよね」

「へぇー。なんか面白そうだねぇ」

そう麗奈が言うと、ヒロが首を振りながら言った

「面白くなんかねぇよ。龍乃鼓会って、年寄りが集まってやってるから。年寄り向けなんだ。ほら、この町さ、若い人よりも年寄りが多いからさ。年寄り向けのイベントが多いってわけ」

ヒロが説明すると、また麗奈は納得するような仕草を見せた

「でも、ヒロくんのおばあちゃん見に来て欲しいんじゃないの?」

麗奈がそう訊くと、ヒロは苦笑しながら呆れたように首を横に振った

「まさかぁ。昨日だってばっちゃん、俺に“あんた来さったら、あがってしまうん。来んといて〜”って言われたし」

「ふぅ〜ん……」

するとヒロは笑いながら言ってきた

「それよりもさ、店とか行こうぜっ?そっちの方が楽しいじゃん」

すると早川がプログラムを指差しながら言ってきた

「あ、ほら。龍乃鼓会のあと、神乃高の吹奏楽部の演奏だって。麗奈ちゃん行くよね?」

早川がそう言うと、麗奈は笑いながら大きく頷いた

「行く行く〜♪まどかとナッチャンもやるし〜♪」

健斗はそれを聞いて、ふと思った。何だ……もう友達出来てたんだなあ……

多分円ってのは、北村円きたむらまどか。ナッチャンは、高木奈津紀たかぎなつきだと思う

どちらも小学校のころからの知り合い。ってもまぁ、今の高校の人なんて、ほとんど小中学校で知り合いが多い

「吹奏楽は6時20分からかぁ……今何時?」

ヒロが訊くと、佐藤がケータイの時間を確認して言ってきた

「5時57分っ」

「20分くらいかぁ〜……」

ヒロがそう呟くと、早川が提案してくるように言ってきた

「じゃあ、時間までちょっとお店見回ろうよ。ほら、麗奈ちゃんもどんなお店があんのか見ときたいと思うし……それにきっと20分なんてすぐだよ。吹奏楽の演奏見終わったら、またお店回ろ?」

早川の提案に健斗たちは了解するように頷いた

早川の言うとおりだと思った。20分なんて、きっとすぐ経つ

その間、お店を見回るのも悪くないと思った

ということで、健斗たちは時間まで少しふらつくことにした








20分という時間は本当にあっという間で、健斗たちはすぐに広場へと向かう

広場には大きなステージが建てられていて、その前には観客椅子が並んでいる

また観客椅子に座れなかった人も、その後ろや端に立ってイベントを眺めている

この広場の近くに設置さているテントに、お年寄り同士やおじさんおばさんたちが宴会をするための場所が設けられている

もちろん、そこからイベントを眺めてることだって出来る

酒や祭りの食べ物をやりながら、イベントを眺めている様はなかなか居心地のよさそうなことだ

ちなみに言うと、母さんや父さんもあの場所に行く


広場では人が賑やかっている。どうやら、龍乃鼓会の披露が終了したばかりなのだろう

おじいちゃんおばあちゃんが多い。健斗たちは空いている席に座り、次に始まる吹奏楽部の演奏を待っていた

「……ふわぁ……人多っ」

と麗奈が苦笑しながらそう言った

ちなみに席の順は佐藤が一番左で早川がその横、健斗は真ん中で、麗奈が健斗の右にいて、ヒロが一番右にいる

健斗はそんな風に言う麗奈に可笑しそうに笑いながら言った

「そりゃ……な。やっぱりイベントとかが盛り上がるし」

「ふぅ〜ん……」

「この吹奏楽の演奏はいつも盛り上がるんだぜ?」

とヒロが言ってきた。それを聞いた麗奈は不思議そうにヒロに訊く

「へぇー。何で?」

「そりゃ……やっぱり若い人たちの頑張ってる姿を見ると、年寄りにウケるからじゃない?」

実際のとこ、どうして吹奏楽の演奏がそんなに盛り上がるのかは知らない

ただスケールが大きいことは確かだ

「健斗くんって、音楽どんなの聞くの?」

ふと横に座っている早川にそう聞かれた。健斗はそう聞かれてしばらく考えた

「ん〜……俺、色々な曲聞くからなぁ〜。早川は好きなアーティストとかいんの?」

「私はね〜……私も色々な曲聞くけど、やっぱりYUIとかコブクロが好き」

「あ、俺もコブクロ好きかも。アルバム全部i-podの中入れてるし」

「本当に?去年、吹奏楽“桜”やったよねっ?って……そっか、健斗くん去年来てないんだっけ」

早川にそう言われて、健斗は苦笑して答えた

「ん……まぁ……ね。いいなぁ〜、桜聞きたかったなぁ」

「今年何やんのかな?」

「さぁ……麗奈知ってる?」

と麗奈に聞いてみると、麗奈は静かに首を横に振った

「知らなーい」

「そっか……でもまっ、演歌とか若者にはちときついものじゃないよな」

健斗がそう言うと、早川は可笑しそうにクスッと笑った

「なんか健斗くん、言い方がおじいちゃんっぽいよ」

「アハハ♪そっかな?あ、俺さ、ミスチルが一番好きなんだよね」

健斗がそんなこと言うと、それには意外にも佐藤が食いついてきた

「あ、あたしもミスチル好きっ!!特に“しるし”が好き」

「俺さ、アルバムは全部揃ってないけど、シングルなら中古で全部揃えた♪」

健斗がそう言うと、早川が少し驚くように言ってきた

「へぇー。私もミスチル聞いてみよっかなぁー……ねぇねぇ、今度CD貸してもらってもいい?」

早川に笑顔でそう言われて、健斗は少しドキンッときた

そして健斗もすぐに笑顔で答えた

「あー、うん。今度もってくるわ」

「本当に?ありがとう♪」

と頬を赤く染めて、軽く笑った


健斗は内心、冷静を装いつつもこう思っていた


やべ……やべやべやべぇっ!!!!


何だかさっきから早川とめちゃくちゃいい雰囲気だ

普通、あまり仲良くない人だったらCDの貸し借りなんて絶対にないっ!!それにあっちから言い出してきたということは少なくとも、あっちは健斗のことを仲の良い友達だと思っていることだ

何だかいつも以上に仲良い関係になりつつある

それがめちゃくちゃ嬉しい

それともう一つ抱えていた不安が消えかかっていた

それは早川とこの祭りに来ることが決まってから、内心抱えていた不安。それは、この祭りに来ることを早川が……嫌がったりしてないかなーというありきたりな不安

いや、そりゃもちろん分かっている。心の優しい早川が、そんな風に思うわけがないって

けどただ、俺みたいなやつといっしょに祭りに来るなんて……あまり気が乗らないような気もする


とそんなことを考えているとだった。ステージの幕が上がって、そこから見慣れた吹奏楽部がセットされた状態でいた

その瞬間、観客から歓声が沸き起こる

久しぶりに聞く七夕祭の吹奏楽の演奏に健斗は心を踊らせていた


すると指揮者が観客に向けてお辞儀をした。そしてすぐに、合図を出し……

さっそく演奏は開始された。これはオープニングの演奏だ

健斗たちは静かにしてそれを聞いていた

吹奏楽についてまったく詳しくないから、よくは言えないけど……フルートやトランペットなどの楽器で奏でるハーモニーはすごいと思う

サッカーをやっていた健斗だから、少しそこには敏感なのだ

一つの楽器じゃ、曲を生み出せないけれど、この一つ一つの楽器が合わさって、この曲を生み出しているんだ

サッカーも同じだ

一人の力じゃ、11人に勝つこと何かできない

まぁ……健斗は実際11人全員抜いてゴールを決めたくらいだけど……あれが試合だったら、あの1点だけで勝つことは出来ないだろう

他の仲間がいるから試合が成り立ち、勝つ喜び、負ける悔しさを感じられるのだ

吹奏楽とサッカーは同じだ

だから健斗は吹奏楽が好きだった





オープニングの曲が終わり、観客の拍手を受けながら二人の女の子が司会として立ち上がり、マイクを持って挨拶をした

「こんにちわ。本日は私たちの演奏を聞きに来てください、ありがとうございます――」
そんな話を聞きながら、次の曲が始まるを待っていた

「……ねぇねぇ健斗くん」

麗奈にふと話しかけられて、健斗は麗奈を見た

麗奈は微笑みながら言ってきた

「すごいよね」

「え?」

麗奈は前を向いて、感動するように言った

「吹奏楽って……すごいよね?こんな風にみんなで曲を奏でるって、絶対難しいよ」

麗奈の言っていることを健斗は理解し、ふと笑った

麗奈も健斗と同じようなことを考えているようだった

「だよな……そこが俺、吹奏楽の好きなとこなんだよね」

「私、出来るかなぁ?」

「出来るよ。みんな練習してきてんだから、こうやって今そこにいるんだろ?」

健斗にそう言ってやると、麗奈はしばらく健斗を見てからにっこりと笑った

「そだね。健斗くんに言われると何だか出来るよーな気がする」

「俺も何かあったら手伝うからさ」

「うん♪ありがとう♪」

麗奈がそう言ってくるのもなんとなく分かるような気がする

麗奈は今までピアノしか弾いたことがない。高校に入っていきなり吹奏楽というのは少しきついものだと思う

実際、麗奈は家で練習してるとこを見るが、やはり難しそうにしてる



そんなこと話してると……

「では、続いての曲を聞いてください」

と、次の曲に入った

曲が始まって、健斗は何の曲だろうとすぐに考えた

何だか懐かしい……以前も聞いたことのあるような曲だ……


「……あ……」

そして思い出した。確か……小2の時にも聞いたことのある曲だった

「これ、懐かしいな」

ヒロが健斗に言ってきた。ヒロも同じようなことを思ったようだ

「何だっけなぁ……“Believe”だよな?……例えば君が傷ついて、くじけそうになったときは、必ず僕が傍にいていっしょに歩いていけるよね……」

気がつけば、吹奏楽の演奏とともに口ずさんでいたこの曲

小学生のときに誰もが聞いたことがあるだろう……

Believe

健斗は確か小2のときにこの曲を演奏で聞いた

健斗の吹奏楽の演奏で一番印象に残ってる曲だった

この演奏を聞いていると、昔の記憶が蘇ってくるようだった


世界中の希望乗せて

この地球は回っている

今 未来の扉を開けるとき

悲しみや苦しみが

いつの日か喜びに変わるだろう

I believe in the future.

信じてる……

「あ、私も知ってるかも。小学生のとき音楽の授業で歌ったぁ♪」

と麗奈が笑いながら言ってきた

麗奈だけじゃない。佐藤も早川も、みんな知っている歌だ

I believe in the future.

私は未来を信じている





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