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第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.13


それから時間は経ち、いつの間にか七夕祭に行く当日になっていた

つまり、七夕祭の最終日。金曜日から何やらすごく盛り上がっていたようだ

この日曜日の最終日なんて、さらに賑やかになっているだろう

我が家でも何だかワイワイしているから……

夕方になりかけている。健斗は父さんからのお下がりのジンベェを着て、ミンミンとまだ鳴いている蝉しぐれを聞いていた


その横にはヒロがいて、暑そうにうちわを仰いでいる

二人は麗奈を待っていた

これからチャリで神乃崎駅に向かう。そこで待ち合わせをしているのだ

「……あいつおせぇな」

と健斗がため息をつきながら、そう呟くと、上機嫌なヒロが健斗の肩を叩きながら言ってきた

「まぁまぁ♪きっと色々おめかししてんだって♪」

妙にデレデレして、上機嫌なヒロを見て健斗はヒロを哀れむような気になった

こんなに麗奈の浴衣姿を楽しみにしてるのに……麗奈に好きな人がいるって確定したなんて言ったら……あれだもんなぁ

哀れなもんだ……

「何だよ」

健斗がじと目で見ていると、ヒロがそれに気がつきそう言ってきた

「別に」

「何だよ。お前だって早川の浴衣姿楽しみだろ?」

ヒロにそう言われて、健斗はしばらく考えた

早川の……浴衣姿……

「別に……いつも早川は可愛いし……変わんねーよ」

「……お前臆することなくよくそんなこと言えんなぁ」

とヒロが苦い顔をするけれども、健斗はまったく気にしなかった

「つーか、何で女の子って祭りになるとあんなに張り切るんだろう」

「そりゃあ……自分の可愛い浴衣姿を見てもらいたいからだろ」

「誰に?」

「誰に……って、友達とか周りの人とか恋人とか」

「周りの人にそんなに注目されなくね?」

「よく分かんないけどそーいうもんだろ?男だってそうじゃん。何でそんなこと言うんだよ」

「現にこうやって待たされてっから」

健斗がそう言うと、ヒロはため息をついて呆れるように言った

「お前さ、人を待たすのは好きなくせに待たされんのは嫌いだよな」

「別に人を待たすことが好きだなんて言ってねぇじゃん」

健斗が口を尖らせて言うと、ヒロが健斗の頭を叩いた

「イテッ」

「アホッ。お前あん時のこと忘れたのかよ」

ヒロにそう言われて、健斗は首を傾げた

あのこと……?

「昔お前と映画見に行ったとき、お前約束の時間ちょうど1時間遅れてきやがったよな」

「あぁ〜。あの時間間違えちゃったやつ?中一のときだろ?確か翔もいたっけ?」

「ダァホっ!!翔だけじゃねぇよっ!!あの日せっかく聖美ちゃんをデートに誘えたのに……お前が時間に遅れたから怒って帰っちゃったんだぞ!?」

「……サトミって誰だっけ?」

健斗がそう言うと、ヒロがむっとした表情で言ってきた

「隣町の中学校のマドンナ。あのめちゃくちゃ可愛い聖美ちゃん」

「あぁ〜……思い出した。ははっ♪そんでさ、結局三人で映画見に行ったよな?」

「ははっ♪じゃねぇよ。あんとき俺、絶対告白しようと決めてたんだぜ?」

とヒロが憤りを感じるように鼻で強く息を吐いた

健斗はそんなヒロを見て、唇を尖らせて言った

「知るかよ。別にあんときは、時間間違えただけだし……」

「そのせいで聖美ちゃんに何て言われたと思う?“ヒロくんのお友達って、時間にルーズな人なんだね。私時間にルーズな人嫌い”……だぜっ!?」

「ふぅ〜ん……まぁそれだけワガママなやつだったってことじゃん」

「ワガママ……ってお前……」

健斗はノビーッとして気楽そうに続けて言った

「ん〜っ……それにいいじゃん。結局その1ヶ月後くらいに森田さんに惚れたんだから」

健斗がそう言うと、ヒロは苦い顔をして呟くように言った

「またその話かよ……」

「まぁ結局森田さんにも振られたけどさ♪ナハハハハ〜♪」

「うっさいうっさいっ!!つまり、お前があんときちゃんと時間通りに来てれば、俺は今頃聖美ちゃんと付き合ってたかもしんないってことっ!!」

「さぁ……仮に付き合えたとしても、二ヶ月かそこらだろ?」

「う……」

健斗は呆れるように息を吐きながら、やれやれと言うように続けた

「そんなもんだろ?所詮中高生の付き合いって」

「……お前に正論言われると何かあれだな。すげー敗北感を感じる」

ヒロに言われると健斗はふふんと鼻を鳴らして笑いながら言った

「俺も日々進化してんだよ。あっちの方も」

「うん……」

ヒロは苦い顔を浮かべるだけで、特に何も言ってこなかった

するとそれからすぐに頬を赤く染めて照れながら言った

「でもいいんだ♪俺には麗奈ちゃんっていう運命的な出会いを交わした女の子がいるから。今が一番幸せだし♪こうやって麗奈ちゃんと祭り行けるしさ♪」

「……おめでたいやつ……」

健斗は苦笑してそう呟いた。こめかみに冷や汗が滴る。ヒロに麗奈に好きな人がいることが確定したなんて、とても言えることじゃない

「まぁ仮に?麗奈ちゃんに好きな人がいるんなら、それはやっぱり俺でしょ♪あの松本事件でこの真中ヒロくんは麗奈ちゃんを体を張って守ったんだから……“ヒロくん……私、好きな人がいるの”“誰だい?麗奈ちゃん”“ヒロくん……私、ヒロくんのこと好きっ”“俺もさ……”“ヒロくん……”“麗奈ちゃん……”なんてさっ♪なんてことが起こったら、俺っ……俺もう困っちゃう〜っ♪エヘヘヘヘ♪エヘヘヘヘ♪デヘヘヘヘ♪」

また妄想にデレデレしてるヒロを見て、健斗はまた深くため息をついた

本当におめでたいやつ……

…………




するとだった

そんな話をしていると、ようやく家の戸が開いた

その瞬間、家から出てきた女の子に健斗も……そして当然ヒロも見とれてしまったのは、言うまでもなかった

口を開けて、ただ完全に見とれていた

麗奈が可愛いらしい浴衣姿で家から出てきた

ピンク色の華やかな可愛いらしい浴衣に、長い髪は後ろに結っている

本当にめちゃくちゃ可愛い……

そう思ってから、健斗ははっと我に返った

麗奈はサンダルをパタパタと音を立てながら小さく走って健斗たちの元にやってきた

そんな仕草も、何だか女の子らしくてドキッとした

「お待たせっ♪」

元気よく言ってくるが、健斗は目をそらして何も言えなかった

間近で見るともっと可愛いなぁ……

すると、突然ヒロに肩を叩かれた。健斗はすぐにヒロを見ると、ヒロは嬉しそうに頷きながら涙を流していた

その瞳から何が言いたいのか、よく分かった

我が青春……万歳……

相当嬉しいのか、涙を流すほどか……

健斗はただただ苦笑するしかなかった

すると麗奈がちょっと照れて笑いながら言ってきた

「エヘヘ♪健斗くんのお母さんに手伝ってもらっちゃった♪どう?お母さんの浴衣、似合う?」

お母さんというのは、麗奈のお母さんの浴衣というわけだ。こんな可愛い浴衣を持ってたんだな、夏奈さんも……

麗奈の問いかけにすぐにヒロが食いついた

「マジで……めっちゃくちゃ似合ってるよっ!!ちょー可愛いっ!!」

すると麗奈は照れて、それから健斗を見てきた

「どう……かなぁ?」

若干麗奈は緊張してるみたいだった

健斗は麗奈を見て、照れくさかったから、目をそらして呟くように言った

「まぁ……うん……いいんじゃね?」

これしか言えない

めちゃくちゃ可愛いと思ったけど、これしか言えなかった

「む〜っ……」

健斗の答えに麗奈は少し納得の行かない顔をした

可愛いと言いたいけど、言いたくなかった


すると今度は家から母さんが出てきた

「どう?可愛いでしょ?麗奈ちゃん」

母さんにそう言われてヒロはすぐに何回も頷いたけど、健斗は素直に頷くことができなかった

すると麗奈がむっとした感じで母さんに言った

「健斗くん……あんまり可愛くないみたい……」

麗奈にそう言われて、健斗はギクッとした

そんなことまったくないんだけど

「え〜?あんたも素直になりなさいよ〜?可愛いでしょ?」

母さんに問い詰められて健斗はさらに言えなくなった

「いや……うん……えっと……」

曖昧な答えを聞きたくない……麗奈はそんなことを思っていた

きっと結衣ちゃんにはすぐ誉めるんだろうなぁ……

麗奈はしゅんとした様子になった

「大丈夫よ麗奈ちゃん。この子が目を泳がして言うときは、本当は可愛いって思ってるはずだから」

母さんが麗奈にそう言って、麗奈は顔を上げて健斗を見た

健斗はそんな麗奈が見れなくって、すぐに顔をそらしてしまった

どうしてそんなに俺から可愛いって言葉を聞きたがってるんだろうか

「じゃあ〜……行くか?なぁヒロ」

ヒロに言うと、ヒロはただ麗奈の浴衣姿に見とれてたから何も返事をしてこなかった

「じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい。あたしたちもあとで祭り行くからね」

と言って、家の中へ戻っていった

三人きりになって、健斗は麗奈を見た

ムスッとした態度の麗奈を見て、戸惑うことしか出来ない

「おら、後ろ乗れよ」

そう促すと、麗奈は黙って後ろに乗ろうとした

するとだった

麗奈の浴衣につけてた花の飾りが地面に落ちてしまった

「あ……」

麗奈はすぐに花の飾りを拾おうとして、身をかがめた

その瞬間、健斗も身をかがめた

今二人は身をかがめた状態で囁けば聞こえるくらいの近距離になっていた

「……麗奈……」

健斗が囁くと、麗奈は身をかがめたまま健斗を見た

今なら、母さんもヒロにも聞こえないと思うから

意地も張らず、素直に言おうとした

「……浴衣……」

「え?」

「……めちゃくちゃ可愛い……」

健斗はそう囁くと一気に恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしてすぐに身を持ち上げた

麗奈はしばらく身をかがめたまま動かず、頬を赤くして健斗を見つめていた

それから、小さく笑った

嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑った

頬を赤くして口元を押さえている

そして前を向くと、健斗を見て、小さく言った

「……ありがと……すごく嬉しい……♪」

健斗はドキッと胸を高鳴らせて、顔がさらに真っ赤になっていくのを感じた。軽く払いをして平常心を保とうとする

「よしっ。行くか」

と言いながら、健斗はゆっくりとチャリをこいでいった




……ヒロはその後しばらく、動かず麗奈に見とれていました





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