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第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.11


やってしまった……どうしてあんなことを言ってしまったんだろう

麗奈はため息をつきながら深く後悔していた

あんな酷いことを言うつもりはなかった

本当は健斗くんが心配して来てくれたことに、すごく嬉しかったはずだった

嬉しかったはずなのに……素直になれなくって

健斗くんに向かって酷いこと言っちゃった……

確かに、最近健斗くんといっしょにいると妙に意識しちゃって色々な想いを抱えてしまう。それが辛い。辛いんだけど……それを疲れるだなんて言って吐き捨てることはないよね

きっと健斗くん、怒ってんだろうなぁ

ちゃんと謝らなきゃ……

けど、意識してしまい謝るどころか、話しかけることも出来ないでいた

結局そのまま、放課後になってしまった

麗奈はモヤモヤした気分のまま、昇降口の下駄箱で健斗を待っていた

部活は今日あるけど、今日は明日から始まる祭りに向けて、演奏をするらしいから、麗奈は参加することが出来ない

だから家にすぐに帰ることが出来る

とは言っても、まだ仮入部だから自由参加なんだけど

健斗くんがどこにいるのか分からないけれど、麗奈は一応それを待っているという形になっている

本当はすぐにでも謝りたかったから

健斗くんがここに来てくれるかなんて分からなかった

もしかしたらとっくに帰ってるのかも

でも、靴があるってことは……

まだいるってことだよね……

麗奈は不安な様子で深くため息をついた

でも健斗くんも健斗くんだよ

ちょっとくらい気づいてよ……私の気持ちに……

健斗くんに好きな人いんのかって聞いたとき、すごく焦った

すごくドキドキして、どうしてそれが分かったのか……不思議だった

だから隠したくって、あんな風に言っちゃったんだよね

そんなに鋭いとこがあるんだったら、早く気づいてよ

健斗くんの鈍ちん……


そんなことを考えていると……

ふと、階段から足音が聞こえて、麗奈はそれに反応するかのように階段の方を見た

健斗くんだろうか……不思議な期待が胸をよぎる

胸の高鳴りを抑えようとしながら待っていた

けど、そこから顔を覗かせたのは……

結衣ちゃんだった

麗奈に気がつくとちょっと驚いたように目を見開かせている

麗奈もまさか結衣ちゃんだとは思わなかったから、驚いてしまった

「麗奈ちゃん」

ふと微笑みながら、麗奈に歩み寄る

麗奈も複雑な気分で結衣ちゃんに笑いかけた

結衣ちゃんは微笑みながら、不思議そうに聞いてきた

「どうかした?」

そう訊かれて麗奈は笑って答えた

「ううん。ちょっとね」

「そっか。今日部活はないんだっけ?」

「あるんだけど、なんか明後日の本番に向けての演奏のチェックとかするみたいなの。だから今日明日は参加出来ないんだ」

「そっかぁ。残念だね」

「結衣ちゃんは今から部活?」

「うん」

「そっかぁ。頑張ってね?」

「うん♪ありがとう♪」

とお礼を言いながら、結衣ちゃんはクスッと笑った

麗奈もそんな結衣ちゃんを見て、ふと笑みがこぼれる

「今、もしかして健斗くん待ってるの?」

結衣ちゃんにそう訊かれて、麗奈は胸が高鳴った

「う〜……バレちゃったぁ?」

そんな風に言う麗奈を見て、結衣ちゃんはクスクスと笑った

「健斗くんなら、今教室でヒロくんとお話してたよ」

麗奈はそれを聞いて、妙に安心した

先に帰ってるわけじゃないと分かったからだ

「そっかぁ♪分かった」

「迎えに行ったら?まだいると思うよ?」

結衣ちゃんにそう言われちゃって、麗奈は一瞬そうしようかなぁっという考えが頭の中をよぎった

早く健斗くんに謝りたいのもあったし、健斗くんと仲直りしたかった

でも……

「……ううん。ここで待ってる」

と、作り笑いを浮かべた。そんな麗奈を見て、結衣ちゃんは少し寂しそうな表情を浮かべた

何も言わないで、それからすぐに微笑んできた

「麗奈ちゃん……もしかして健斗くんと喧嘩した?」

結衣ちゃんにそう言われ、麗奈はドキッと胸が高鳴った

「え……な、何で?」

ちょっと慌ててる麗奈を見て、結衣ちゃんは可笑しそうに笑いながら言った

「やっぱり♪だって、前健斗くんと喧嘩したときと同じ顔してるんだもん?」

結衣ちゃんにそう言われて、麗奈はしばらく自分の顔をさすった

そんなことまったく気にもしてなかった

自分でも気づかない些細な変化を結衣ちゃんに気づかれて、麗奈は可笑しさが込み上げてきた

「あは……アハハ♪バレちゃいましたか……」

と軽く笑ってみるも、心はすぐにモヤモヤ感で溢れた

結衣ちゃんはそんな麗奈を見ながら、苦笑した

心配そうに……麗奈に言ってきた

「最近……麗奈ちゃん元気ないね?何かあった?」

「え……」

健斗くんと同じことを結衣ちゃんに言われた

結衣ちゃんにも気づかれていたんだ

結衣ちゃんは心配そうに言ってきた

「何か悩みでもある?私でよければ相談にのるよ?」



麗奈にとってその言葉がどんなに暖かい言葉だったんだろう

色々な想いを抱えている麗奈にとって、例えそれが口先だけだとしても喜ばしく、すごく嬉しいものだった


「結衣ちゃん……ありがとう♪」

すごく嬉しかった

いっそのこと、全部話そうか……


いや、そんなこと出来るわけがない

今自分が一番辛いと思っているのは、正直……健斗くんと結衣ちゃんが徐々に仲良くなっていることを見ることだから


友達として心配してくれている結衣ちゃんの気持ちを裏切ってしまうような気がして、話すことなんか出来ないよ

「ありがとう♪でも大丈夫だから……」

麗奈が微笑みながらそう言うと、結衣ちゃんはそれでも心配そうに言う

「本当に?」

「うんっ♪」

そう言う麗奈を見て結衣ちゃんの口元から笑みがこぼれた

「そっか。話したくなったら、いつでも相談してね?」

「うん……ありがとう♪」

「ううん。じゃあ私、部活行くね?」

「うん。頑張ってね〜」

そんな風に会話を終わらせると、結衣ちゃんは手を振りながら、靴を履き替えて部活へと行った

麗奈も結衣ちゃんに最後まで手を振り続けていた

結衣ちゃんがいなくなると、頬を赤く染め上げて嬉しそうに小さく笑った





するとだった

また階段から足音と、そして会話が聞こえてきて、麗奈はそれに反応した

階段から健斗くんとヒロくんが降りてくるのが見えた


よく見ると、ヒロくん……泣いてる?

「なぁ、いい加減泣き止めよ」

と健斗くんが苦笑しながら慰めている

「でもさ……でもさ……麗奈ちゃん……もしその好きな人と付き合っちゃったらさ……」

「だから、大丈夫だって。あいつ、好きな人いないとか言ってたし……」

「そんなの……隠してるだけかも」

「そんなことねぇって――あ……」

健斗くんが麗奈に気がついて、少し驚いたような表情を見せた

麗奈も健斗くんに気づかれたとき、すごくドキドキしてしまった


するとだった

泣いてるヒロくんが麗奈を見て、すぐに麗奈のところに駆け寄ってきた

「麗奈ちゃんっ!!」

突然目の前で名前を呼ばれて、麗奈はすごくびっくりしてしまった

「は、はいっ?」

ひっくひっくと目の前で泣いている

一体何があったんだろう

「俺、絶対負けねーからっ!!頑張って俺、麗奈ちゃんにふさわしい男になってやるからっ!!」

「な、何が?」

「チクショーッッッ!!!」

「あ、ヒロくんっ!!」

「おいっ!!ヒロッ!!」

ヒロくんは泣き叫びながら、猛ダッシュで帰っていった

ヒロくんがいなくなったあと、しばらく意味不明な雰囲気が漂っていた

「……あいつ、上履きのまま帰っちゃった……」

健斗くんがそう呟いてから、麗奈がかなり戸惑いながら訊いた

「ヒロくん……どうしたの?」

麗奈がそう言うと、健斗くんは苦笑しながら答えた

「いや、何でもないよ……お前今日部活は?」

「今日、明後日に向けてのチェックだから……私参加出来ないの」

「そっか。じゃあー……帰るか」

健斗がそう言うのを、麗奈は静かに頷くだけだった










健斗くんとの帰り道、二人は黙り込んでいた

麗奈の頭の中は、健斗くんにどうやって、何て言って謝ろうかということを考えていた

麗奈は後ろに座って、健斗をちらりと見る

健斗は麗奈の方をまったく見ることはなく、ただ自転車をこぐ

二人の沈黙は、やがて蝉しぐれへと変わっていく



夏の風景が過ぎ行く中、蝉しぐれを聞き、夏の暑さを感じながら、麗奈は深く思いやっていた


このまま黙っていては仕方がない

勇気を出して言い出してみよう

「……健斗くん」

ふと名前を読んでみる。すると、健斗はふと後ろを振り返った

「どした?」

何もない無邪気な笑顔が麗奈の心をときめかす

怒ってないのかな

麗奈はしばらく何も言えず黙り込んだ

そのため、また沈黙が続いた

黙り込んだ麗奈をしばらく見ていた健斗は、ふと微笑みながら言った

「何だよ」

健斗にそう言われて、麗奈はちょっと戸惑ってしまった

「あの〜……その〜……」

また黙り込んだ

中々上手く言えない

「何だよ。言いたいことがあんならはっきり言えって」

麗奈はゆっくりと顔を上げた……

健斗くんが困ったような表情を浮かべいた

麗奈はまた下を俯いてしまった

「……ごめん」

「え……?」

麗奈からやっと出たこの言葉に、健斗は不思議そうしていた

「今日……ごめんね……」

それを聞き、健斗は急に真面目な表情になり、また前を向いて静かに麗奈の言葉を聞いた

「あんな酷いこと……言うつもりじゃなかったの。本当に……ごめん……ごめんなさい……」

「もういいよ」

健斗がそう言うのを聞いて、麗奈は顔を上げて、不安そうに訊いた

「……怒ってない?」

麗奈の言葉に健斗は振り向かずに答えた

「あぁ。怒ってないよ」

「……健斗くん」

すると、突然健斗くんの声が低く、さらにその後ろ姿に何だか怒りのオーラが感じられた

「せっかくお前のこと心配してやったのに、逆ギレされて、ふざけんじゃねーこのヤローッッ!!だなんて、まったく思ってねぇからっ!!」

「う……」

麗奈はそう言われて、スッゴく胸にズキッと来てしまった

やっぱり怒ってる……

しゅんと肩をすくめて、もう何も言うつもりはなかった

「……プッ……アッハッハッハッ♪何しゅんとしてんだよ?」

「え?」

突然吹き出して笑ってきた健斗に対して、麗奈は戸惑いながら健斗を見た

健斗は笑いながら麗奈を見て言ってきた

「冗談だって、怒ってねぇよ」

「……ホントに?」

「本当だって。お前がなんか、妙に真剣に謝ってくるから……ちょっとからかってみただけだっつーの」

それを聞いて、麗奈は緊張していた体中から力が抜けていくような気がした

安心感で胸がいっぱいになった

健斗くんが全然怒ってないことに、本当に安心したし、すごく嬉しかった

「こっちこそ……ワリィ」

突然健斗くんに謝られて、麗奈は不思議そうに顔を上げた

健斗くんはちょっと照れくさそうにしていた

「お前が……本気で悩んでるのに……中途半端な感じで聞いちゃってさ。ごめんな……」

健斗くんはそれから苦笑して言った

「ただ、最近様子が変だったからさ。俺、心配でさ。だから〜……悪かったな」

その苦笑した表情を見て、麗奈は胸が高鳴って、顔が赤くなっていくのが分かった

どうして……どうして健斗くんが謝るの?

健斗くんは何も悪くないのに……

麗奈は下を俯いて、健斗をより好きになってしまったみたいだった

優しい……

暖かい……

どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう

どうしてこんなに暖かいんだろう

こんなに麗奈に優しくしてくれて、いっしょにいてこんなにも暖かくなる人なんて、東京じゃいなかったよ

麗奈はその健斗の表情を見てから、ギュッと健斗のYシャツを握った

「……ごめん……私、健斗くんに嘘ついた」

麗奈の言葉に健斗は不思議そうに聞き返した

「嘘?」

麗奈は頷くと、恥ずかしくて顔を赤くしながらゆっくりと言った

「……好きな人……いるんだ……」

麗奈がそう言うと、健斗はしばらく黙り込んで、また前を向いた

まさかそれが自分だとは思ってるはずがないだろう

すると健斗はふと小さく笑って、静かに呟いた

「好きな人……か」

麗奈はそんな風に黙り込む健斗に対して怪訝そうな表情で言った

「誰かって訊かないの?」

すると健斗が可笑しそうに笑って麗奈に言った

「じゃあ訊いたら教えてくれんの?」

「それは〜……ダメェッ」

と言って、麗奈はプイッと顔を逸らした

「だったら訊くなよな」

「……このこと、みんなに言わないでね?」

「ハイハイ」

まぁ、みんなも薄々気づいているということに、麗奈は気づいてないけど……

それから健斗はため息をつきながら言ってきた

「まぁ……それで何に悩んでんのか知らないけどさ、そんなに悩むなよ」

「え?」

健斗くんにそう言われて、麗奈は健斗のその後ろ姿を見た

「お前らしくねぇーんだよ」

健斗にそう言われて、麗奈の胸がまた高鳴った

「もっと……なんつーか……お前らしくしろよ。そんな風に考え込まないでさ。その人が好きなら好きで、それでいいんじゃないの?」

「…………」

「その……上手くは言えないけどさ……やっぱり、お前らしい恋をして欲しいって、俺は思うからさ……」

健斗の言葉に麗奈のドキドキは止まらなかった

私らしい恋……か……

健斗くんの言いたいことが分かる

だから、嬉しかった

健斗を抱きしめたい……この大好きな温もりを感じたい

けど、そんなことは出来ないから、麗奈はまた健斗のYシャツをギュッと握った

「健斗くん」

ふと名前を呼んでみる

すると健斗はゆっくりと振り返った

「ん?」

麗奈は嬉しそうに微笑みながら、健斗に言った

「ありがとう♪」

「……別に……」

照れくさそうに顔を背ける健斗が何だか可愛くって、麗奈は可笑しそうに笑った


さっきまで茜色の空だと思っていたが、まだ青い空に見えた



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