第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.7
健斗は気を落としながら、職員室から出て行った
「失礼しました……」
休み時間とかにヒロたちに勉強を教えてもらって、放課後……何とか満点を取ることが出来た
けど、満点をとったご褒美は先生の熱い説教でした
これから勉強をちゃんとしていくようにと、約1時間以上長い話を聞いていた
結局全部が終わったのが、5時半であった
バイトにも遅れてしまっている
それにシュークリームのセールに間に合わなかったし……
早川との約束も守ることができなかった
今日ちゃんとメールで謝ろう……
とりあえずだ
早くバイトに行かなきゃいけない
一週間減給決定だけど、仕方ないよな。元々は俺が悪いわけだし
まぁ、とりあえず連絡は入れておこう
健斗は深くため息をつきながら、急いでバイト先へと向かった
商店街はいつもより賑やかだった。そりゃ当たり前と言えば当たり前だった
明後日から七夕祭が始まるんだし……そのための準備があるんだろう
こういうときに活躍するのが自治会だと思ったが、それよりも商店街の組合が活躍するようだ
広場にはステージが設けれている。あそこで演奏を聞いたり踊ったりするんだ
さらに祭りの期間は、どのお店も営業しない
だって何百人の人が商店街に入るんだから
そして健斗はいつものようにRyuの目の前にチャリを止めて、
ゆっくりと店の中へと入っていた
「こんちわっす」
挨拶をすると、店長がカウンターにいた。健斗を見るといつもの調子で健斗に言ってくる
「おう、来たか」
「すいません……遅れちゃって……」
「追試だったんだろ?その上説教だなんて学生は大変だな」
と言いながら、店長は特徴的な髭を揺らして笑った
「1時間半くらいしかないな」
と店長が時間を見ながら健斗に言ってきた。確かに時計の針は6時10分前ちょっと過ぎを差していた
健斗は頷きながら苦笑した
すると店長がお皿を拭きながら、優しい笑顔で言ってきた
「今日店閉めたあと掃除するけど、それで上乗せするか?」
健斗はそれを聞いてすぐに頷いた
「あ、はい。手伝います」
「そっか。ちゃんと家に電話入れとけよ。ほら、早く着替えてこい」
「はい」
健斗は店長に促されるまま、店の奥へと歩いていった
それから時間が経って、店を閉めて、健斗は店の中で電話をいれていた
家に電話をかけてしばらく呼び出し音を聞く
すると、電話の奥から声が聞こえてきた
「はい、山中です」
この声は母さんじゃない。麗奈の声だった
「麗奈?俺だけど」
健斗が名前を呼ぶと麗奈は明るい声で言ってきた
「あ、健斗くん?」
「うん」
「どうしたの?まだバイト?」
「うん。お前一人?母さんは?」
「お母さん、今日お仕事で遅くなるって。お父さんも今日外回りで遅くなるらしいよ」
健斗はそれを聞いて、少し息を吐いた
「そっか……あのさ、俺も今日バイト遅くなるんだ。多分8時半過ぎまで。だから帰りは9時くらいになりそうなんだよね」
健斗がそういうと麗奈はちょっと寂しい感じの声を出した
「そっか……分かった」
「なるべく早く帰るようにするから。それまで家のこと頼むわ」
「うん。ご飯作って待ってるね」
「うん。ゴメンな?じゃあ、切るから」
「うん。頑張ってね」
そんな会話をして、健斗は電話を切るとため息を吐いた
何だか、今日そういえばまともに会話なんてしていない
朝いっしょに行くときも、そんなに会話なんかしなかったなぁ
「何だか、こうして会話を聞いてると、お熱い新婚さんみたいだな」
と店長が冗談をふかしめたりしてきて、健斗は顔を赤くした
「やめてくださいよー……っもう」
と言いながら、健斗はモップを手に持って、念入りに床を掃除した
店長はそんな健斗を見ながら、笑って、テーブルや椅子を綺麗にしていた
健斗は床をモップ掛けしながら、麗奈のことを思い出していた
ちゃんと気がついてた。最近の麗奈、何だか様子が変だっていうことに
最初はただの気のせいかと思っていた。現に今だって、普通に会話出来てたし
一見何の様子も変わらない
けど、実は今日学校でずっと麗奈のことを見ていた
休み時間、いつもなら早川や佐藤のとこに行くのに。今日はまったく動かず、ずっとぼーっとしていた
あれが上の空というのだ
授業中も何かに思いやってるのか、ため息ばかりついてたし
お弁当のときは笑っていて、早川は佐藤やヒロからしては何も変わらないように見えるのかもしれないけれど、やっぱりどこか違和感を感じていた
急になんとなく雰囲気が変わったっていうか……常に麗奈を見ている健斗だからこそ気がついたことで、以前の麗奈らしくないというか……
けど確信はなかった
もしかしたら、ただの気のせいなのかもしれないし
麗奈自身、何も気がついてないらしい
周りのみんなもまったくそんなことを気にしていないみたいだ
ただの思い過ごしなんだろう
そんなことを考えながらモップ掛けをしていると、ふと店長が笑いながら聞いてきた
「最近学校どうだ?」
店長には、ちゃんとこの前の松本絢斗のことを話した
店長は笑いながら感心した。まさか健斗が学校そんな目立ったことをするわけがないと思っていたから
自分でもあのとき学校に行ってしまったことが正しかったのか、今でも分からない
早川にショック与えたのもまた事実、それにあのサッカー部はこれからどうなるんだろう
松本絢斗は……今どうしてるのかな
話に寄ると、あの日から学校を休むようになったらしい
さらに噂によると、この時期に違う学校に転校しようとしてるとか……
さすがにそれはないとは思ったけど、けど松本絢斗の今の状態を聞いて、胸が痛んだ
自分のせいで松本絢斗は苦しんでいると思うと、いくら大嫌いなやつだと言えども悲しい気持ちを隠すことなんて出来なかった
ヒロにそのことを話したら、ヒロは怪訝そうな表情を浮かべた
「お前が気にすることじゃねぇよ」
ヒロにそう言われて健斗は下をうつむくことしか出来なかった
「お前は松本絢斗と勝負して、勝ったんだから。勝者が敗者を気遣うなんて惨めにも程があるだろ。今あいつはただプライドがお前に引き裂かれて自信を失ってるだけだと思う。転校とか、このまま不登校なんてあるわけねぇよ」
健斗はヒロの言葉を聞いて、安心したけど、同時に複雑な思いを感じた
ヒロの言うことにはいつも説得力を感じた
早川はまだ翔のことが好きだって、そう言われた
そのことはもちろん誰にも話していない
ただ、その話を聞いたとき安心した
早川はもうずっと前に翔のことなんて忘れているのかと思っていたから
けど早川は翔のことを今でも好きでいてくれている。翔も早川のことをを好きだったって言ったとき、嬉しそうに笑っていた可愛らしい早川を思い出すと、何だか胸が熱くなる
それは健斗もほんの少しの喜びを感じていたのかもしれない
たが、やっぱりそれでも傷心したのは隠したくなかった
まだ早川は自分のことを見てくれていないということが分かったから
今は、今は早川のこと……翔のこと何か関係なく好きなんだ
早川っていう一人の人間を純粋に好きなんだ
そんな思いを胸に秘めていた
あれから早川ともっと仲良くなったんだけど……本当はすごくやるせない気持ちを持っていた
この思い……誰にぶつければいいんだろ?
「最近……友達が増えましたよ。最近毎日が楽しいです」
と言って笑いを浮かべた
友達が増えたというのは本当だ。けどあの日以来、そういう優しい目だけじゃない
廊下を歩いているとたまに辛い目線を感じるときもある
けど、何となく話したくなかった
「今度みんなで七夕祭に行くんです」
「そっかぁ」
「そういえば外は最近本当に忙しそうですね。今日もここに来る途中、すごい賑やかでした」
健斗が笑いながらそう言うと、店長は軽く笑った
「そりゃそうだろ。明後日七夕祭なんだから。組合のやつらもよく昼飯にここにくるんだ」
「店長は組合に入ってないんですね」
「まぁな。ああいう力仕事はちょっと向いてないかな」
「そうっぽいですね」
健斗が笑うと店長も髭を揺らして笑った
「お前だって、ちゃんと筋トレくらいはしとけよ?じゃないと将来三段腹になっても知らんからなー」
「気をつけまーす」
健斗と店長は笑いながら、掃除を続けていた
「よしっ。パッパッと終わらすか」
それから30分くらいが経って、健斗たちは掃除を早めに終わらせた
「だ〜っ!!終わったぁ〜!!」
健斗はしんどそうに、ゆっくりとカウンター席に座った
すると店長が笑いながらカウンターから何かを取り出して、熱いお茶を健斗にくれた
そして自分もゆっくりとカウンター席に座った
「あざっす」
「これいるか?今朝女房に渡されたんだ」
と言って見せてきたのは透明の容器に入ったお萩だった
健斗はお萩が大好きだったから、遠慮なく頂いた
「じゃああざっす」
と言って、一つ食べる
甘い味わいが口の中に広がった
「ウマイッス。奥さん料理上手なんすね」
「そんな大袈裟なもんじゃないけどなぁ」
と言って笑いながら店長もお萩を食べる
健斗は熱いお茶をゆっくりと飲みながら至福な時を過ごしていた
「お前は本当にじじくさいやつだなぁ」
「へへへ♪よく言われます」
と言ってまたお萩を食べた
「……そういうば麗奈ちゃん元気か?」
健斗はそれを聞くと飲み込みながらゆっくりと頷いた
「はい。うざすぎるほど元気っすよ」
「ははっ、そうか」
「あいつ、やっと最近吹奏楽部に入ったんです」
健斗がそれを言うと、店長はちょっと驚くように言ってきた
「そっか。じゃあ、七夕祭の演奏はやるのか」
「いえ。まだ仮入部らしいんで……でも家でよくフルート吹いてるの見ます」
「フルートか……前も吹奏楽やってたのか?」
「いえ。高校に入ってから初めてらしいです」
「そっか。じゃあ練習しないとダメだな」
「前、ピアノをやってたことがあったらしくて、そのおかけでセンスあるみたいです」
「そっか……ははっ♪相変わらず楽しそうにしてるみたいだな」
すると店長はちょっと照れるように言ってきた
「あんな可愛い女の子と知り合いになれるなんて……年を取っても悪くないな」
「俺はあいつのせいで毎日がハチャメチャですけどね……」
「ワッハッハッ♪」
と店長が可笑しそうに笑っているのを見て、健斗も笑った
「……でも相変わらず……じゃないような気がすんですよね」
健斗がそう言うと、店長はタバコを口にくわえながら不思議そうな表情を浮かべた
火をつけて、煙をふーっと吐いて灰皿にとんとんと叩く
「また気になることでもあったのか?」
店長の問いかけに健斗は首をかしげた
「う〜ん……最近あいつ変なんですよね……上手く言えないんだけど、なんかぁ〜……その〜、何だか違和感を覚えるっつうか」
「違和感ねぇ〜」
「なんか、最近あいつ学校でもぼけ〜ってしてて……本当になんかすごく変な気がするんですよね。あの〜先々週くらいから」
健斗はそういいながらお茶を飲んで軽く笑った
「まぁ、俺の気のせいかもしんないけど」
「ふぅ〜ん……何かあったんじゃないか?」
「何かってなんだろ?」
「例えば〜……悩みを抱えてるとか」
「悩みかぁ〜……でも何かちょっと違うんですよね」
健斗はお萩を口に入れると、そうだと考えついた
「最近女の子らしくなったんすよ」
「何だそれ?」
と店長は可笑しそうに軽く笑った
「きにしすぎなんじゃないか?麗奈ちゃんだって、年頃の女の子なんだし」
「そうっすかね〜?女の子が変わるようなときってどんなときなんすか?」
ふと訊きたくなって、店長に訊いてみると店長はしばらく考えた
「そうだなぁ〜……よく言うな。恋した乙女は変わるって」
「……恋?」
健斗が聞き返すと店長はちょっとにやけながら、健斗に言ってきた
「もしかして……麗奈ちゃん好きな人でも出来たんじゃないか?」
健斗はちょっとぼ〜っとしながら考えた。あの脳天気バカに好きな人ねぇ
そう考えた瞬間、思わず笑ってしまった
「いや、ないっすよ。あんな脳天気バカに」
と声を立てて笑った。けど、店長はタバコをグリグリとしながら、ニヤニヤした
「そうか〜?私はそんな気がしてきたけどなぁ〜?どうするんだ?」
「べっ……別にあいつに好きな人が出来ようが俺には関係ねぇっすよ」
「ほぅ〜……」
健斗は怪しげな店長の目線をそらしながら、お茶を一気に飲み干した
「さて、俺そろそろ帰ります。麗奈一人なんで」
と言いながら、健斗が立ち上がると店長もゆっくりと立ち上がった
健斗は鞄を持って、ゆっくりと店の外に出ようとした
「今日はありがとな。あ、明日から七夕祭終わるまで店閉めるからな」
「はい。じゃあお先に失礼します」
健斗は店長に見送られながらゆっくりと店の外に出た
商店街は夕方と違ってまったく静まり返っていた
そんな様子に少し心寂しくなった健斗は急いで家へ帰ろうとした
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