第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.6
麗奈は家に帰って、お風呂に入り終わると、ちょっと不機嫌で裸体をバスタオルでくるんだまま、自分のベッドに寝転がった
「……もうっ」
麗奈は健斗に対してちょっと怒っていた。理由はさっきのことだった
健斗くんのバカッ……
あんなこと言わなくてもいいのにぃ〜……
大体健斗くんが結衣ちゃんにあんなにデレデレするから……
………
どうしてこんなに胸が痛むのかな……今日健斗くんが、結衣ちゃんと仲良くしているのを見て……すごく悔しかった
今日だけじゃない。最近そうなのだ。徐々に結衣ちゃんと仲良くなっていく健斗くんを見て、何だか嬉しいような気もしたけど……同時に寂しくって悔しくて……辛かった
けど何だろうこの気持ち……何だか嬉しくて暖かくて、フワフワした感じ。すごく幸せで、何だか前も感じたような懐かしい気持ちだった……
けどそれと同時に、麗奈は少しあのことを思い出していた
ギュッと手を握る
怖い……
あのときの光景まで目に浮かんだ。それは松本絢斗が麗奈の手を掴み、身体に触れてきたとき……同じ光景を思い浮かべた
だから少し怖かった
もう忘れようとしたことなのに……
麗奈はそんなことを考えながら、深くため息をついた
最近の私……変だなぁ……何をそんなに気にしてるんだろう?
ふと目を瞑ると、思い浮かべるのは健斗くんだった
健斗くんの笑顔が、脳裏に浮かぶ
健斗くんのこと……何でこんなに気になるのかな……
何であんなに意地悪で子供っぽくて……あんな人……
いつから芽生えたんだろう?こんな不思議な気持ち……健斗くんを見ているとたまにすごくドキドキして……自分が分からなくなる
麗奈は少し今までのことを思い出していた
一応……初めて会ったとき、何だかすごく普通な人で、色んな不安を抱えてた私は少し安心をした
でも全然健斗くんは私を見てくれない。受け入れてくれなかった。それは当たり前だと思って、でも絶対に仲良くなろうとしたよ
結衣ちゃんのこと好きなんだって知って、何だか可笑しかった
でも、健斗くん顔は悪くない方だから、頑張って欲しいなぁって思った
健斗くんに素直な気持ちを伝えたら、健斗くんは初めて笑ってくれた
そんな笑顔を見て、何だかすごくクールなイメージがあったんだけど、少し可笑しくって可愛かった
けどそれ以上に……すごく安心したんだよ?
それから〜……
麗奈がそんなことを考えていると、突然ドアがノックされた
「麗奈ちゃ〜ん」
お母さんの声がした。するとお母さんはゆっくりとドアを開けて、麗奈を見てきた
「ご飯食べるわよ〜……って……あら」
麗奈の裸体をバスタオルでくるんだ姿を見て、お母さんは少し顔をしかめた
「こら〜?ダメでしょ〜?いつまでも裸じゃ〜。風邪引いちゃうぞ?」
「えへへ……すいませ〜ん♪」
と麗奈が照れながら言うと、お母さんはクスクスと笑った
「もうすぐご飯だからね。早く着替えて降りてきなさい?」
「はぁ〜い♪」
お母さんがそういうと、お母さんは笑いながらゆっくりとドアをしめた
麗奈はゆっくりとベッドから降りて、タンスからTシャツとズボンに、ピンク色のパンツを取り出した
そして、そこで着替えながらまた深くため息をついた
そして次の日となって、麗奈はいつものように少し朝早く起きた
大体麗奈がいつも起きる時間は7時くらい。やっぱり家を出る一時間前くらいには起きなきゃね
麗奈はのびーっとして欠伸をしながら部屋を出る
顔を洗いに行こう
階段を降りて、洗面所に向かうと……玄関に誰かがいることに気がついた
そこには健斗が白いTシャツと短パン姿で靴を履いていた
「健斗くん?」
ふと麗奈に呼ばれた健斗は、ゆっくりと振り返って麗奈を見た
「よっ、おはよう」
笑いながらそう挨拶してくる。そんな表情にちょっとだけドキドキしちゃう……
「おはよー。どこ行くの?」
健斗はゆっくりと立ち上がって、欠伸をしながら答えた
「ゴンタの散歩。たまには俺が行ってやろうと思ってさ」
「えっ……珍しいね」
健斗はそんな麗奈を見てむっとした
「本当は俺がゴンタのご飯をあげる係と散歩係なの」
「そんなこと言って、普段してあげないくせにぃ〜……ゴンタ可哀想〜?だからこの前病気になっちゃうんだよ〜?」
「うるさいなぁ……」
ったく……と麗奈の憎まれ口を振り払うかのように健斗はゆっくりと家の戸を開けた
と思ったら、健斗はじと目で麗奈を見てきた。そしてからかうようにちょっとニヤケながら麗奈に言った
「……早くそのボサボサ髪を直せよ〜?スゲーことになってんぞ?」
健斗がそう言うのを聞いて、麗奈は顔を赤くして、すぐに髪を手で押さえた
「あっ……やだっ……」
麗奈が恥ずかしそうに頬を膨らませてるのを見て、健斗は可笑しそうに笑った
「ナハハハハハハ〜♪」
からかうように笑いながら家を出ていく健斗を見て、麗奈はむっとした感じで健斗の後ろ姿を見ていた
「……もうっ……」
またからかわれちゃった……最近、健斗くんによくからかわれる
前は麗奈がからかう方だったのにぃ〜
む〜っ……
麗奈はちょっとふてくされるように髪を押さえながら、洗面所に向かった
それから時は経ち、麗奈は学校で少しぼ〜っとした様子で自分の席に座っていた
そう言えばつい最近、席替えをして、麗奈は少し真ん中目の席になっていた
健斗くんは麗奈と離れた、廊下側の席に……
何だか……ちょっと残念だなぁ……
ってっ!!私何考えてんだかっ!!
ふいに顔が赤くなって、麗奈は頭を横に振った
何だか最近本当に変な自分がいる……そんな自分に深くため息をつく毎日……
と、するとだった
「山中ーちょっと来いー」
数学の授業が終わったあとの休み時間、健斗くんがヒロくんと喋っていると、突然数学の影山先生に呼ばれてるのを、麗奈は見ていた
健斗くんの表情は少しひきつっている。まるでこれから何を言われるのかが分かっているみたいに……
健斗くんは先生の前に立つと、先生は厳かな表情で何かの用紙を健斗くんに見せつけた
「これな〜んだ?」
健斗は目をパチパチさせて、よく目を凝らして見た
「……数学の小テスト?」
「そのとおり……これ何点でしょ〜か?」
健斗くんはまた目を凝らしてよく見てみた
「…………」
しかし何も答えない健斗くんに先生は厳かな表情を保ちながら深くため息をついた
「……50点満点のテストで9点って何だ9点って……」
「いや……あの……えっとですね」
健斗くんはちょっと照れながら苦笑した
「そんとき、たまたまお腹がその……ギュルルルル〜って」
「……腹痛か……?」
「いや……腹……ペコ?に……なってですね……」
しばらく沈黙が続いた……
「「「……プッ……アッハハハハハハハ♪♪♪♪♪」」」
その様子を見ていたクラスのみんなが、健斗くんの言うことに可笑しさを感じて大笑いをした
結衣ちゃんやヒロくん、マナもみんな可笑しそうに笑っていた
麗奈はちょっと呆れるようにため息をついてたけど、先生も同じ気持ちだったみたいだ
「……フフ……フフフフ……フフフフフフフフ……」
先生も突然笑い始めて、健斗くんもそれにつられて笑った
「アハ……アハハハ……アハハハハハハハハ」
「フッフッフッフッ……フッアッハハハハハハ」
「アッハハハハハハハ♪♪アッハハハハハハハ♪」
「……お前今日追試ね」
「え゛……」
先生が笑うのを止めて、健斗くんにそう厳かな態度で言い放った
その瞬間、健斗くんの身体が固まったのは言うまでもない
「放課後……職員室に来るよーに」
「……センセー。俺、今日大事な用があるんすけど……」
多分大事な用って、どうせ100円セールのシュークリームだと思う
そういえばあれ、今日の5時半までだって
第一、健斗くんのバイトが4時半からだから、それまでに買わないと買えないんだよね
何て言うか……アホらしい……
ため息しかつけないよ……
「んなもん知るか〜。サボったらお前、数学赤点つけっから〜」
「あっ……赤点……」
「まぁそういうことだ〜。満点取るまで帰らせないからなぁ〜?ワッハハハハハ♪♪」
そういいながら、先生は丸めた教科書で愉快そうに健斗くんの頭を叩きながら教室を出ていった
教室中は愉快そうに笑いが起きて和やかな雰囲気になってたけど、健斗くんの表情は失望と落胆だった
ヒロくんが笑いながら健斗くんの肩を叩いている
健斗くん……すっかり気を落としてるし……
あの負のオーラは一体……
そんな健斗に可笑しさを感じつつも麗奈はため息をついた
「ねぇ山中くんってさ、何か雰囲気変わったよね〜」
ふと麗奈の席の近くで二人組の女の子たちが話してるのを、麗奈はこっそり聞いていた
「やっぱり〜?あたしさ〜、健斗くんって〜、中学のころからもっとクールで何か厳しい人だと思ってたんだよね〜?」
「そうそう。でも、意外に和やかな人だよね?面白いし♪」
「サッカー凄いしね〜?」
「「ね〜♪」」
麗奈はそんなことを聞きながら、また健斗くんを見た
ヒロくんの言うとおりだった
あの松本事件(麗奈の中でそう呼んでいる)以来、健斗くんはみんなから見られる目が変わった
何か前より人気が出てきたというか……麗奈やヒロくん、結衣ちゃんやマナ以外のクラスの人たちと話してるのをよく見る
ほら、今だって……
「山中〜元気だせって?勉強教えてやるからさ〜?」
「あんなハゲ山の言うことなんか気にすんなよ〜?」
「マジで!?ヒロじゃあてになんなかったんだよ〜?サンキュー!!」
「おいっ!!俺だってちゃんと41点だぞ!?」
「「「「うっそ!?」」」」
「お前頭よかったっけ?」
「ふふん……お前とは才能がチゲーんだよ?」
「エロメガネオタクのくせに……」
「オタクは余計じゃっ!!」
「エロも否定しろよな……」
あんな風に大勢の人と話して笑っている……
確かに変わってるような気がする
だって、麗奈が初めてこの学校に来たとき……健斗くん……ヒロくんや結衣ちゃんたちとさえ、学校ではあんまり話さなくって、いつも自分の席に座っていた
大勢の人といるのが苦手だって言っていた
そんな自分を変だって言っていた
今は……今はどう思ってるんだろう?
でも……なぁ……確かに最近……前よりも明るくなっているかもしれない
最近、健斗くんの中で何か色んなことに変化が訪れているみたいだ……
なんか……変なの
「何が変なの?」
「う〜ん……何か最近健斗くんさぁ〜……って、わぁっ!!」
突然マナと結衣ちゃんが麗奈の近くにいて、麗奈は少し驚いてしまった
マナがニヤニヤしながら麗奈に訊いてきた
「健斗くんが何々?」
「べ、別になんにもないよ〜?」
と麗奈が少し慌てるように言うと、結衣ちゃんが少し可笑しそうに言ってきた
「麗奈ちゃん、ずっと健斗くんのこと見てたよ?」
「そ、そんなことないって!!ただ、健斗くんがバカみたいだなぁ〜って」
「「ふぅ〜ん……」」
二人はちょっと怪しそうな表情を浮かべて、麗奈を見ていた
麗奈は恥ずかしくなって、プイッと顔を剃らした
何だか……スッゴク恥ずかしい〜……
「フフフ♪冗談だよ麗奈ちゃん。ゴメンゴメン♪」
と結衣ちゃんが可笑しそうに笑うのを見て、麗奈は少し安心した
「健斗くん、大変だね。大丈夫かな?」
「う〜ん……まぁ、健斗くんだし何とかなるよ♪」
と麗奈は苦笑しながらそう言った
まぁ、テスト出来ないのは普段授業寝てたりサボったりしてるせいだけどね〜♪
それに……
「えへへ♪若干いい気味かもぉ♪」
昨日さんざんからかわれっちゃったし、今日だって……
「そうだね♪」
と結衣ちゃんも笑いながら健斗くんを見つめた
結衣ちゃんは優しそうな眼差しで健斗くんを見ながら、穏やかな感じで言った
「健斗くん、最近変わったよね」
さっきの女の子と同じことを言う結衣ちゃんに、麗奈はそっと耳を傾けた。するとマナがすぐにそれに反応してきた
「だよね!?何かさぁ、前よりもちょっぴりマシになった感じぃ。ね?」
と麗奈に言ってくるマナに、麗奈は少し考えながら苦笑した
「う〜ん……確かに変わったよーな気もするんだけど……別に普通のような気もするぅ」
「あそっかぁ。麗奈ちゃん、毎日健斗といるもんね。一番身近な人だし、気づかないよね」
麗奈は苦笑しながら頷いた
マナの言うとおりだった
確かに最近健斗は何だかちょっと変わったように思えるが、みんなが言うような大きな変化に気づくことは出来ない
それは毎日、麗奈が健斗と過ごしているからだと思う……
だから麗奈の感覚だと……
最近の健斗くん、
「変」なの
という具合だった
「そういえばこの前部活でね〜――」
マナと結衣ちゃんと麗奈はいつものように女の子の会話を始めた
麗奈もそれを聞きながら、一回だけ健斗をチラッと見る
すると、偶然か……健斗とも目があってしまった
麗奈はすぐに恥ずかしくなって、目を剃らした
そんな麗奈をまた不思議そうに感じている健斗を知らずに……
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