第6話 ドキドキ・・・?
第6話 ドキドキ……? P.5
「そういえばもうすぐ七夕祭だね」
ふとかき氷を食べ終わって、やっと涼しくなってきたころに、佐藤がそう口に出した
この丘から眺める夕日を見ながら健斗は笑った
「今年もまた始まるんだな」
健斗にとって、この神乃崎で行われる七夕祭は馴染み深いものがあった
もう35年の歴史が続いている伝統の七夕祭、健斗も幼いころから毎年参加していた
「麗奈ちゃん、七夕祭のこと知ってる?」
早川が微笑みながら麗奈にそう訊いてくると、麗奈は少し考えながら言った
「ん〜っとね……えっと……七夕祭って3日間あるんだよね?で、1日目が……踊りとかで……2日目が、吹奏楽の演奏があって……3日目に花火があるんだよね?」
健斗は麗奈がそのことを知っていることに、少し驚きを感じていた
「誰から聞いた?」
「えへへ♪竜平さんに教えてもらったんだぁ〜♪」
すると早川が麗奈に教えるように言ってきた
「でもね、結局3日目に全部やるんだよ?踊りも吹奏楽の演奏も、お店も花火も」
「へぇ〜……じゃあ3日目だけ行けば充分そうだね?」
「ほとんどの人はそうだよ。俺ら何か毎年3日目しか行かないもんな?」
とヒロが笑いながら健斗に言ってきた
ヒロの言うとおり、健斗も3日目しか行かない派だ
「健斗、今年こそ行くだろ?」
ヒロにそう訊かれて、健斗は苦笑しながら答えた
「う〜ん……まぁ……な」
そんな健斗を見ながら麗奈が不思議そうな表情を浮かべた
「今年こそって何?」
麗奈の問いかけにはヒロが笑いながら答えてきた
「こいつさ、去年も一昨年も来なかったんだ。だから2年ぶりに行くってわけ」
すると佐藤が少し驚きながら訊いてきた
「ふぅ〜ん……どして?」
「ん〜……まぁちょっと忙しかったから……」
と言いながら健斗は苦笑した
本当のことを言うと、2年前から行かなくなったのは、やっぱり翔のことが原因だった
毎年、健斗は翔たちと祭りに行っていた
ずっとずっとずっと……そんな翔がいなくなってしまってから、健斗は祭りに行く気分なんてまったくなくって……
いつも家で、一人残っていた
けど、どうしてかな?
今年は何故か、別に行ってもいいような気分だった
翔のいない寂しさが何故かなくなっていたから……
だから逆に今年はすごく楽しみだった
すると佐藤が何かを思いついたかのようにみんなに言ってきた
「ねぇ、じゃあさ、みんなでいっしょに行かない?」
佐藤の発案に、健斗は少し胸が高鳴った
するとそれにヒロがすぐさま賛成をしてきた
「サンセーッ!!行こうぜっ!!なっ、麗奈ちゃんっ!?」
「結衣も健斗もいいでしょ?」
健斗と早川はそう言われて、一瞬目が合った。健斗はすぐ気恥ずかしくなって目を剃らしたけど、早川は笑っていた
「うん。私はいいよ?麗奈ちゃんも大丈夫だよね?」
と早川は麗奈に言うと麗奈は嬉しそうに微笑みながら言った
「うんっ♪」
「健斗くんも……平気かな?」
早川にそう訊かれて健斗は内心ドキッとしていた
ちょっと慌てながら健斗も了解した
「あ……うん。俺も平気っ」
健斗は早川に微笑みかけると、早川は少し安心したかのように笑った
「じゃあ来週の土曜に……5時半に神乃崎駅集合〜ってことで♪」
佐藤がそう言うと、健斗たちは了解するよう頷いた
それから少し話をしたあと、日が沈もうとしていた。蝉の鳴き声も少なくなっていたころに帰ることになった
「じゃあね〜結衣〜チヨバァによろしく〜」
「じゃあな〜」
「バイバ〜イ♪」
それぞれ早川に別れを告げると健斗たちはチヨバァの店を後にした
丘を下ると、ヒロがちょっと意外そうに言ってきた
「あれ?お前らチャリかよ」
どうやらヒロはここまで歩いてきたらしかった
「いっしょに歩こっか?」
健斗が訊くと、ヒロは手を振りながら笑って答えた
「いーよ。俺ゆっくり帰るし……先行けよ」
「そっか。じゃあまた明日な。じゃあな佐藤」
「うん。バイバァ〜イ二人とも〜」
「じゃあねぇ〜♪」
健斗と麗奈は二人にも別れを告げると、ゆっくりと自転車をこいで、家路についた
そんな後ろ姿を見ながら、佐藤はにやついていた
「な〜んか、こうして見るとやっぱりカップルみたいね〜♪」
「えぇっ!!ヤメロよっ!!悲しくなんだろっ!!」
健斗たちは自転車をこぎながら、夕日を眺めていた
「わぁ〜♪キレ〜♪♪」
健斗もこぎながらその夕日を眺めていた
「……お前本当にこういうの好きだよな」
と健斗が可笑しそうに笑うと、麗奈は可愛らしい笑顔を見せてきた
「だってさぁ、見たことないんだもん」
「東京じゃあ夕日も見られねぇのかよ」
と健斗が笑いながらため息をついた
「どうかなぁ?そんなに言うなら、今度東京に遊びに来なよ」
「う〜ん……面倒臭いからやだ」
健斗がそういうと、ふと麗奈は黙り込んだ
しばらく沈黙が続く。健斗は何も気にしてなかったけど、麗奈は少し気にかかっていた
「……どした?」
急に黙り込んだ麗奈を見ながら、健斗は振り向いて麗奈を見た
すると麗奈はすぐに笑って首を横に振った
「ううん。何でもない」
そんな麗奈に何の違和感を持たず、健斗はまた前を向いた
「……結衣ちゃん、元気そうだったね。よかったじゃん」
と麗奈がそう言って来て健斗はふと笑いながら頷いた
「うん」
「ちょっと安心したね?髪切ってるのはちょっとびっくりしたけど」
「ミディアムもよかったけど、ショートも似合うよな〜」
健斗が頬を赤くしながら言うと、健斗は少しショートになった早川を思い出していた
マジで可愛いかった……ずっと早川はミディアムヘアーだったから、それに慣れてたから……けどショートヘアーの早川も、何だかさらにおしとやかさに磨きがかかったっつうか……
とにかく本当に可愛い……
それにだ
健斗と早川はあの日以来前よりもっと仲良くなったような気がする
前まで「山中くん」だったのが、今では「健斗くん」に変わっていた
佐藤は呼び捨てで「健斗」だけど……
そんな些細な変化だったけど、また一歩早川に近づけたような気がして、すごく嬉しかった
いっしょに祭りまで行く約束をしちゃったり、シュークリームのこともあったり……
前までは考えられなかったことだ
早川と今のように仲良く会話することなんて……この2年間、想い続けただけで、仲良くなりたいとは思っていたけど……まったくというほどじゃなかったけど、あまり会話なんてしなかった
ずっと遠くから、可愛いくて優しくて、おしとやかで……そんな早川を見ているだけだった
けど……やっぱりあの日から少しずつ変わっていったをだと思う
麗奈が初めてこの神乃崎に来たあの日、お互い一応初対面なのに……いきなりTSUTAYAで口喧嘩して、そんな様子を早川が見ていた
その瞬間から、早川と深く関わるようになってきた
最初は恥ずかしくって、たまに逃げちゃうようなこともあったけど……でも今ではすっかりいい友達としている
今はいいんだ
その関係で……
けどいつか必ず、想いは伝わるって分かっているから……
そんなことを想い出しながら、健斗は笑っていた
「……む〜っ……」
そんな様子を麗奈はちょっとむっとした感じで見ていた
それに気がついた健斗はゆっくりと麗奈の方に振り向いた
「何だよ」
すると麗奈はちょっと拗ねたように健斗をじと目で見ながら言ってきた
「……私にはさ、すぐに褒めてくんなかったのに……結衣ちゃんにはすぐに褒めたよね……」
「……だから何だよ」
「別にぃ〜……好きな女の子の前だと随分態度が違うねぇってこと」
「何だよその言い方……俺が性格悪いみたいじゃん」
「どうだか」
それを聞いて、健斗もむっとした。そのあとすぐにため息をついて愚痴を溢すように言った
「ったく……黙ってれば変だし……口を開けば憎まれ口ばかり……あ〜あ」
「な、何よ」
麗奈が口を尖らせて健斗に言う、健斗はそんな麗奈に笑いながらため息をついた
「もっと女の子らしくっつうか……もうちょっと可愛くなれよ。じゃないと好きな人出来たとき相手にされねぇぞ〜?ナハハハ♪」
健斗がからかうように言って、呑気に笑っていた
冗談でそう言ったつもりだった
しかし麗奈はまた黙り込んでいた。そんな麗奈を不思議に思い、健斗は笑いながら振り向くと、麗奈は顔を赤くして頬を膨らませていた
いつもこいつといっしょにいるから分かることだけど……怒ってる?
「……健斗くんのバカッ!!降ろしてっ!!」
「はぁっ?」
「降ろしてっ!!バカッバカッ!!健斗くんなんか嫌いっ!!」
「な、何だよ急に……」
突然暴れ出した麗奈に健斗は戸惑っていた
とりあえず止めると麗奈は健斗を睨みつけながら、すぐに自転車を降りた
「どうしたんだよ?何怒ってんの?」
「怒ってないもんっ!!私歩いて帰るっ!!」
「はぁっ?ワリィ、全然訳分からないんだけど……」
「歩いて帰るもんっ!!」
何故か意地になっている麗奈は健斗にふんっと鼻を鳴らして早歩きで健斗より先に進んだ。その様子を見ながら、健斗は可笑しそうに笑った
「……つーか……」
健斗は苦笑しながら、麗奈を見て指差した
「もう家に着いてんだけど……」
……麗奈はピタッと足を止めると、すぐに振り向いて顔を赤くしながら、また戻ってきた
「わ……分かってたしっ……」
恥ずかしそうに……顔を真っ赤にして目が泳いでいる
そんなことを言う麗奈を見て、健斗はきょとんとしていた
しばらく沈黙が続くと、突然可笑しさが込み上げてきて、健斗は吹き出してしまった
「……プッ……アッハハハハハハハ♪♪ア〜ッハハハハハハハ♪♪アッハハハハハハハ♪アッハハハハハハッッ♪♪」
健斗が腹を抱えながら大笑いしてると、麗奈が頬を膨らませて恥ずかしそうにしていた
そんな様子が子供っぽくって可笑しくて……めちゃくちゃ笑えた
「アッハハハハハハハ♪♪お……お前ってほんっとに天然だよなっ!?イッヒヒヒヒヒッッ♪は、腹いてぇっ……アッハハハハハハハ♪♪」
と言いながら、健斗は笑って家の中へとゆっくり入っていった
「そ……そんなに笑うことないじゃんっっ!!」
恥ずかしそうにむきになる麗奈が、何だか笑えてしばらく健斗はずっと腹を抱えながら爆笑していた
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