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第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.27


「……あ〜イテェ……」

と言いながら、健斗は保健室を後にして、自転車置き場へと向かっていた

「チャリどうしよっかなぁ……」

こんな状態じゃ、麗奈を乗せてチャリを家までこぐなんて出来る気がしなかった

そんな健斗を見てヒロは困ったように言ってきた

「俺今日部活あるしなぁ……佐藤、お前今日麗奈ちゃん乗せてってやれよ」

と佐藤に言うと、佐藤はゆっくりと頷いた

「別にいいけど、山中くんはどうするの?」

「う〜ん……歩いてゆっくりと帰るよ」

「そっか、分かった。麗奈ちゃんもいいよね?」

と佐藤が麗奈に聞くと、麗奈は笑いながらゆっくりと頷いた

「うん。別にいいよー♪可愛い健斗くんのためだぁ、仕方ない」

「可愛い孫のためみたいな言い方すんな。ババァ」

と健斗が呆れ返るようにため息をつくと、佐藤とヒロは笑っていた

自転車置き場に行き、佐藤は麗奈を後ろに乗せた際にまた訊いてきた

「本当にいいの?私たちもペース合わすよ?」

と麗奈がそう言ってきたので、健斗も自転車を出しながら笑って言った

「平気だって。ちょっと寄りたいとこあるし」

「寄りたいとこ?」

麗奈が不思議そうに訊いてきて、健斗はゆっくりと頷いた

「いいから。先帰ってろよ」

「……そっか……分かった」

麗奈は笑いながらそう言うと佐藤はゆっくりとこぎはじめる

健斗はそんな佐藤に苦笑しながら言った

「ワリィな佐藤。家方向違ぇのに……」

すると佐藤はヒラヒラと手を出しながら笑って言ってきた

「へーき♪今度、お昼ごはんおごってくれればいいから」

「はっ?」

「じゃ〜、月曜日お昼よろしく〜♪じゃあ〜ね」

とクスクス笑いながら言うと、佐藤はまたゆっくりとこぎはじめた

「……あっ、麗奈っ!!」

健斗が麗奈を呼びかけると、自転車は止まり、麗奈は振り返った

「返ったら洗濯物入れといてっ!!あと、俺多分遅くなるから、ゴンタにご飯あげといてっ!!」

「分かったぁ!!」

麗奈たちは手を振りながら、校門をくぐって家まで帰っていった

「じゃあ俺も帰るわ」

と言いながら、健斗は自転車を押した

「……つーかお前、頬大丈夫なの?」

ヒロの唇からはちょっと血が出ていて、さらに殴られた箇所はガーゼで施されていた

健斗がそう訊くと、ヒロはヘラヘラしたご様子で健斗に言った

「あ〜、全然平気だから」

「あんま無茶すんなよ」

「今日のお前ほどじゃねぇよ。じゃあな」

「おう」

健斗はヒロに手を振りながら、ゆっくりと学校を出ていった











健斗はいつもの道を自転車を押しながら歩いていた

これから家に帰る前に寄りたいとこがある

それは、墓地だった

とあるお寺の裏に墓地があって、そこにある……

翔のお墓に寄りたかった

学校からは結構近い。まぁ近いとは言っても、歩いて20分くらい

そこに翔の墓があった

翔の両親は、やはり墓は翔が生まれ、育ったこの町に置くことを決めた

多分命日やお盆には来てるんだと思うけれど、健斗は会うのが怖くて、いつも一人、日にちをずらしていた

今日健斗があそこに行くのは、翔の命日が近いというのもあるけど、今日何だか行きたいという気持ちが湧いたからだった





1年ぶりに来たこの墓地へと続く階段。健斗はそれの前にチャリを止めると、途中花屋で買った綺麗な花と、家から持ってきたお線香、そしてまた途中に買った、翔の好物だったぼた餅を手に持って、ゆっくりと階段を上った

不思議だ

いつもこの階段を上っていると、何だかウキウキした

久しぶりの再会を楽しむように

そう、翔との再会を楽しむようにだ



階段を上りきり、久しぶりに匂う自然の匂い。この林の中にある墓は、涼しく、心地よい場所であった



そして健斗は翔の墓地がある場所へと歩いていく



ここの墓地は約35年前からあった、少し大きめな墓地であった

この街の人は大体この墓地に墓を立て、近くにあるお寺でお葬式を行う

翔もその一人だった

健斗は翔の墓に着くと、ゆっくりとその墓を見つめていた

久しぶりに見る、翔の墓……

墓標に刻まれた文字……
「空」

翔の好きだった空を、この墓標に刻んだ

こんなにも綺麗なのは、きっとお寺の人が掃除してくれているからだと思う……

けれど、あまりにも綺麗過ぎる……ふと、線香を見るとだった

誰かがすでにお線香を焚いたあとがある

煙が上る線香……まだ新しい

健斗は驚きながらも周りを見渡す。しかしこの時間、健斗以外の人は誰も見当たらなかった

健斗は不思議に思いながらも、静かに腰を落とす

花束を置き、翔の好きだったぼた餅を供え、健斗も線香を炊いた

ゆっくりと手を合わせながら、目を瞑る


しばらく聞こえるのは風の音……辺りを吹き行く風だけが耳に入る

そして健斗はゆっくりと目を開いた

「……久しぶり。翔」

健斗が笑いながらそう呟くように言った

もちろん返事なんて帰ってくるはずがない

それでも、心の中で会話をするようだった

「……今日、ありがとうな。来てくれて……お前のおかげで勝てた」

健斗はゆっくりと笑いながらそう言うと、静かに息を吐いた

「……俺さ、ずっと迷ってたんだ」

ふとそんなことを口にして、健斗はゆっくりと続けた

「お前が死んでから……毎日、色んなことに迷ってばかりでさ……今日だって、俺があいつと勝負して……結果的に早川を傷つけたし……答えが見つかんねぇんだよ……」

翔が死んでから、いつもの日々が、迷いだらけの日々になった

大好きなサッカーを捨て、何もないつまらないこの世界でさ迷いなが生きるようになった

翔が死んでから、俺は生きる意味があるのかって考えたよ

色んな人を傷つけて……人生を奪って……深い悲しみを追わせたこの俺は、そこらへんにいる殺人者と何の変わりもない

そんな俺が、つまらない人生をのうのうと生きているだけ


だから……


けど、あのとき麗奈に……麗奈に今を生きて欲しいと泣いて頼まれたとき

やっぱり心の中で嬉しかったんだ

俺を必要としている人が、一人でもいてくれるって分かったとき

すごく嬉しかった……

「……もう生きてることに疲れたって……言いたくない……何回もお前に約束したもんな?前を向いて生きるってさ……けど、そんな簡単にはいかねぇよ……」

健斗は苦笑しながら、そんな風に呟いた

「……今お前がいたら……今の俺に、何て言うんだろうな……翔……」

健斗はゆっくりと目を瞑り、翔の表情を思い浮かべた

笑っている翔

泣いている翔

怒っている翔

悲しんでいる翔

楽しんでいる翔

でもいずれもそれは、中学2年生の思い出で止まっている

未だにちゃんと受け入れてられないのかもしれない

お前が死んだなんて

まだ、どこかで生きてくれてるって……

綺麗事だけじゃあ

辛いよ……やっぱり……


健斗は笑いながら立ち上がった

「ワリィ……そろそろ帰るよ。また来るな、翔」

そう言うと、また風が吹いた

健斗はゆっくりと笑いながら、ゆっくりと振り向くと……

するとだった

健斗は目の前にいる人を見て、驚いてしまい呆然立ちしてしまった

胸が高鳴って、抑えきれなかった


そこにいたのは、早川だった

健斗を見つめて、早川もまた驚いているようだった

「早川……」

「山中くん……」

健斗は少し戸惑いながらゆっくりとお辞儀をした

そんなことする必要はなかったんだけど、つい戸惑いしてしまった

そんな早川は頬を赤らめながら、ゆっくりとお辞儀をした

早川が来てるなんて……

あの線香や掃除は……全部早川がやったことだったんだ

驚きの隠せない健斗は早川の目が見れず動揺していた


もしかして早川は……まだ……

…………



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