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健です

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グッラブ! 2
作:健



第5話 挑戦、変わる勇気 P.23




健斗は昇降口の中で、着替えを済ました

ズボンを着て、ソックスを履き、レガースを入れて……そして、健斗はしばらくユニフォームを見つめた

このユニフォームは、中学のときに使っていたもの

これを着るのは2年ぶりだ

不思議と気分は高潮だった

神乃中のエースナンバーの象徴の「10」の背番号……これを着て……あいつに勝つ

健斗はギュッと握りしめると、ゆっくりとそれを着た

「健斗くん」

後ろからふと声をかけられて、後ろを振り向くと麗奈が笑いながら健斗を見ていた

「はい」

渡してきたのは、翔のスパイクだった

健斗は笑いながらそれを受け取った

「サンキュー」

久しぶりに履く、この感覚……健斗はふとそれを感じながら靴紐をちゃんと結んだ

ギュッ……


麗奈にとって、その行動は何だか違う健斗に見えた

サッカーをやる前の健斗くんの雰囲気……それはとても落ち着いていて、けど心の中で何かが燃えているようだった

最後の靴紐を結んだ瞬間、健斗の顔つきが真剣な表情になった

吹き込む風でなびく髪……その一瞬が何だか時が止まったように見えた

そんな健斗を見て……麗奈は胸をドキドキしていた。頬を赤く染めて……何だかカッコよく見えて、不思議な気持ちになった

「ん?どした」

麗奈が健斗をじっと見つめているのに気がつき、健斗はゆっくりと振り向き笑った

麗奈は頬を赤く染めて、すぐに首を横に振った

「ううん。何でもない」

健斗はふっと笑って、ゆっくりと立ち上がった

そして、ギュッと口を噛み締めるとゆっくりと歩き出した

昇降口を出る直前、健斗はふと足を止めた

「麗奈」

麗奈を呼ぶと、麗奈は健斗を見つめた

健斗は振り返らず、静かに目を瞑った。そしてあのとき麗奈に言われたことを思い出していた

「……変わるために必要なのは勇気……なんだよな」

麗奈は健斗からそれを聞いて、戸惑っていた。そしてゆっくりと頷いた

「う、うん」

健斗は麗奈からその言葉を聞くと、ゆっくりと笑って麗奈を見た

「じゃあ俺……負けねぇから」

麗奈の胸がときめいた。頬を赤く染めて、健斗を見つめていた。健斗はそういうと、ゆっくりと前を向き、昇降口を出た

昇降口から出ると、何だか差し込む太陽が眩しかった

それでもゆっくりとグランドを歩く

松本絢斗は笑いながらグランドの真ん中で、ボールを持っていた

健斗は松本絢斗の前で止まると、やつをじっと見た

「ふぅ〜ん……中学のときはお前10番かよ」
健斗は何も言わなかった。松本絢斗のユニフォーム……同じくmizunoの青のユニフォームに、健斗のと同じような白いゲームパンツ。そして背番号は……「2」

「……アップは?随分久しぶりなんだろ?」

「別にいいです。早く始めましょう」

健斗がそういうと、松本絢斗はにっと笑った





教室の中は騒いでいた。何故あの健斗が突然登場してきて、しかもサッカーのユニフォームを着ているのか……

「ねぇ、あれ神乃中のときのユニフォームだよ」

「うん。山中くん、サッカー辞めた……んだよね」

「何で……松本さんと何すんだろ?」

佐藤や早川は、みんなの会話を聞きながら、グランドの真ん中にいる健斗を見つめていた

「よかった〜……山中くん間に合ったみたい」

「そうだね」

早川も内心ほっとしていたけど、かなり複雑な気分だった

すると佐藤は早川の手を握り、引っ張っていこうとした

「あたしたちも、ほらっ、行こう?」

と言い、引っ張ったが早川はすぐに声をあげた

「待って」

早川が言うと、佐藤は不思議そうに足を止めて、早川を見た

早川は苦笑いをしながら、ゆっくりと言った

「……私……ここでいいや」

「えっ?」

早川は沈んだ表情を浮かべながら、そう言った

佐藤はそんな早川に対して違和感を感じ、訊ねようとしたけど……出来なかった




健斗はハーフエリアの中で松本絢斗から勝負の内容を聞いていた

「で、何すんすか?」

健斗が低い声で訊くと、松本絢斗は健斗に笑いながら訊いてきた

「お前は遅刻したんだから。勝負方法は俺が勝手に決めてもいいよな?」

健斗はしばらく考えるとゆっくりと頷いた

「別に……早く説明してください」

松本絢斗はそれを聞くと、思い通りと言うように笑った


「……勝負方法は、1対1方式だ」

1対1……健斗の最も得意な練習でもあり、すごく強い武器だ

つまり、健斗にとっては悪くない勝負方法だった

そう……以前は……

健斗は唇を噛み締めた

松本絢斗は座ると地面に図を用いて説明してくれた

「このハーフラインから、あのゴールに向かって1対1をやる。DFを抜いてゴールを決めたらお前の勝ち。俺がお前からボールを奪うか、止めたら俺の勝ち。それを10本やって、多く勝った方が勝ち……どうだ?」

健斗は何も言わずゆっくりと頷いた

別に何のおかしなところもない

「ただし、もう一つルールがある」

健斗はそれを聞いて、不思議そうな表情を浮かべた

「お前がDFに止められるごとに、DFの数が増える」

健斗はそれを聞いて、しばらく黙り込んだ


麗奈とヒロはそれを少し遠く離れたところで聞いていた

「何だよそれ……汚いな」



健斗はしばらく考えたが、あまり何も気にすることはなかった

松本絢斗は不敵な笑いを含めて言った

「だからお前が負ければ負けるほど、キーパーが入り、2人、3人、4人……となる。ちなみに入ってくるやつは、みんなレギュラーだから。一度でも俺に負けられないな」

と言っておかしそうに笑ってきた。健斗はそんな松本絢斗を見て、そのルールの意味が理解出来た

勝たせないつもりなんだ

この勝負に健斗を不利な状況にして、健斗の勝率を下げるために……

健斗はゆっくりとため息をついた

「……別にいいっすよ」

松本絢斗はそれを聞くと、にっと笑い、ゆっくりと健斗から離れていった


健斗はハーフエリアの真ん中まで歩くと空を見上げた

さっきから心臓が高鳴る。それは、色々な複雑な思いがあった

これからやるのは、サッカーなんだ

もう辞めたはずのサッカーをやるんだよな

あのころは、あんなに無邪気に……楽しくサッカーをやっていた

なのにどうして今は……




こんなに怖いんだろう?




何も言えないのは、本当はすごく怖かった。不安でいっぱいだった。すでに足が震える……目を瞑りたくなかった

目を瞑ったら、あのときの悲惨な光景が頭の中に浮かぶから……

でもやらなきゃ

負けらんねぇ

それは早川や麗奈を守りたいという気持ちも少しはあった

けどそれ以上に、やっぱり自分のために戦いたいから

こんなやつに、敗けっぱなしは嫌だった

父さんが言ってたよ

麗奈も言ってたよ

暴力だけが力じゃない

自分が一番持っている力

それはやっぱりサッカーなんだ

だから、サッカーで俺はあいつと決着けりをつける

自分自身のために、あいつと戦う

過去に打ち勝つためにも……

変わるために必要なのは、勇気だから

勇気を出して……

健斗は深く深呼吸をした

自分の呼吸音と重なるように聞こえる、心拍音


ドクン ドクン ドクン ドクン ドクン ドクン ドクン……

スー……ハー……スー……ハー……スー……ハー……


風の吹く音、健斗はゆっくりと振り返って、松本絢斗を見た




ヒロと麗奈はその様子を邪魔にならないよう離れて見守っていた

ヒロは松本絢斗を見ながら、呟くように言った

「松本絢斗……この神乃高のキャプテンで、ポジションはセンターバック。県でも3本の指に入るくらいの実力らしい……現にここを2次まで連れてってるし……勝てねぇよ、あいつじゃぁ……」

ヒロがそう言うのを聞いて、麗奈はさらに不安でギュッと胸を抑えた

「そんな……」

健斗を見つめる

今麗奈に出来ることはこれだけ

健斗を遠くから静かに見守ることしか出来ない……

見守って、健斗が勝つように祈ることしか出来なかった

「健斗くん……お腹大丈夫かな?」

「……やっぱり気になる?」

ヒロにそう訊かれ、麗奈はゆっくりと頷いた

「……狙われたらやばいだろうな」

ヒロくんがそうやって呟くのを聞いて、麗奈の不安はさらに大きくなった

やっぱり勝たなくてもいい

負けてもいいから……だから


お願い……怪我はしないで……


「健斗くん……」



健斗の心臓は高鳴っていた。それ心臓の鼓動が、周りの空気を張り詰めた

早川や佐藤は教室で不安そうな、心配した表情で見つめている

ヒロは麗奈の隣で健斗を見守る

麗奈は……健斗に願う

そして……目の前には松本絢斗が……




すると松本絢斗が健斗にボールをパスすると同時に、健斗に向かって走ってきた

健斗はボールをトラップして松本絢斗を見た。二人の勝負が始まった














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