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第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.15



そして、1時間目の授業が終わり、健斗は久しぶりの授業にちょっと不思議な感覚を抱いていた

何か、いつも以上につまんねぇ授業……学校は楽しく感じたけど……勉強はいつも以上につまらない

やっぱり家にいればよかったなぁ……

そんなことを考えているとだった

健斗は深くため息をついた

何か余計に疲れてしまった

「よ、お疲れじゃん」

ヒロが健斗に話しかけてきて、健斗は苦笑しながら答えた

「授業って、こんなにカッタルイもんだったっけ?」

「大袈裟だなぁ〜?たかだか3日くらいだろ?」

「本当だよな」

健斗は深くため息をつくと、ゆっくりと立ち上がって、窓から吹き込む風を感じていた

「まぁお前しょっちゅう授業サボってるからな」

「しょっちゅうじゃねぇよ。たまにだよ、たまに」

健斗は深くため息をつくと、ふと前を向いた

早川と麗奈と佐藤が、早川の席で会話をしている

相変わらず、早川は可愛いなぁ……

「ところで、このこの」

ヒロがニヤニヤしながら、健斗につっついてきた

「昨日……この前どうだった?」

健斗はそれを訊かれて心臓が高鳴った

「な、何が……」

健斗がそう言ってくんのを、ヒロは健斗の頭をヘッドロックして笑いながら言ってきた

「イテェ!!イテェっ!!まだ怪我治ってねぇんだからっ!!」

「誤魔化すなよ〜っ!!早川がお前の看病してくれたとき、何か進展でもあったか!?」

「な、何もねぇ〜ってっ!!」

「嘘つけ〜っ!!ぜってぇ何かあっただろ!?」

健斗たちは笑い合いながら、じゃれあっていた

健斗はふと視線を感じて早川の方を見た

早川が健斗を見ていたのだ。健斗と数秒目が合うと、にっこりと微笑んできた

健斗も、それにつられるように、にっこりと微笑み返した



……するとだった


突然教室中が騒ぎ始める。特に女子が、キャーキャー言っているのに気が付いて、健斗とヒロは固まった

早川も麗奈も佐藤も、ふとその騒いでる方を見る

すると、教室の後ろの戸の周りに女の子たちが集まって騒いでいる

誰かを囲うように……

健斗は目を凝らしてよく見ると、それが誰だか気づいたとき、驚きと怒りが湧いてきた

その人物は、あの松本絢斗だった

女の子たちに囲まれながら爽やかな笑顔を送っている

健斗はヒロのヘッドロックから抜けて、松本絢斗を睨み付けるように見ていた

すると、松本絢斗は誰かを捜していた

健斗は、その間早川と……麗奈を見た

早川は顔を赤く染めて、恥ずかしそうにしていた

やっぱりまだ……松本絢斗が好きなんだ

そして麗奈とは言うと……驚きの表情を浮かべていた

健斗はその二人の様子がたまらなく嫌で、松本絢斗を睨み付けるように見ていた

「はぁ〜……あれ松本絢斗じゃん。学校一のイケメンが何の用だろう?」

と、ヒロが不思議そうな表情を浮かべながらそう言った

すると松本絢斗は麗奈と早川を見ると、爽やかな笑顔を浮かべ、教室の中に入ってきた

「よ、結衣と麗奈ちゃん」

松本絢斗がそう言うと、早川は顔を赤くしてお辞儀をした

麗奈は何も言わず、松本絢斗を見つめていた

それから上手く会話は聞こえなかったけど、何か会話をしたあと、早川が健斗の方を見て、松本絢斗に笑いながら指し示した

すると松本絢斗は健斗の方に視線を写すと、ゆっくりと笑い、健斗と目を合わせる

そして早川にお礼を言うと、ゆっくりと健斗に近づいてきた

「……よっ、山中」

「……ども……」

健斗と松本絢斗は挨拶を交わすと、ヒロがちょっと戸惑っていた

戸惑っていたのはヒロだけじゃない。早川や佐藤、麗奈までもが……クラス中の全員に視線を向けられていた

「ちょっとさ、話したいんだけどいっか?」

「………」

健斗は何も言わずにふと麗奈と早川を見た

二人とも動揺の表情を浮かべていた

それを見ると、また松本絢斗に視線を写し、ゆっくりと頷いた

健斗はそのまま松本絢斗のあとについていく









松本絢斗は出来れば誰も来ないところがいいと言ってきたので、屋上に案内した

屋上に入ると、松本絢斗はちょっと驚いていたようだった

「ふぅ〜ん、お前ずるいなぁ。ここ独占してんのかよ」

吹いてくる風が二人の髪の毛をなびかす。そして緊張した空気を流していた

「……この前は悪かったな?」

突然松本絢斗が謝ってきて、健斗は少し驚いてしまい、松本絢斗を不思議そうな目でみた

松本絢斗はゆっくりと笑ってきた

「話聞いたんだけど、腹、痛めたって?ワリィ、ちょっと大人気なかったな。あんましお前が生意気だったから、つい……な」

松本絢斗はそう言うと、また続けた

「もう腹は大丈夫か?顔も……」

健斗はしばらく黙り込んで、松本絢斗を見つめていた。何も答えない健斗を見て、苦笑していた

健斗は深くため息をついた

「……そんなこと言いに、わざわざ教室まで来たんっすか?話ってなんすか?」

健斗がそう言うと、松本絢斗はまた苦笑した

「相変わらず、威勢だけはいいのな」

「そりゃどうも」

松本絢斗と健斗はしばらく睨み合っていた

二人の間に、張り詰めた空気が流れた

「……まぁいいや」

松本絢斗は頭を掻きながら、ため息をつくと、柵に寄りかかった

健斗は黙りながら松本絢斗を睨み付けていた

「お前さ、結衣のこと好きなんだよな」

「…………」

健斗は答えなかった

松本絢斗はそれを分かっていたかのように話をつづけた

「俺が結衣をけしかけて、お前とくっつかせてやろっか?」

「は?」

健斗はまた意外なこと言ってくる松本絢斗に不審な気持ちを抱いた

松本絢斗は笑いながら健斗に言ってくる

「結衣さ、委員会の仕事してるとき……よくお前のこと話すんだよね」

「え……」

健斗は少し胸が高鳴った……

「お前、サッカーがめちゃくちゃ上手だから、俺からお前にサッカー部入るように勧めてくれないかって。まっ、俺はお前をサッカー部に入れる気はないけど」

健斗はそれを聞いていらっときた

言われなくても入るかよ、バァ〜カ

「結構お前のこと知ってるみたいだし……結衣もしかしたら、お前のこと気にしてるかもよ?」

健斗はしばらく黙り込んでいた。早川のことを、思い浮かべていた

「そのかわりさ」

松本絢斗は不敵な笑顔を見せて、静かに言った

「……そのかわり、お前麗奈ちゃんから手を引いてくんない?」

健斗はそれを聞いて、胸がえぐられるような想いになった

激しい怒りが増してきて、松本絢斗を睨み付けた

すると松本絢斗は可笑しそうに笑ってきた

「そんな怖い顔すんなって。お前にとっても悪くない話じゃん?」

健斗がしばらく黙り込んでいた。そしてゆっくりと息を吐いた

「……随分悠長なんすね?今年は受験生なのに……いいんすか?そんな余裕ぶってて」

すると松本絢斗ははぁ〜っと大きなため息をついたあと、空を見上げて言ってきた

「べぇ〜つに。俺、推薦入学でもう大学決まってるし……毎日暇だしさ」

なるほど……と健斗は心の中で呟いた

「……先輩知らないんすか?」

健斗が呟くように言うと、松本絢斗は不思議そうな表情を浮かべた

「何を」

「早川は……先輩のこと好きなんすよ」

健斗が言うのを、松本絢斗は呆れ返るようにため息をついた

「バカかお前……知ってるに決まってんだろ」

「だったら……どうしてそんなことしようと思うんすか?どうして早川の気持ちを素直に受け止めてやらない――」

「お前本当にバカか?」

松本絢斗の口調が変わり、健斗は口を閉じた

「俺を好きになってくるやつなんて、そこら中にいるんだよ。一人だけにかまってられるわけねぇだろうが。うっとおしいんだよ。そういうの」

健斗はそれを聞いてまた激しい怒りを感じた……

「結衣の気持ちを受け止めてやる?今時そんな純情気取っても仕方ねぇんだよ。アホか……」

「早川は……先輩のことを本気で好きなのに……先輩はそれを、無視するんすか……」

「だから言ってんだろうが。じゃないと、こっちも迷惑でうっとおしいだけだって」

そう言いながら、松本絢斗は軽く嘲笑う

健斗は震える拳を、ギュッと握りしめていた

「……麗奈も……そのうちの一人なんすか……」

すると松本絢斗はまた笑ってきた

「お前知ってるか?麗奈ちゃん、今この学校で一番人気あるんだぜ?」

ソレがどうかしたか……

「だから何すか?」

すると松本絢斗はまた不敵な笑いを浮かべて、健斗に言ってきた

「面白いじゃん。あんな可愛い女の子、俺も初めて見たし。ああいう子、落としてみたいし」

健斗はそれを聞いて、ふと訊いてみた

「先輩は……麗奈のこと……好きなんですか?」

すると松本絢斗はしばらく黙り込んでいた

しばらく沈黙が流れる

「……好きっていうか、あんな可愛い女の子ほっとけないし。あの子、スタイルもいいしさ、ヤるときとか気持ち良さそうだし?」

「……っ!!」

何だよそれ……本気で言ってんのかよ……

こいつ……マジで信じられない……


しばらく二人は黙り込んで、健斗は怒りを激しくしていた

殴りたい……このクソヤロウを……今すぐ殴りたい……

「……別に、先輩がそうしたかったら……俺は関係ないし……麗奈と付き合えばいいじゃないすか」

健斗はそういうと、松本絢斗は笑いながら健斗に近づいてきた

「じゃ、決まりだな。任せとけよ」

と言って、健斗の肩を叩いてきた

が、健斗はすぐにその手を振り払った

そして静かに……松本絢斗を睨み付けた

激しい怒りをその瞳に宿し、松本絢斗に言った

「けど、俺は麗奈を渡す気はないですから」


松本絢斗はしばらく健斗を見つめると、不思議そうに笑った

「何だよ。渡すとかって……お前別に関係ねぇんだろ?付き合ってないんだろ?」

健斗はそれを聞いて、静かに言った

「……別に麗奈のことは好きじゃないし、何とも思ってないけど……麗奈は……」

健斗は松本絢斗を睨み付けて、拳を握って少し声量を上げて怒鳴るように言った


「麗奈は、家族だからっ……家族のあいつを、あんたみたいな野郎に渡す気はねぇから」

風が吹いた

松本絢斗は、しばらく健斗を睨み付けるようにして見つめていた

健斗も負けずに松本絢斗を睨み付ける



早川の想いを踏みにじり、人の想いをまったく気にしないこんな最低なやつに……

麗奈を渡す気はない

麗奈は俺の家族だから

大切な人だから、俺は……こんなやつには負けたくなかった





早川もこいつから守りたい……

早川に謝らせたい……
早川をバカにしやがって……翔の……翔の好きだった早川をバカにしやがって……


松本絢斗は深くため息をついた

「交渉決裂……か」

と言いながら頭を掻き、ふと笑った

「じゃあまた俺と殴り合いするか?えっ?山中ぁ〜」

松本絢斗は怒りを感じているのか、健斗を鋭い眼光で睨み付け、低い声で言ってきた

健斗は冷静に、目を瞑った

「多分……俺は喧嘩弱いから……あんたに負けるってのは分かってる」

健斗がそう言うと、松本絢斗は嘲笑うかのように言ってきた

「はっ!!何だよ、情けないやつだな」

「……喧嘩は勝てないけど……俺はあんたに負けねぇもんは持ってるから」

「はっ?」

健斗も怒りで声を震わせた

「……あんたには……人を想いやる気持ちは負けねぇ……それを証明してやるよ……」

健斗がそう低く強ばった声で言うと、松本絢斗も健斗と睨み合っていた


すると松本絢斗は鼻でふんっと嘲笑うと、健斗から離れて歩き出した

「くだらねぇ〜……だったら証明してもらおうじゃん?」

そして健斗を見下すように見ると、続けて言ってきた

「お前さ、中学サッカーでかなりすごいやつだったんだろ?相当自信があんだろ〜なぁ〜」

「……だったら何すか?」

松本絢斗は不敵な笑みを浮かべた

「……俺と勝負しようぜ?殴り合いじゃなく、サッカーで……」

「はっ!?」

松本絢斗は健斗のリアクションに可笑しそうに笑った

「そう怪訝そうな顔すんなよ。別にいいじゃん?殴り合いよりかはマシだろ?」

健斗は怪訝そうな顔をして黙り込んだ

サッカーで決着をつけるって……

健斗はしばらく下をうつ向いていた

「お前が俺に勝ったら、麗奈ちゃんを諦めるよ。どうだ?いいだろ?」

健斗はしばらく黙り込み、口を閉ざしていた。下をうつ向いた

「……い、いいんすか?大会前でしょ?」

「大会?あぁ。それは夏休み入る前だし……まだ時間があるから」

健斗はそれを聞いてまたしばらく黙り込んだ

「決まりだな。明日の昼休み……グランドで待ってるから」

そう言うと、松本絢斗はゆっくりと健斗に近づいてきた

「言っておくけど、俺もサッカーはマジでやってるから。中学でちょっとよかったからって、高校サッカーを嘗めんなよ?」

そう言うと、松本絢斗は静かに健斗の前から離れて、屋上を後にした

一人残された健斗は、迷っていた

サッカーで……勝負をつける……父さんの言ったとおり、今俺が一番ある力は……サッカーだと思う

殴り合いよりかはまったくマシだろ

だからこそ迷った

サッカーは……サッカーはもう俺は……

ふと中学のときを思い出す

足が震えた……





授業開始のチャイムがなっていた

けど健斗はまったく気にしていなかった



「……健斗っ!!」

ふと屋上の扉が開き、健斗を呼ぶ声が……

ヒロと麗奈と佐藤が息を荒らして走ってきた

三人とも健斗に近づいてきて、心配そうに言ってきた

「やっぱここか……ハァ……大丈夫か?」

ヒロが心配そうに言ってきた

健斗はそんな三人を見ると、少し嬉しさを感じてふと笑った

「何もねぇよ」

「本当に?あの松本さんに呼ばれたなんて……知り合いだったの?二人とも」

そう佐藤が胸を押さえながら言うと健斗は苦笑した

「うん……ちょっとな……ほら、授業始まるぜ?行こう」

そう言うと、健斗は麗奈を見た

麗奈は何も言わず、健斗を見ていなく、後ろを振り返って見ていた

健斗はそれが少し胸を痛めて、三人とともに屋上を出た






教室に戻ると、教室中は騒いでいた

みんなが健斗を見ていた

やっぱりあの松本絢斗……相当有名なんだな……まるで有名人みたいな扱いだ

すると早川が、席から立ち上がって健斗に走ってきた

「山中くん……よかった……授業間に合ったんだね」

「……うん」

「松本さんと……何話してたの?」

健斗は早川の目を見ることができなかった……

だから、話したくもなかった

「……何でもない」

健斗はそう言うと静かに席に座った



サッカーで……対決……

健斗は深くため息をつく気にもならなかった……



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