第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.14
そして次の日の朝になると、健斗は久しぶりの半袖白いポロシャツに制服姿の健斗が玄関で革靴を履いていた
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
母さんが心配そうに健斗に訊いてきた
「うん。風邪治ったし……いつまでも麗奈を早川に任せるわけにもいかねぇし」
腹の痛みはまだ少しあった。けどとりあえず薬を飲んで、学校に行こうと思った
頬の青みはまだ引いていない。だからガーゼをしておいた
「でも無理しなくていいのよ〜?」
「大丈夫だって。行ってきます」
健斗は母さんにそう言うと、ゆっくりと家の戸を開けて家を出た
塀の外にはすでに麗奈が自転車を運んでいた
健斗が出てくるのを見ると少し困ったような表情を浮かべた
「大丈夫なの?おなか」
「うん……心配すんなよ」
健斗は鞄を籠の中に入れた。と、すると突然麗奈がいつもの調子で言ってきた
「よしっ!!じゃあ健斗くん後ろに乗って?」
「俺が後ろに乗ってどうすんだよ」
「だから私が運転するから」
健斗はそれを聞いて、一瞬驚いてしまった
「お前自転車こげるようになったの?」
「うん。10秒くらい」
…………
…………
「10秒ずつ進んだら何時間かかるんだよアホ」
健斗は呆れ返るようにため息をつくと、麗奈を後ろに乗せた
そして、こごうとしたら……
「……うっ!!」
腹に激痛が走った。やっぱり二人のりでこぐとき必ず腹に一瞬力を入れてしまう。それが辛くて、逆に力が入らなかった
「アイッテテテテ!!」
「大丈夫?」
健斗はう〜ん……っと困ったように言った
「力が入んない……」
「だから私がこぐよ」
「だからお前がこいでも意味ねぇだろ?……クソッ」
健斗はもう一度力を入れようとした。が腹に激痛が走り、上手く力が入れられない
「イッテ〜……困ったなぁ……こりゃ」
「遅刻覚悟でバスで行く?」
「……う〜ん……ワリィな麗奈」
「仕方ないけど……ほら、早く行こう」
と言って自転車から降りようとした、そのときだった
「健斗?麗奈ちゃん」
ふと呼びかけられて、健斗と麗奈はゆっくりと振り返った
するとそこにはヒロが不思議そうな表情を浮かべて、健斗たちを見ていた
「何やってんだよお前ら?」
…………………
「……ワリィなヒロ……」
健斗がヒロに謝ると、ヒロは嬉しそうな表情を浮かべていた
「いいって。俺にとっては最高の朝だから」
ヒロが偶然健斗たちの前を通りかかったことで、麗奈をヒロの後ろに乗せて、健斗は一人自転車をこいでいた
一人なら、重さを支えるものはないので痛みを感じずにこぐことが出来た
ヒロには悪いと思っていたが、満更でもなさそうだ
嬉しそうにニコニコ笑っていた
「ヒロくん、運転上手だよね〜?」
「マジで〜?毎朝俺が送ってあげてもいいんだよ?」
とデレデレした様子でヒロは言っていた
「アハハ♪それもいいかも〜?」
「本当に!?」
「でも、健斗くん一人にすると大変だから私がついてあげなきゃね」
「何でお前に言われるんだよ……」
健斗は一人呟くように麗奈な突っ込んだ。それはこっちの台詞だっつうの……
「つーかお前も、まだ治ってないんなら行かなければいいじゃん」
「いや……ちょっと……」
健斗は呟くようにそう言うと、深くため息をついた
学校に着くと、健斗たちは3人揃って教室に入った。と、するとだった
健斗が教室に入った瞬間、妙な視線を感じた
みんなから見られる奇妙な視線。するとヒロが後ろから耳打ちするように言ってきた
「……お前が休んでる間、お前が先輩と喧嘩したっての噂が立ってるらしいぜ?」
なるほど……
けど先輩っていうことは、誰かは分かっていないということか
でもそれも仕方のないことだと思う……一応あれだけ騒ぎを起こしちゃったらしいから
健斗は視線を無視しながら自分の席に座ると、ふぅっとため息をついた
と、するとだった
佐藤と早川が走って健斗のところにやってきた
「山中く〜ん、大丈夫?」
佐藤が元気よく、けど心配するように健斗にそう聞いてきた
健斗はゆっくりと微笑み返した
「ん、あぁ。まだちょっと痛むけど」
「あんまり無理しちゃダメだよ?」
と早川が優しそうな表情を浮かべて、言ってきた。健斗も微笑んで言った
「あぁ。サンキュー」
早川を見ると、ふとあの時の光景を思い出してしまう
早川に握られた手の温もり……それを忘れることはできなかった
「ちょっとどころじゃないじゃん?健斗くんのせいで朝遅刻するかと思ったしぃ」
と麗奈が口を尖らせて言ってきた
健斗はそれを聞いて、むっとした口調で麗奈に言った
「……悪かったな」
ったく……別にそこまで怪訝に言われなくても
誰のために無理して学校に来たと思ってんだよ……
「健斗くん本当に無理しちゃダメだよ?痛むようだったら、すぐに言ってね?」
早川は相変わらず優しいし……涙が溢れそうになる……
「ありがとう早川」
健斗がそう言うと、早川はにっこりと微笑んできた
「まぁさ、相手が先輩でよかったよな?どっかのガサツ女だったら、気絶じゃ済まなかったかも――」
「あんたにやってやろうか?」
健斗たちはいつも通りのヒロと佐藤のやり取りに可笑しさを感じながら笑っていた
相変わらずこの二人のやり取りは変わんないなぁ……
たった3日、休んだだけだったけど……何だか学校に来たのがスゲー懐かしく感じていた
一ヶ月くらい前までは学校に行くのも嫌だった俺……
けど、今はこうして笑い合う仲間がいる
ちょっと前までは、こうやって大勢で話すのは苦手だったのに……誰かさんの影響でまったく気にしなくなっていた
本当に……誰かさんには少し感謝したい
「……何?どうかした?」
ふと麗奈が健斗を見ていってきた
健斗は麗奈に笑いかけるとゆっくりと首を横に振った
「何でもねぇよ」
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