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第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.13


早川の話からするように、腹の痛みは本当にしばらくとれなかった

安静にしてれば平気とは言われても、こう激痛が走ると眠れもしない……酷い目にあってしまった……

風邪の方も、中々治ることはなかった

熱も中々下がらず、ほとんど家にいた

麗奈が帰ってくるまで、かなりの暇人だった


麗奈はちゃんと学校に行っていた。出る度に、絶対安静を強要してきた。母さんと同じことを言い過ぎだっつうの……

健斗は自分の部屋でコンポにCDを入れて曲を聞いているか、テレビを見てるか、漫画を見てるか……

店長にも事情を話すと、了解してくれて、1週間の休暇をもらった

それにしても、自分の先走った行動でこんなにも多くの人に迷惑をかけているなんて、悲しかった……


そして1番心配だったのが、麗奈と早川だった。特に……麗奈が心配だった

あのときあの松本絢斗は、麗奈に告白したとか言ってきた

それが本当なら、麗奈の会ったイケメンとやらは多分松本絢斗のことだと思う

でも、麗奈は松本絢斗のことを知らないから……もし何か発展してたら……

麗奈まであいつの毒牙に襲われることになる

そして、それを知る早川もどんなに傷つくだろう

だからこそ、このことは誰にも言うつもりはなかった……

麗奈も健斗に気をつかっているのか、何も聞いてこようとしてこなかった


まぁ麗奈に会うと、思い浮かべてしまうのが……あのときのこと……

麗奈と抱きしめ合ってしまったことだった

今思い出すだけでも恥ずかしい……

あんなにドキドキすることは一生ないと思う……

そして早川に手を握ってもらったことも……

何だか嬉しい気がしてやっちまった感があった


そしてあの日から3日は経っただろうか?

その夜に健斗は欠伸をしながら部屋を出て、歩いていた

大分風邪の具合もよくなり、怪我も順調な回復を遂げていた

まだ痛みはあったけど歩けはした

健斗はゆっくりと、冷蔵庫にあった二本のコーラを持って、縁側の方へと向かっていた。麗奈がいるような気がしたから……麗奈と話がしたかった……


縁側に着くと、予想通りそこには麗奈がいた

涼しそうな表情を浮かべ、嬉しそうな表情で景色を眺めていた……

健斗はそんな麗奈を廊下の角から覗き込むように見ていた

綺麗な鼻歌……

いや、それよりもこの歌……メロディー……どこかで聞いたことがある。

「麗奈」

ふと健斗が呼ぶと、麗奈はびっくりするような表情を浮かべた

「健斗くん。寝てなくて大丈夫なの?」

「3日も寝てりゃ、大々治るわ」

健斗がそういうと、麗奈は可笑しそうにクスッと笑った

「それもそっかぁ~♪」

「でも、みんなには1週間休むって言ってあるし……明日もサボろっかなぁ。授業ダリィし……」

「ダメだよ〜?健斗くんがサボるんなら、私もサボるから」

「……普通明日いきなさいとか言うもんじゃない?」

「だって私もサボりたいんだも〜ん」

「あいっかわらず訳分かんねぇやつだな」

健斗は可笑しそうに笑うと、麗奈にほらっと言いながらコーラを差し出した

「……気が利くじゃん」

「うるせぇな……さっさと取れよ」

「ありがと」

麗奈は笑いながら言うと、健斗に微笑んだ

健斗も麗奈の近くに座って、う〜んっと背を伸ばして景色を眺めた

が、腹が痛んでしまう

「あ、イテテ……」

「やっぱりまだ寝てたら~?」

「いいよ。人間連続して72時間以上も寝れねぇっつうの」

健斗はコーラの瓶蓋を開けると、一気に飲んだ

麗奈も真似をするかのように健斗と同じことをした

「だぁ~っ、これだよなぁ」

「ねぇ~っ」

健斗はコーラを置いて、麗奈をチラリと見た。にこにこと笑って、気持ちよさそうに夜風に吹かれている。そんな麗奈を見ながら健斗はふと聞いてみた

「今の歌……」

「え?」

健斗は少し考えるような仕草を見せた。間違いない。健斗はどこかでその曲を聞いたことある。遠い記憶からその曲のメロディーが流れてきた。

河辺……?夕日を背に河辺で誰かが歌っている。小学生くらいの女の子。綺麗な歌声で歌っていた。悲しそうな表情で……しかしその肝心の顔がはっきりと思い出せなかった。

「今の鼻歌で歌ってた曲……“糸”だよな?」

健斗がそう訊いてみると、麗奈は驚いた顔を浮かべて目を見張った。だがすぐに微笑みながらゆっくりと頷いた

「あ、うん。そうだよ?知ってるの?」

「うん。何か分かんないけど……確かどっかで聞いたことあんだ。はっきりとは思い出せないけど……」

麗奈は考え込む健斗を黙って見つめる。少し真剣な表情で、麗奈自身も何かを思い出しているようだった。健斗は顔を上げて、小さく頷いた。

「でも覚えてる。絶対どこかで聞いたことあるよ。」

「そう?まぁ、知ってる人も多いとは思うけどさ。結構古い歌だよ?十五年くらい以上前の曲かな。」

「でも良い曲だよな?」

「うん。お母さんが、よく歌ってくれた歌なんだ」

「ふぅ~ん……」

麗奈は空を見上げながら呟くように言ってくれた。星空を眺めながら少し寂しげな口調でゆっくりと呟くように言う

「お母さんが言ってた。この曲は、誰かと誰かを繋ぐようなそんな歌だって……とっても素敵な歌だって……」

「……ちょっと歌ってくんね?聞いてみたいんだけど」

健斗がそう言うと、麗奈はちょっぴり照れくさそうに笑った。けど、健斗は麗奈の歌声でゆっくりと聞いてみたいと思った。何か大切な物を思い出すために、聞く必要があるような気がしたのだ。

「うん。いいよ」

麗奈は照れくさそうに笑うとゆっくりと空を見上げた。そして大きく息を吸い込んだ

「……なぜ、めぐり逢うのかを、私たちは何も知らない……いつ、めぐり逢うのかを、私たちはいつも知らない……」

どこにいたの?

生きてきたの?

遠い空の下、ふたつの物語

縦の糸はあなた

横の糸は私

織りなす布はいつか誰かを暖めうるかもしれない……


何故、生きていくのかを迷った日の跡のささくれ

夢追いかけ走って転んだ日の跡のささくれ

こんな糸が何になるの?

心許なくて震えてた風の中

縦の糸はあなた

横の糸は私

織りなす布はいつか誰かの傷をかばうかもしれない…


縦の糸はあなた

横の糸は私

逢うべき糸に出逢えることを

人は“仕合わせ”と呼びます……








麗奈の歌声は本当に綺麗で聞いてる健斗は少し魅力に落ちていた

とてもいい歌声に、何だか心暖まる曲だった

何だか落ち着いた……健斗はゆっくりと目を開くと、麗奈を見た

歌い終わったあとの麗奈は何だか気恥ずかしそうに健斗を見て笑っていた

「どう?」

そんなことを訊かれて、健斗は頷きながら答えた

「そうだなぁ……確かに何かと何かがつながっているような感じがする」
素直に思ったことだった

「そんな音楽評論家みたいな言い方しなくていいよ~」

「いやっ!!マジでいい歌だっていうのは思った。こんなに良い歌なのになぁ……俺どこで聞いたんだろう?」

そう言って健斗は自分の中の記憶を探るように考え込み始めた。こんなに思い出せないということは、よっぽど昔のことなのか?それとも……

するとだった。そんな健斗を見ながら麗奈はふと笑いながら空を見上げた

「この歌を思い出すと、お母さんと繋がってるんだって思えるんだよね」

「……思い出の曲なんだな」

「うん。私が小さいとき子守唄でよく歌ってくれたから……」

健斗はしばらくそんな麗奈を見つめていた

「私さ、健斗くんがやっぱり羨ましいなぁ」

「何が?」

麗奈は健斗を見ながら笑って言ってきた

「お母さんやお父さんみたいに、健斗くんのことすごく心配してくれる人がいて羨ましいなぁって。私には、そんな人いないから……」
「お前だって父さんがいるじゃんか」

健斗がそう言うと麗奈はゆっくりと首を横に振った

「お父さんはお仕事が大変だから、私のことなんて気にする余裕なんてないよ……ずっと、まともに話してもないし」

健斗はしばらく考えたあとため息をつきながら言った

「んなことねぇって。どんなに仕事が忙しくても、子供の心配をしない親なんていねぇよ」

健斗がそう言うと、麗奈は静かに微笑んだ

「そっかな?」

「お前だってそう言ってたじゃん」

麗奈はしばらく考えた

「でも……」

健斗はそんな寂しそうな麗奈を見て、ゆっくりと微笑んで言った

「……例えそうじゃなくても……お前のことを心配してやれんのって……いっぱいいるじゃん。ここにはさ」

麗奈はそれを聞いて、しばらく健斗を見つめた

健斗は恥ずかしそうに目を合わさず呟くように言った

「俺だって……父さんや母さん、ゴンタだって……お前のことちゃんと見てると思うから。何か、相談とか話したいこととかあったら、話せばいいから。今のお前は、この家の〜……その……家族なんだし……」

麗奈はそんなことを恥ずかしそうに言う健斗を見て、しばらく見つめていた

健斗は恥ずかしそうに後ろ頭を掻いたりしていた

そんな健斗を見ると何だか可笑しくって、麗奈はふと笑った

「健斗くんって……やっぱり優しいんだね」

「べっ……別に。そんなことねぇよ」

と言って健斗は顔を剃らした

「……そっか。家族か……」

麗奈はクスクスと笑うとゆっくりと健斗に近づいてきた

「健斗くん」

「ん?」

麗奈はそっと耳打ちするように言ってきた

「家族って、抱き合ったり、キスしたりするもんなの?」

「なっ!!」

健斗はそれに激しく動揺してしまい、その結果腹に激痛が走った

「イテテッ……」

「アハハハハハ♪動揺し過ぎだよ〜♪」

「う、うるせぇっ!!あ、あのことは忘れろよっ!!つーか大々どっちもお前がしてきたことだろっ!!」

「でも健斗くん、この前はそっと抱きしめ返してくれたよね?」

「……っ……うるさいっつ〜のっ!!あれは、その……」

「ああ〜♪暖かったなぁ〜♪健斗くんの、ぬ・く・も・り♪」

「バカッ!!マジで変なこと言ってんじゃねぇよっ!!この能天気女っ!!」

健斗が必死になって言ってくるのに麗奈は可笑しそうに笑うと、にっこりと微笑んだ

「アハハ♪冗談だよ〜♪でも、ありがとう健斗くん♪」

「〜〜〜っ〜〜〜」


健斗は恥ずかしくって、麗奈の顔をみれなくなった

最初からこんな風に笑ってくれれば可愛いのに……

とにかくだ

麗奈はどう考えてんのかは知らないけど、健斗にとってはあれは全部闇の中へと葬った

だから、あれは全部なかったことにしてるのだった

麗奈はまたご機嫌そうに、“糸”を鼻歌で歌っていた


人と人を繋げるようなこの歌……

それは、麗奈と繋がっている思い出の歌ということなったことに、健斗は薄々気がついていた



この“糸”という曲は実在する歌です

中島みゆきの“糸”

この曲はMr.Childrenの桜井さんが、Bank Bandでカバーしたのがきっかけで僕は知りました

僕的にはBank Bandの“糸”の方が好きです



縦の糸はあなた

横の糸は私

逢うべき糸に出逢えることを

人は“仕合わせ”と呼びます……



本当にその通りですよね





ちなみにみなさんに聞きたいことがあります

実は以前、実在するものを小説に書かない方がいいと指摘を受けました

でも僕はそういうのを入れて現実感を取り入れたり、そういう登場人物の好きな歌とかを書いて、その人物を描写したいのです


でも止めた方がいいのでしょうか?

もしよろしければ教えてください




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