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第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.12

その夜のことだった……母さんや父さんは健斗の容体を麗奈から聞いて、健斗の部屋に入ってきた

てっきり心配してくれるのかと思ったら……

「まったく……友達と喧嘩して激痛によるショック状態になって?それでさらに38℃以上の風邪を引いた?まったく……情けないわね〜」

と呆れ返るように母さんは言ってきた。麗奈は何故こうなったのかは本当の理由を知らなかった。けど健斗に気をつかって、友達と喧嘩したということにしてくれた

「しかし健斗が本当に殴り合いをするとはな〜……男になったな?」

父さんは嬉しそうだった。嬉しそうに頷きながら、よくやったと誉めてもらった

「慣れないことやるからこうなるのよ。馬鹿馬鹿しいわ……勝つんなら男の子らしいけど、負けてるじゃない」

「うるせぇなぁ……俺は手ぇ出してねぇよ。一方的に殴られたの」

「一方的に殴られるほどやられたってことでしょ?一体どんな理由で喧嘩したの」

母さんがそう訊くと、父さんが言ってきた

「いや母さん。男の喧嘩に理由なんてないのさ。男は黙って拳で語り合わないと、本当の気持ちが伝わらないってな」

「あのね、今時そんな古い漫画みたいなこと言わないで。本当に……情けないんだから」

すると母さんは健斗の額に手を当ててきた

「熱は……まだあるわね……何か食べる?」

「う〜ん……別に……」

健斗がそう言うと、母さんは鼻から強く息をした

「ダメよ?何か栄養をつけて食べないとっ!!じゃあ、おうどん作るから」

「う〜ん……」

「これに懲りたらもう喧嘩は程々にすることっ!!いいっ!?わかった!?」

母さんはそう言いながら、文句を言い、部屋を出ていった

しばらく健斗と父さんと麗奈は黙り込んでいた

「……ったく……いちいちうるさいんだよな……母さんは……」

健斗がそんなふうに言うと、麗奈が苦笑しながら言ってきた

「そんなこと言ったらダメだよ。お母さんもああ言ってるけど、本当はすごく心配してるんだと思うよ?」

と麗奈が言うと、父さんも頷きながら健斗に言った

「そうだぞ健斗。だから母さんだって、まったく喧嘩をするなとは言ってなかっただろ?お前を心配してる証拠だよ」

「…………」

健斗はそれを聞くと何も言い返せなかった。軽く咳込みながら深くため息をついた

「けど、お前も大したもんだな」

「……何が?」

父さんが笑いながら言ってきた

「喧嘩をして一方的にやられて、顔と腹に怪我をして、おまけに風邪を引くやつなんか、そうはいないぞ」

……それ俺をバカにしてんのか……

健斗はプイッと顔を剃らした

「けど、偉いぞっ!!」

ふと父さんがそう言ってきたので、健斗はまた父さんを見た

「……価値のない喧嘩に正義など存在しない。これはじいちゃんから教わったことだ」

「……じいちゃんが……」

父さんはゆっくりと頷いた

「父さんは、健斗くらいの年のときはかなり暴れん坊でな……空手やってたせいで、自分が一番強いって、過信してたんだ」

すると麗奈が感心するように言ってきた

「へぇ〜……お父さん空手やってたんだ」

「あぁ。少々荒れてたけどこの町では一番の実力は持ってた。まぁ今はもう全然ダメなんだけどな」

と笑いながら言ってきた

「そんな父さんに、じいちゃんが“このっ、バカ息子!!お前の力に正義など存在せんわっ!!”なんて痰切られてな、あまりにも腹が立って、父さん……じいちゃんに決闘を申し込んだんだ」

「えっ!?」

麗奈が驚くのには無理がなかった。健斗でさえ、その話は初耳だったし……あのじいちゃんに父さんが決闘を申し込んだなんて……

考えもできなかった……

「……そんで?勝ったの?」

すると父さんはゆっくりと首を横に振った

「負けたよ。それもボコボコにされた……そのときに、じいちゃんは父さんに“価値のない喧嘩に正義など存在しない”って教わったんだ」

二人は感心するように父さんを見ていた

あの父さんが……少しかっこよく見えた

「それから……高3の春かな……道場帰りにな、とある女の子がチンピラに絡まれてるのを見つけてな。父さん、すぐに飛び込んでいった」

「で、すぐに瞬殺したわけか……」

すると父さんはまたもや首を横に振った

「いいや。確かにそのチンピラは威勢だけで、実際に喧嘩をしたら勝てる相手だったんだけど……父さんは喧嘩をしなかったよ」

「えっ?」

健斗が驚くように聞くと、麗奈が不思議そうに訊いてみた

「どうして?女の子を助けるために闘うのが、正義なんじゃないですか?」

すると父さんは目をつぶって答えた

「確かに、それも正義かもしれないなぁ……けどな、父さんそのとき思ったんだ。もしここで暴力を奮ってしまったら、結局は自分もこいつらチンピラと同じになるんじゃないかって……ただ暴力を奮うことしか出来ない、チンピラと同じだってな」

麗奈は納得するように頷いた

「……で?父さんどうしたの?」

「謝ったさ。勘弁してくれって。殴られても殴られても、その子を守るために謝った」

健斗はそれを聞いたら、何だかおかしかった

「何か、女の子からしたら情けないな。それ」

「そうかもな。でも、女の子はすごくお礼を言ってくれたよ。ボロボロになった父さんをわざわざ家まで連れていってくれて、怪我の手当をしてくれた……実はその女の子が、今の母さんなんだ」

すると麗奈は手を合わせて目を輝かした

「え〜?素敵ぃ〜♪私もそっちの方がかっこいいかも〜♪」

健斗はそれを聞いたら可笑しくなって、声を立てて笑った

「だからな健斗。価値のない喧嘩に、暴力は必要ないんだよ」
健斗はそれを聞いて、ふと考えた。今日のあの喧嘩は……

「でも今日の喧嘩は……価値がある喧嘩だと思う……」

だって……あいつは早川のことを……

「違うな健斗」

父さんはすぐに言った

「価値のある喧嘩ってどういうことか知ってるか?」

「……何だろう……バカにされたり……けなされたりした時?」

「それが価値のない喧嘩なんだ。何故なら口で言い合う喧嘩は、先に手を出した方の負けだからだ」

……あのとき、俺は自分から……あいつの胸ぐらを掴んでしまった

確かに……先に暴力を奮ったのは……俺の方だ

「じゃあ……価値のある喧嘩って何?」

健斗が訊くと、父さんは静かに頷きながら答えた

「大切な人を、必ず守り抜きたいと思ったとき……」

大切な人を……必ず守り抜きたい……

「今日の喧嘩はどうだ?そう思ったか?」

健斗はしばらく考えた。今日俺があいつに喧嘩をしかけたのは、早川をバカにされたから……早川の想いを……バカにされたから……そう……バカにされただけ

あの場には早川もいなかったし、別にただあいつらは話してただけ……

だから……喧嘩をふっかけたのは自分だし、価値のない喧嘩をしかけたのは……自分だった

「お前が不純な動機で喧嘩をしたわけじゃないってのは父さんも、母さんも、麗奈ちゃんも分かってるよ?ただ、そのとき初めて価値のある喧嘩になるんだ」

「……そのときなら、正義だから……守り抜くために殴りあいをしていいの?だったら……さっきと話が矛盾してない?」

父さんはそれを訊くと高らかに笑った

「そうだな。けど、価値のある喧嘩をするとき、何が正義なのかを決めるのは自分の力次第だ」

「……どういうこと?」

父さんはふぅっと息を吐いた

「父さんはあのとき、チンピラどもを全部倒せる自信はあったけど、でも母さんを傷つけずに守り抜く自信はなかった。父さんにはまだその力がなかったから……でもな、父さんは謝る力ならあった。その謝る力で、結果母さんを無傷で守り抜けた。例え自分がボロボロになったとしてもな」

「…………」

父さんの話の理論は決して間違っていなく、筋の通った話だった……だから妙に説得力があった

「価値のある喧嘩に必要なのは、必ずしも暴力というわけじゃない。そこに必要なのは、自分が一番持っている力なんだ」

健斗は不思議に思った

力と暴力は……違うものなんだ……

同じ力だけど、全然違うものなんだな……

「お前が一番持っている力は何だ?」

父さんの問いに、健斗は考え始めた

自分が一番持っている力……それは暴力でもなければ、謝る力でもないと思う……俺は……

…………

「まぁ、ちょっと難しい話をしちゃったかな?お前にはまだ分かりづらいか」

父さんが笑ってるのを、健斗はただ見つめていた

確かに父さんの言う通り、分かりにくい話だった。ただ、父さんの話は正しいと思った



健斗はふと麗奈を見た。麗奈も静かにそれを聞いててゆっくりと頷いていた

「よしっ!!今日はこの部屋でうどんを食うかっ!!おい母さん〜……」

父さんは母さんに伝えるため、部屋を出ていった

二人っきりになったとき麗奈はふと健斗に言ってきた

「お父さんの言う通りだと思うよ」

「………」

「暴力だけじゃないもん。健斗くんには健斗くんの力があるはずだから、それで戦って欲しいな」

健斗はしばらく、うつ向いたあと、ゆっくりと窓の外を見た

すでに雨は上がっていて、カエルの鳴く音が聞こえた

「……俺って、何かあんのかな?」
ふと呟いてみた

誰かに語りかけたのではなく、そうただ純粋に思っただけであった……




今回の話は、俺の父さんが昔実際に話してくれたエピソードです


今でも俺は父さんの言うとおりだと思います

やはり健斗も、親の背中を見て育つんですね……





それはそうと、最近はまっている曲があってそれを紹介したいなぁと思います

Monkey Majikの

「ただ、ありがとう」
ただ、ありがとうを伝えたくって。
ただ、君の笑顔を見たくって。
もう振り向かないよ。瞳の先へ
今、幸せを伝えたくって。
大切な人が誰かってね。
ありがとう、君と出逢えて……



サビの部分が最高です。みなさんもぜひ聞いてみてください

この曲、結構この物語の主旨と重なってるかも……




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