グッラブ!2の最終回ですっ!
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました
後書きにも作者からのお知らせがありますので、ぜひ読んでください
「もう一つっ?」
麗奈は驚いてその言葉を聞いていた。まさか健斗がもう一つプレゼントを用意してたなんて思いもしなかったのだ
「ウソ……本当に?」
「本当だよ」
「え?何々?どんなの?」
麗奈のテンションが一気に上がった。健斗は少し困ったように、苦笑した
「今言ってもおもしろくねーじゃん。だけど……お前がわぁってびっくりするよーなもんだよ」
健斗はそれだけ言って麗奈を嗜んだ。しかし麗奈のテンションは反比例してきている。健斗のサプライズプレゼントの存在に心が踊るのは無理ないが、あまり暴れられると漕ぎにくい……
「ここって……」
健斗はしばらく自転車を漕ぎ続け、麗奈をとある場所まで連れてきたところで自転車を止めた
暗がりだったが、この場所がどこなのかは麗奈も気づいた
「ここって……清川橋?」
「そうだよ」
健斗は自転車を止めると、麗奈を下ろしてから川の方へと下った。サンダルのため、水の中に入るのは気にしなかったけれど、ひんやりと冷えた夜の川は昼間の頃より冷たさを増している。最初足をつけたとき、思わず身震いをした
「橋の上で立っててっ!」
麗奈にそう指示すると、麗奈は言われるまま清川橋の上に移動して、そこで佇んだ
相変わらず小さい橋だ。幅は十メートルちょっとしかなく、すぐ下の川とは距離がそこまでない
落ちても百パーセント怪我することはない
「……ねぇっ!何してんの?」
橋の下で何かをしている健斗に声をかける。真っ暗でよく見えないのだが、どうやら何かを動かしているみたいだ
麗奈は目を凝らして健斗が動かしているものを見てみる
……桶?
健斗が橋の下から運び出しているのは、間違いなく木で出来た桶だ。結構大きめの桶で、健斗は重そうに両手で抱え込んでそれを橋の横に置いた
それを2つ、健斗は川の上、橋の下の横にその桶を置いた
それから見下ろしている麗奈を見上げた
「麗奈。目瞑って」
「え?」
「いいから。早く」
麗奈は躊躇いながら、真っ暗な中、さらに目を閉じると本物の闇が訪れた
「目閉じたァッ?」
闇から聞こえるのは健斗の声
「閉じたァッ!」
しばらくして、麗奈は自分の中で闇の中をさ迷った
何も見えない
何も聞こえない
一体これから何が起きるのだろうか
暗い闇の中、生まれてくる一抹の恐怖、不安……
一抹の不安を覚え始めてきた、そのときだった
暗闇に光が灯った。確かに目を瞑っている。だが、暗闇ではなく光の世界に移り変わってきた
麗奈は少し驚きを感じた
「……目、開けていいぞ」
麗奈のすぐ隣で聞こえた健斗の声。麗奈は言われるがままに、目を開けてみると……
目の前に広がったのは、たくさんの光の粒、雨、いや、この光景をどう表せばいいのだろうか
夥しいほどの光が、宙を舞い、暗闇が消え、橋の周りには光の空間が生まれている
これは……ホタル?
数など数えられるはずがないほどの夥しい数のホタルが、橋の下にある桶から出てきている
そのホタルが照らす小さな光が重なり、光の空間を生み出していた
麗奈は驚きのあまり声を出せずにいた
そして、驚きと共に大きな感動を感じ始めていた
「……どう?」
麗奈のすぐ隣には、橋の手すりに手を乗せ、共にこの幻想的な光景を見て笑っていた
「お前が見たがってた、“光り橋”。すげーだろ?」
“光り橋”……これがその……
健斗と初めてこの場所を訪れたときに話してくれた、清川橋に纏わる話
清川橋の周りに夥しい数のホタルが大量発生したときに見ることのできる、“光り橋”だ
麗奈がずっと見たがっていた、幻想的な光景
「こういうのかはよく分かんないけど……でも綺麗だろ?」
健斗がそう言いながら、光に指差した
集めたのだという
光り橋になれるように、健斗が懸命になって夕方からホタルを集めたのだという
集めたホタルは、この2つの桶に閉まって隠しておいたのだ
だからだ。あのとき健斗があんなに汗だくで、泥だらけだったのは
「結構頑張ったんだぜ?こんなに上手く行くとは思わなかったけど……これが俺からのホントの“贈り物”。どう?びっくりしただろ?」
「……うん……すごい……」
麗奈はそう呟いてから、健斗を見た
「すごいよっ……ホントに……私……」
「え?」
「すごくうれしくて……私……」
すると、麗奈の瞳から溢れ出したのは涙。小さな涙の粒が次第に抑えきれなくなっていた
「……私……ゴメンッ……何か、スッゴく感動しちゃって……ホントに……」
「そっか……綺麗だもんな」
「……違うよ」
「え?」
すると次の瞬間に、麗奈が耐えきれなくなった思いを健斗にぶつけるように、健斗に抱きついてきた。手を背中にうずめて、顔を健斗の胸にうずめた
麗奈に抱きつかれるのはもう慣れていたことだったが、急なことだったので健斗は焦りを見せた
「ちょっ……おいっ。何だよ……どうした?」
「……健斗くんが、私のためにここまでしてくれて……スッゴく嬉しいのっ……」
「…………」
健斗は急に照れくさくなって、頬を紅潮させた。すると麗奈は顔を上げて健斗を見上げるように見つめる
「ありがとう……健斗くんっ……私、ずっと忘れないっ……こんなに嬉しいプレゼント……初めてだから……絶対に忘れないっ。忘れないから」
「あ、……うん……そっか……」
「うんっ……健斗くんっ……」
「ん……」
「……大好きだよ……」
「え……」
「健斗くんのこと……大好き……世界で一番……好きだよ……」
健斗の胸が高鳴り始めた。麗奈は甘えるかのように、ギュッと健斗を抱きしめる
「だから……いっしょにいたい……ずっと……ずっといっしょにいたいよ……今のままでもいいから……ずっと……」
「麗奈……」
今のままでもいいから……
それは麗奈の本音の言葉なのだろうか
健斗が早川に思いを寄せててもいい
自分を見てくれてなくてもいい
ただ自分のそばにいてくれればいい……
大好きな人が……そばにいてくれるだけで……幸せになれるのなら……
麗奈はそう言って、健斗を見つめる。決して健斗を離そうとしない
健斗はその中、今日のヒロの言葉を思い出した
麗奈の気持ち、ちゃんと真剣に考えてやれよ
俺は……
俺は……
麗奈と見つめ合う。次第に健斗も、自然と麗奈を軽く抱きしめる
頬が紅潮し、涙で潤んだ瞳……改めて、やっぱり可愛い……
すると麗奈が目を閉じた
何かを求めているのが分かった……
それに応えるべきなのか……分からない
分からない
分からない
だけど、健斗はさらに強く抱きしめた
したい
そう思った
心臓を高鳴らせながら、健斗は虚ろな目で麗奈の唇に自分の唇を近づける
距離が近づくにつれて、心臓の高鳴りがより一層酷さを増す
したい
麗奈と……キスがしたい……
そう思って……
「……な〜んてねっ!」
寸前のところで麗奈がそう言いながら、健斗から離れた
健斗は離れた麗奈を瞬間的に離し、麗奈を見て唖然としていた
麗奈は悪戯な笑顔を見せて、チロッと舌を出してくる
健斗はその笑顔にまた胸を高鳴らせ、麗奈から視線をそむけた
今自分が何をしようとしたのか、何がしたかったのか……分かっていたから、健斗は自分を戒めるように唇を噛み締めた
麗奈は頬を紅潮させながら、同じようにわざと視線をまだ宙に舞う光の粒に向けて、夜空を仰ぐように言った
「両想いになれるといいなァ〜」
「え……」
「“光り橋”の伝説。この橋で告白すれば、両想いになれるんだよね?」
「あ……」
確かにそう言った
正確性はないが、中高生の間ではそういう噂がある
真偽は分からないが、そういう伝説になっている
健斗は何も言えず、健斗もまたこの光景を見つめた
「……今日はありがとうね」
麗奈がこの幻想的な光景を見つめながらそう言ってきた
「健斗くんのおかげで……スッゴく楽しくって、嬉しい誕生日になったよ」
「……いや……」
「私、こういうの久しぶり。今日みたいにみんなに祝ってもらえるの……だから嬉しかった……」
健斗はその言葉を聞いて、妙に納得している自分がいた。そんな気がしていたのだ
麗奈はまた健斗の方を見て、再び笑顔で言った
「だから……ありがとうっ……健斗くん♪ありがとう」
健斗はその笑顔を見て、小さく笑い返した
未だに胸の高鳴りが抑えられぬまま、健斗は視線を変えてこの光景を見る
麗奈のまた幻想的な光景に目を奪われる
今の光り橋、夜空に浮かぶ瞬く星よりも輝く、光の空間……
健斗と麗奈は家に帰ると、健斗は自転車を置くために庭の方へ、麗奈はそのまま玄関から家に上がった
「ただいま〜」
麗奈が帰るやすぐに居間から母さんが顔を出した
「お帰りー。随分遅かったわね」
時計は10時を過ぎていた。麗奈は笑いながら、ごめんなさいと言った
「ちょっと、色々あって」
「あら、そう。あ、それより麗奈ちゃん?ちょっといらっしゃい」
「はい?」
「あなたに、“贈り物”が届いてるの」
贈り物?
麗奈は靴を脱いで、急いで居間の方へと向かう。居間には母さんと父さんが、卓袱台を出して、その周りに座っていた
そしてその卓袱台の上には……一つの箱があった
麗奈も座ってその箱を見てみると、どうやら外国の宅配便から届いたみたいだ
宛先は……大森達也……
「お父さん……から?」
麗奈はそう呟いて、母さんを見た。母さんは何も言わず、笑顔で頷いた。父さんも同じように頷いた
麗奈はドキドキしながら、箱を開けてみる
中には……綿に包まれた可愛いぬいぐるみが一匹……
ミッキーのぬいぐるみだった。健斗にもらったぬいぐるみより、大きいぬいぐるみだった
箱の大きさからなんとなく大きさを想像出来た
そんなことは問題じゃない。お父さんから、ミッキーのぬいぐるみが贈られてきた
何故?何のために?
答えは一つに決まっている
「麗奈ちゃん、これ」
驚いて言葉を出せずにいる麗奈に、母さんが何かを渡してきた
それは、紙……手紙だった。一枚の手紙。箱といっしょに付箋されていたという
麗奈はまたしても胸を高鳴らせながら、手紙を開く
そこに書いてあったのは、麗奈に向けての手紙。キチンと整えられた文体に字。字は人の性格をよく表す。間違いなく、達也の字でそれは書いてあった
麗奈へ
麗奈。お父さんです。元気にしてますか?山中さんには迷惑をかけてないですか?山中さんの家のルールに従い、山中さんに迷惑をかけてはいけないよ。そっちにいる間は山中さんがお前の保護者なのだから、ちゃんと言うことを聞き、困らせることはしないように。
ところでこの間はすまなかった。父さん、お前の気持ちを汲まず、安易に東京に戻ってこいと言ってしまい……麗奈にはまた辛い思いをさせてしまいました。本当にすまなかった……。
親戚の方々には私の方から上手く言っておいたから、お前は余計な心配せず、そっちで楽しく過ごしなさい。
吹奏楽部はどうですか?楽器には慣れましたか?友達は出来ましたか?お前は母さんと似て、音楽のセンスがあるから、いつか父さん、お前の演奏を聞いてみたいものです。
しかし父さんは今も仕事に追われる日々を送っています。毎朝早くから会議に出て、米国の要人らと重要な取引を進めています。ニューヨークに来てからというもの、周りは英語ばかりなので、うっかりしていると日本語を忘れてしまいそうです。
最初の文面は麗奈の今の近況、そして達也の近況のことが書いてあった
それからしばらく読み進んで行くと……
ところで、八月十日は麗奈、お前の誕生日ですね。日本にいたときも父さん、仕事が忙しくって、お前の誕生日を禄に祝ったことがなくて残念です。麗奈にも寂しい思いをさせてきたね。
気持ちと言ってはなんだが、プレゼントを贈ります。こっちのディズニーランドで買ったミッキーのぬいぐるみ。少し大きいと思いますが、部屋の中で大きな存在になることでしょう。お前は子供のころからミッキーが好きだったから、喜んでもらえると嬉しいです
麗奈はその文面を読みながら、ミッキーのぬいぐるみに目をやった。大きなミッキーのぬいぐるみ。お父さんがわざわざ麗奈のために買ってくれた誕生日プレゼント
そう思うだけで、心が晴れやかになる
達也が麗奈のことを考えてくれているとわかって嬉しかった
感謝の気持ちでいっぱいである
が……さらに続く文面に記された達也の思いは……さらに強いものだった
「……えっ……!」
麗奈は驚いて声を上げた
麗奈はシャワーを浴びて、部屋着に着替えて今日の一日の疲れを取る
タオルで髪を拭きながら、麗奈は階段を上がっていった
そろそろ寝る時間だ
階段を上がって、自分の部屋に行く前に麗奈は健斗のことが気になった
今、健斗は何をしているのだろうか……
麗奈はタオルで髪を拭きながら、ドアを軽くノックする
しかし返答はない
再びノックするが、やはりない
麗奈は不思議に思いながら、ドアを開けた
「健斗く〜ん……」
すると風が通ってひんやりした
扇風機が回っているのだ
健斗はベッドで横に倒れていた
眠っている。着替えもしないで、ぐっすりと寝息を立てて寝ている
麗奈はその寝顔を見て、小さくため息をついた
今日一日一番頑張ったのは健斗の方だ
夕方、クタクタになりながらホタルを一生懸命捕まえて、その疲労が今になって襲いかかってきて眠りこけてしまったのだろう
麗奈は座って、その健斗の寝顔を見つめる
小さく笑いながら、頬を突っついてみる
話したいことが……いっぱいあったのにな……
部活のこととか、鷹にも誕生日プレゼントをもらったこととか、プレゼントのこととか……
話したいことがいっぱいあって……
それでもやっぱり一番話したかったのは、達也からの手紙……最後の文面のとこだ
それと最後に……父さん、実はニューヨークで新しく支社を作ろうと思ってる。これに成功すれば、父さんの会社はまた一段落大きくなるんだ。だけど、父さんはその代わりしばらくニューヨークにいなければならない。
そこでだ。もしお前がいいのなら、また父さんといっしょに暮らさないか?ニューヨークで……
父さん、ずっと考えていた。お前をずっと独りぼっちにしてたばっかりで、父親らしいことをしてやれなかった
だからもし、お前が父さんを許してくれるのなら、近い内にニューヨークでいっしょに暮らそう
近い内にまた連絡します
それでは、体に気をつけて
父さんより
お父さんとニューヨークで……しかも近い内に暮らすことになる
そうなれば、また今の友達、学校、町とも別れることになる
マナやヒロくん、結衣ちゃんに、円にナッチャンに鷹くんに、先生や、チヨバァさんに、商店街のおばさんたちやおじさんたち、竜平さん……
そして何より、山中家と……お父さんともお母さんともゴンタともタボスケ……
そして……健斗とも……
「……う〜ん……」
健斗は軽く唸った。寝苦しいのか?それとも夢を見ているのか?
麗奈はクスッと笑った
それから、麗奈は健斗の頬に軽くキスをする。音を立てて、キスをした
今日のお礼♪お疲れ様、健斗くん
心の中でそう言うと、麗奈は立ち上がって、部屋の電気を消す
部屋を出る際に、小さく、おやすみなさいと一言言ってドアを閉めた
自分の部屋に戻って、麗奈は長いため息をついた
ニューヨークでお父さんと暮らす
そしたら、この神乃崎のみんなとはお別れ
どちらを選ぶべきか……
麗奈は迷う心で、窓の風鈴を見つめた
End
これにてグッラブ!2を終了とさせていただきます
ここまで読んでくださって読者の皆様、本当にありがとうございました!
グッラブ!2は前作、第1巻の約倍の部があって、大変でした(笑)
しかし、自分の納得のいける作品に仕上がって嬉しく思っています
思えば書き始めたのはちょうど1年前の夏……約1年かけて書いてきたこのグッラブ!2もついに、次作、ラストスパートを迎えます
しかしその前に、この後掲載されている、番外編をぜひ読んでください。
グッラブ!2での本編はこの話でおしまいなので、「面白かったぁっ!」「続きどうなるのー?」と思ってくれた方は、次は現在掲載されているグッラブ!3にお進みください。
ちなみに次は第9話から始まり、内容は読者のみなさまからご要望のあった、サッカー中心の話となっております。なので、スポーツ系の話が好きならぜひ読んでください!
でもその前に、このグッラブ!2で感じたみなさんの意見や感想を書いて欲しいです。
作者も毎回それを楽しみにして待っています。
とにかく、お疲れ様でした。そしてありがとうございました!
それではまたどこかでお会いしましょう
さようなら!
中川 健司
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