第5話 挑戦、変わる勇気
第5話 挑戦、変わる勇気 P.10
そして昼休みの時間になった。健斗とヒロと麗奈は、3人で睨み合いをしていた
「………」
「………」
「……じゃあ行くぞ?」
ヒロがそう啖呵を切ってきて、健斗と麗奈はゆっくりと頷いた
「せ〜の……」
「「「最初はグー!!ジャンケンポンッ!!アイコでしょっ!!アイコでしょっ!!アイコでしょっ!!」」」
勝敗は決まった。ヒロと麗奈がパー。健斗はグーという形になった
「うわ〜っ!!」
「やりぃ〜!!じゃあ健斗よろしくなぁ。俺、サイダーね」
「じゃあ私ミルクティー」
今健斗たちは、ジャンケンで昼飯に飲むための飲み物を買いに行く人を決めていた
その結果、見事にKO負けしてしまった
ちなみにお金はその人持ちということで……
「何で俺がお前らの分を持たねぇとなんねぇんだよ」
とブツクさ文句を言いながら鞄から財布を取り出した
「乗ってきたのお前じゃん?」
「まさか負けるとは思わなかったし……つーかおい!!お前だよ!!そこのお前っ!!」
「はぁい?」
「てめぇ人のプリン勝手に食ったくせに、お前が買ってこいよっ!!」
「もう〜、男でしょ?グチグチ言わない。それにいいじゃん。来週……給料日でしょ?」
「なっ……何でお前それ知ってんだよ……」
「フフフ〜♪」
「じゃあ俺、サイダー二本で、あとシュークリーム買ってこいよ。お代官様」
「ざっけんなっ!!ちくしょう〜……」
健斗はジャンケンをしたことに後悔しながら、教室を出ていった
麗奈とヒロはにっこり笑い合うと、軽くハイタッチした
するとだった。早川がクスクスと笑っていた
「フフフ♪山中くん、プリンで怒るなんて、子供っぽいとこあるんだね?」
早川がそう言うと、麗奈は笑って言った
「ね〜?しかもこの前私のシュークリーム食べたんだよ?おあいこ様って感じ」
「アハハ♪何か、山中くんと麗奈ちゃんって似てるよね?」
と、佐藤がそう言ってきた。麗奈は笑いながら首をかしげた
「え〜?そうかなぁ?」
「私もそう思うなぁ。何か、似てるとこ結構あるような気がする。ねぇ真中くん」
「お……おう……あんまし認めたくないけど……」
購買で健斗はカルピス、ヒロのサイダー、麗奈のミルクティーを買っていた
ちなみに自分のシュークリームを一個……デザートとして
何でいつも俺はああいうところで弱いかな……健斗は外を見た
まだ雨は降っている。さっきからちょっと弱っているけど、最近雨が多いよなぁ……
確か翔が言ってたっけ?雨が降ってるときは、空は泣いてるんだって……
じゃあ翔?お前は今泣いてるのか?
まさか……でもあいつの言ってたことが分かるような気がする
確かに、雨の日は何だか哀しい気分になる。心地よくない気分だ
やっぱり晴れの日が一番いいよなぁ……
と思いながら、購買の人に袋をもらって健斗はまた教室に戻ろうとした
とある廊下を渡ろうとした。けど、考えると中庭を通っていった方が近い
雨が降っているけど、木々で雨で濡れる心配はないし……すぐ通ればいいよな
そう思い、健斗は中庭から帰ろうとした
中庭を通りかかるとき、ふと前を見ると、あのベンチに3人くらいの人影が見えた
そのうちの一人を見て健斗は嫌な気分になったのは言うまでもない
そのうちの一人は、あの有名なサッカー部の主将だった
噂ばかり聞いてあまり顔は見たことはなかったけど、確かにかっこいい顔立ちだ……
爽やかな笑顔に、サラッとした茶髪……背も高くて……健斗とは比べものにはならない……
名前は……松本絢斗。サッカー部の主将で、この学校一モテる爽やかなイケメンさん
ヒロの情報に寄ると、彼は頭がよく、すでに大学の推薦が決まっているらしい……だから一人のうのうと暮らしているわけだ
羨ましいなぁ、顔もよくて頭もいい
女子にとっては憧れの的で、そりゃ早川だって惚れるわな……
健斗ははぁっとため息をついて、やっぱり中庭を通るのを止めようかと思った
が……しかしだった
「で、どう?大森麗奈……口説けそうなの?」
ふと麗奈の名前が出てきて、健斗は足を止めた
何で……麗奈の名前が出てきたんだろう?
健斗は気付かれないように近づいて、その会話を盗み聞きしていた
「いいよなぁ〜?あの学校のアイドルに近づこうとしてんのお前だけだぜ?」
すると松本絢斗は不適な笑いを浮かべた
「さぁな。一応付き合ってみないって言ったけど……多分無理だろうなぁ」
「はぁっ?お前に告られて断るやつがいるか?」
麗奈……サッカー部の主将に告られた?
いつ……いつ告られたんだろう?
というより、松本絢斗、早川のこと好きなんじゃなかったのか?
訳がわからなかった……松本絢斗は……麗奈のことが好きなのか?
何故だか分からないけど……胸が締め付けられるような寂しい思いになった
「多分、麗奈ちゃんは山中健斗のこと気にかかってるみたいだし……あの表情からは多分ダメだな」
「ああ〜……あの麗奈ちゃんにべったりしてる野郎だろ?ムカつくよなぁ、あいつ」
健斗はそれを聞いて、怒りを感じた。別にべったりなんかしてねぇよコノヤロー……
「山中健斗に麗奈ちゃんから手を引いてもらわないとなぁ〜……何かいい手はないかなぁ」
健斗ははぁっと深くため息をついた。やっぱりこういう輩がいたんだな……大体は予想出来てた
まず麗奈がこの学校に来た初日の男子の反応を見て分かっていた
麗奈は本当に可愛い……いっしょに住んでいる俺でさえそれは分かっていた
だからそんな麗奈と付き合いたいと思う輩はそこら中にいるはずだ……まぁ、この学校に各学年に2クラスしかないけど……
それで俺は麗奈とほとんどの時間をいっしょに過ごしている
嫌でもそうなる、腐れ縁というわけだ
だからそんな俺に対して妬むやつも出てくるよなぁ
でもそれは、1、2年の間だけだと思っていた。だから3年が……しかもあの松本絢斗までが麗奈を落とそうと考えているなんて……
すごくショックだった……早川が聞いたら……何て言うだろうか……
胸が張り裂けそうな想いになって、すごく悲しかった
しばらく雨のパラパラと降る音しか聞こえない
が……
そこまではまだ何とか耐えられた……激しく怒りを感じるのは……ここからだった……
「それにしてもさ〜、本当にお前って良い女ばかりが寄ってくるよなぁ〜……あの早川結衣も学校のアイドル的存在だぜ?噂じゃお前のこと好きらしいぜ、彼女」
健斗はそれを聞いた瞬間に、ピクッと反応した
松本絢斗はふんっと鼻で笑っていた
「確かに結衣もいい女だけど……麗奈ちゃんの方が俺は好みだな……」
さらに、松本絢斗は続けた
「だからもうあの子とは関わるつもりもないし、会ったりもしない。あの子はもう“お払い箱”。……そうやって“切り捨てない”と、“ウザイ”だけだから」
……っ!!!
健斗は今自分の聞いたことが信じられなかった……
早川が……お払い箱?
切り捨てる……ウザイ?
本気で言ってるのか?
本気で……本気でそう言ってるのか……
「お前も酷い男だなぁー」
そう言われたのを、松本絢斗はまた笑っていった
「大体あの子、しつこいんだよな。彼女でもねぇのに、毎朝俺と登校したいからって、ずっと待ってたりさぁ。帰りも同じ。まぁ、俺は優しいから?いっしょに帰ってたりはしてあげてるけど。でも本当にいい迷惑。マジでウザイわー」
あのときの早川の笑顔を忘れない。この松本絢斗のことを言ってたとき、笑ってた早川……本当に好きなんだって言ってた……
そのあとの寂しそうな表情もわすれはしない
翔が死んでから、きっと……辛い思いをしたはずなのに……なのにまた人を好きになろうとした
そんな早川の純粋な想いをあまりにもバカにした会話だった
許せなかった……翔の好きだった……早川をバカにしやがって……
激しい怒りがワナワナと湧いてきた
「さぁって、そろそろ教室戻ろうぜ?雨が強くなってきたし」
と一人のやつが言ったので、松本絢斗たちは立ち上がって教室へと戻ろうとしていた
激しい怒りを感じ、ワナワナと震えていた健斗は……今にもこの松本絢斗をぶん殴りたい気持ちでいっぱいだった
怒りで我を忘れるほどだった
「……ちょっと待てよっ!!!」
健斗は木の陰から出て、松本絢斗に向かって思いっきり叫んだ
すると松本絢斗は立ち止まって、ゆっくりと振り返った
健斗は松本絢斗を今までにないくらいの憎しみと怒りを感じながら思いっきり睨みつけた
健斗はゆっくりと松本絢斗に近づいていった。松本絢斗も健斗のことを睨みつけていた
「あんた……本気でそう言ってんのかよ……」
「……誰、お前……生意気だな」
すると松本絢斗の近くにいた一人のやつがあっと口を開けた
「こいつ……こいつが山中健斗だよ」
松本絢斗はそれを聞くと、ふぅ〜んと言いながら軽く笑った
「お前がそうか……何?盗み聞きしてたわけ?ワリィけど俺、男には興味ないんだけど」
と松本絢斗が言うと、周りのやつらが吹き出して笑った
何が可笑しいのか全然理解できなかった
「俺の質問に答えろよ……」
松本絢斗はゆっくりと不適な笑いを浮かべた
「何が?」
「だから……本気で早川のことっ!!!そう言ってんのかって聞いてんだよっ!!!」
すると松本絢斗は健斗を怒りを浮かべた表情で睨みつけ、ゆっくりと近づいて健斗の胸を押した
「おい……お前誰に向かってそんな口聞いてん――」
「質問に答えろよっ!!!!」
健斗は松本絢斗の手を振り払い、胸ぐらを掴んだ
松本絢斗は冷静で、周りのやつらは少々焦っていた
松本絢斗はしばらく黙り込んだあと、また不適な笑いを浮かべた
「……当たり前じゃん。本気だけど、それが何か?」
健斗はそれを聞いて、さらに怒りを増幅させた。左手が勝手に動き出しそうな勢いだった
「何で……何で早川のこと好きなんじゃなかったのかよっ!!!!」
「……誰も好きなんて言ってねぇけど」
健斗はそれを聞いてまたショックを受けた……こいつは早川のこと、好きじゃないのか?
「つーかさ、勝手に噂立ててキャーキャーキャーキャー騒いでんのお前らだろ?そういうの……うざってぇんだよっ!!!」
松本絢斗は健斗の腕を振り払い、健斗のことを思いっきり殴ってきた
殴られた衝動で健斗は後ろに吹っ飛ぶように転び、口を切ったようで血が出てきた
頬に激しい激痛が走った……
松本絢斗は掴まれた胸ぐらのシワを直しながらため息をついた
「……もしかして、お前、結衣のこと好きなのかよ?」
「………っ……」
松本絢斗は健斗の表情を見ると、面白そうに笑って、健斗に近づいた
そしてまるで虫けらを見るかのように、健斗を見下した
健斗も口から出る血を、拭いながら、ドロドロになっていた
松本絢斗を睨みつけて、息を荒くしていた
と、するとだった
突然松本絢斗は健斗の腹に蹴りを入れてきた
「……ガ……ハッ……グッ……ゴホッ……」
健斗は息がつまり、腹に激痛を抱えながら苦しんだ
「……ガッ……あっ……ゲホッ……ゲホッゲホッ……グッ……」
あまりの痛みと苦しみに、健斗は反吐を出していた
気を失いそうだった……
そんな健斗を見ると、松本絢斗はゆっくりと座り、健斗に耳打ちするように言ってきた
「結衣のことが好きだったら……あまり誤解されることすんなよ?麗奈ちゃんも良い迷惑だと思うぜ」
「……っ……!……グッ……」
そう言うと松本絢斗は笑いながら立ち上がった
「行こうぜ」
「お……おう……」
戸惑ってる二人を連れて、教室に戻ろうとした……が……
「……ゲホッ……なんで……だ……」
健斗は悶え苦しみながら、松本絢斗に向かって言った
「……なん……で……ゲホ……ばやか…わは……お前のこと……めちゃくちゃ……好きな……んだよ……!!」
必死に出す声で、健斗は言った
「好きなんだよ……お前のことが……めちゃくちゃ……め……ちゃくちゃ……大好きなのに……ゲホッ……ゲホッ……なのに……」
すると松本絢斗はゆっくりと振り返って、低い声で言い捨てた
「知るかよ。そんなこと」
そう言うと、松本絢斗と周りの二人は歩いて教室に戻っていき、健斗から離れていった
「……ま、待てよ……ぐっ……ゲホゲホッ……あっ……」
健斗は激痛の走る腹で動けなかった
ドロドロ、強くなる雨の中……健斗は悶え苦しんでいた
頬もきっと腫れてるだろうと思う……
許せなかった……許せなかった……
殴ってやりたかった……
なのに……情けない……動けない……痛い……痛い……
思考回路が失っていく、目の前が……ぼやけていく……あまりの痛さに……目の前が……
「もう〜?」
麗奈と早川は廊下を歩いていた。あまりにも健斗が遅かったから……もう昼休みが終わってるのに……
授業が始まってるのに帰ってこない
先生には健斗くんを捜しに行くという口実で、授業を抜けさせてもらった
「もう〜、どこいったのかなぁ?」
「屋上にもいなかったもんね……」
「でもまたサボってるんだよ。まったく……ジャンケンに負けてパシリにされたくらいで」
「そ、それが理由かなぁ?」
と早川が言うのを、麗奈は確信を持って頷いた
「きっとそうだよ」
早川は苦笑することしかできなかった……
「でも本当にどこ行ったんだろう?」
早川は心配するような口調で言ってきた
麗奈はそんな早川を見ると、深くため息をついた
しばらく歩くと、早川は立ち止まった
「私、図書室の方見てくるね?」
「うん」
早川と別れ、麗奈は階段を降りて昇降口の方に向かっていた
まったくもう……私のミルクティー……お弁当も食べないでどこ行ったのかなぁ?
授業サボれる口実にはなったけど、またサボってたら……私もいっしょにサボっちゃおうかなぁ〜
麗奈はそんなことを言いながら、昇降口に着いた
そして辺りを見回して、誰もいない
こんなところにいるわけないっか
麗奈は中庭の方を見てみた
また強くなっている雨の中、中庭にはいないとは思うけど……
と思っていたところだった……
ふと立ち止まり、人影を見つけた
倒れてる……ドロドロになりながらびしょびしょになりながら……
あれは……雨でよく見えないけど……
麗奈はその瞬間から嫌な感じがして、不安になり、その人影に向かって走り出した
雨に濡れながら、その人の元へと走った
そして、それが誰だか分かったとき……麗奈はあまりの驚愕さに口を手で覆いかくし、涙が出た
「健斗くん……健斗くんっ!!」
健斗だった
倒れてる健斗くんを見て、信じられなかったけど……死んだように倒れていた
麗奈はすぐに健斗の傍まで走り、健斗の身体に触れた
「健斗くん……健斗くんっ!!」
呼びかけてみるけど、健斗はまったく起きようとはしなかった
不安が胸の中に溢れた
「健斗くんっ!!」
健斗を仰向けにして、膝の上に乗せる
健斗は死んだように眠っている。いや、気を失っていた
ドロドロで左頬は青く腫れて、鼻からは血が出て……多分近くには健斗の反吐らしきものがある
お腹をにはくっきりと革靴の後が……
「どうしよう……どうしよう……健斗くんっ!!ねぇっ!!健斗くんってばっ!!」
まったく起きようとしない健斗に対し、最悪な事態が頭の中によぎった
嫌だ……健斗くん……嫌……
「健斗くんってばっ!!起きてよ!!健斗くんっ!!」
麗奈の必死な叫び声は、そのうち通り掛かった先生にも気づいてもらい……
それでも無我夢中で健斗を抱きしめながら、涙を流して健斗の名前を呼び続けた……
ちょっとやり過ぎましたかね……
でも実際気絶はすると思います
だって思いっきり腹に蹴りを入れられたら、普通の人だったら耐えられませんよね
それにしても……ちょっと……
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