第七話 ベガスの戦い
ジョンがいるおかげで、アメリカへの上陸は難なく済み、一週間ほどはアメリカの対サイエンサー組織『ルビー』に助けてもらうことになった。
「やっぱり俺には日本語はむいてないんだよな。今まで覚えていたことを、全て忘れるはめになったからな。」
やっぱり彼は外国人だな、と次郎は思った。
「せっかくアメリカまで来たんだから、滞在いている間は観光にでも行こう!」
ドッペルゲンガー博士はあいかわらず浮かれている。そんな次郎だが、今回だけは彼の意見に賛成だった。
「今だけ話に乗りますよ。滅多にこういう所には来れないし。」
「じゃ、明日から早速ベガスだー!」
ベガスというのはラスベガスの事だろう。
「ラスベガスですか?カジノなら僕たちお金持ってきてませんよ。」
「俺たちには外国人がいるだろ?初めは1セントあればいいんだ。俺はかなりの幸運の持ち主だからな!」
次郎はなんとなく納得した。
(…そうだろうな。あんな頭脳で今まで生きてこれただけでも、ものすごい運だからな…。)
二人は通訳としてジョンを同行させた。目的地は出発地点からはかなり遠いため、朝一で出発したのに着いたときにはもう夜に入りかけた時刻だった。
「ラスベガスは俺もまだ行ったことはないから、翻訳以外は何も出来ないからな。」
「分かった、分かった。カジノを始めたらおまえらは椅子に座ってただ俺のやることをボーっと見てればいいんだ。簡単だろ?」
それから彼は裏路地にあったゴミ箱をひっくり返した。その中からはセント通貨がいくつか飛び出してきた。
「どうしてこんなところにお金が…」
「儲けすぎて家に泥棒が入るのを防ぐため、こうやって少しずつ見えないところにコインを捨てていくバカがベガスにはいるんだよ。」
彼はそのコインを一枚拾い上げた。それにはくっきりと『1』と書いてあった。
「これが、アメシストと俺の財政を救う鍵となるんだ。よく見ておけよ!」
そしてドッペルゲンガーら三人は店を選び始めた。
「カジノってのは入る店によって運気がずいぶん変わって来るんだ。だから俺に合う運気がモヤモヤと漂っている店を…ここだ!」
彼は一つの古びれた、いかにも貧乏そうなカジノ店の前で立ち止まった。
「さあ、戦いの始まりだー!!」
「いらっしゃいませ。存分にカジノをお楽しみください。」
三人はカジノ店に入った。外見のわりには、意外と多い人が中にはいた。
「あれ?入場料とかはいいんですか?」
「こういうお金のない店は、人を来させるためにそういうものは無料になってるんだ。」
「…運気が漂ってるからじゃなかったんですか、この店に決めたの!?」
「その運気とはお金を取られるか取られないかの問題だ。」
彼はカジノ用コインとの変換所へ行った。
「では、現金を…」
受付の店員がそう尋ねたので、彼はポケットから1セントコインを取り出した。その時、周りの客から笑い声が聞こえた。
(おまえらが笑っていられるのは今だけだ。見ておけよ!)
彼は1セントのカジノ用コインを受け取った。
「まずは、ルーレットで勝負だ!」
ドッペルゲンガーがルーレットの席に座ったとたん、客たちは大笑いをした。そして彼を指差し何かを言っていた。
「ジョン、客は俺のことを何と言っているんだ!?」
「…繰り返し繰り返し、『バカ』と言ってるよ。」
「…こいつらの方が頭が欠けてることを俺が教えてやろう!」
「すみませんが、僕は客の言ってる事に同感ですよ…。」
「Me too」
しかし、その意見はくつがえされる事となる…。
「なぜだ?どうしてこんなに勝っているんだ!?こんな貧乏な男が!!」
ドッペルゲンガーと名乗る日本人は、見事に出る数字を当て、ルーレットでは大勝利を重ねていた。
「…どんな人にも才能はあるんですねぇ…。」
「…そのようだな。」
彼の賭け事の才能は、どの競技にいたっても素晴らしい結果を出した。ルーレットの数字と色をピタリと当て、ポーカーではロイヤルストレートフラッシュを連発し、その他のマイナーゲームでも人間とは思えない運の持ち主だった。
「今日はこのくらいで終わりにしておくか。さーて、現金に換金するぞ。」
ドッペルゲンガーの持ちコインは山のように多かった。三人は店の奥にある換金所のドアを開けた。
「おまえらも少しは俺を見習えよ!」
彼自身も、今回の結果には驚いているようだった。
「お客さん、随分勝ちましたね。」
換金をしているのはその店の店長らしい男だった。その男はそう言いながら換金所の部屋のドアに鍵を閉めた。
「あれ…?どうして鍵を?」
ジョンも同じ疑問を抱いたらしく、その男に英語で何か尋ねていた。その男はこう答えた。
「なぜって?…それは…こういう事だ!!」
男は体がどんどん人間でなくなていった。
「こいつ…サイエンサーだったのか!!」
「…ルビーのやつらか!?ああ、俺は正真正銘、ブロッケンモンスターだ!俺は毎回この店で儲けた人間をこの部屋で捕獲し、我々の仲間をその人間に変態させて出している。だから捕虜が増えて増えてねぇ!!」
ジョンとサイエンサーは英語で話していたため、残りの二人は何を言っているのかさっぱり分からなかった。するとサイエンサーは、ジョンにパンチを繰り出してきた。しかし、ジョンはそれをギリギリでかわし、今度はジョン側から鉄拳が飛び出した。
「うわ!」
鉄拳はサイエンサーに当たった。
「まだだ…皆の衆、攻撃だ!!」
ドアが破られ、店内からサイエンサーの大群が押し寄せて来た。
「みんなサイエンサーだったとは!!」
三人は押し寄せるサイエンサーから避けながら、店の外へ出た。そして、店の外にはあの機会の巨人が立っていた。
「ガギグゲゴ?修理が終わったのか!?」
次郎とドッペルゲンガーはガギグゲゴに乗り、Gブラストでサイエンサーを店ごと焼き払った。
「笑った罰と騙した罰だ!!」
「ガギグゲゴ?ああ、あれはラスベガスのルビーで使われてる『コピー・ガギグゲゴ』だよ。」
それは某都市で使われているガギグゲゴのコピー、すなわち量産型のメカだ。そのコピーは某都市の唯一の本物のガギグゲゴを元に作られ、全世界、全地域の某都市以外の対サイエンサー組織本部で使われている。
「なーんだ、どうりでGブラストの威力がいまいちだった訳だ。」
「おまえらがラスベガスに行ってる事に気づかなければ、今頃タコ殴りにあっていたところだ。感謝したまえ。」 |