第二話 二つの組織
山田次郎とドッペルゲンガー博士は組織『アメシスト』の中でも仲の良いほうだった。しかし、その二人が同じロボットの中にいて戦っているとなると、話は別だ。
「Gブラスト、発射用意。」
次郎はロボの手に付いている武器を使おうと、腕を曲げる動作をした。ガギグゲゴという名のそのロボットは、中の操縦士から分かるほどぎこちない動きをして腕を曲げた。おそらく関節の可動範囲が制限されているのだろう。
「博士、ちゃんと動くところは動くんでしょうね?」
「おまえはRCん家のブロックの少なさを知らないのか!?あんな数で種類も欠しいパーツでこんなに複雑な変形を再現できただけでも珍しいんだ!!」
「じゃあ、変形機構を無くせばいいんじゃないのですか!?」
「そしたら誰がガギグゲゴのおもちゃを買うんだ!?この小説がヒットすれば作者の家に某玩具会社の社員が来て、ガギグゲゴを商品化するだろう。だが、何のギミックもないロボット玩具など、誰が買うと思うんだ!?」
「…そんなセリフ言うと、ますます商品化から遠ざかって行くような気がするのですが…」
そんなことを話している間に、敵が襲いかかってきた。
「お命、頂だいいたす!!」
「うわー、なんか相手がかっこいい!…じゃなくて、Gブラスト、発射!!」
次郎は隣の席のおっさんを押しのけて、武器発射のボタンを押した。
「な、何だこのエネルギーは!ギャー!(2回目)」
怪物は一瞬でGブラストなる武器から発せられたビームに熔かされ、消えた。
「えっ?一瞬で終わり?さっきの前置きは何だったの!?」
「…Gブラストの威力だ。今までの某ロボットアニメは、必ず一番最初の攻撃はあまり効果が無かった。しかし、Gブラストは最初の攻撃であるにもかかわらず、敵を撃破した。我々は人類史上初めてのことをやってのけたのだ!!」
「…だから何なんですか?」
二人はその戦場から撤収した。
「博士、ところで毎回こういうヒーローもので怪物が大暴れしてロボットとかが倒した後って、どうしてニュースで放映されたりマスコミが来たりしないんですか?」
「…メン・イ○・ブラックをパクッたつもりはないのだが、戦闘中メカから一時的に無意識になりその戦闘の記憶を無くす超音波が発信され、人間の記憶を消してるんだ。一種の催眠術だ。だから、戦闘中に野次馬が来たりしないようになっている。」
「…思いっきりパクッてないですか?」
二人はアメシスト特設基地に向かっていた。
「適度な対処を感謝する、次郎君。以後も偵察の任務を続けたまえ。」
「ありがとうございます、ストックホルム大佐。」
ここは某都市の中心部に位置する市役所だ。詳しく言うと『環境課第七部事務室』だ。しかし、部屋はあっても肝心の環境課第七部はこの市には存在しない。
なぜならば、この部屋こそアメシストの本部への入り口なのだ。
「おまえ、どうして大佐に怒られなかったんだ?俺は何をしても大目玉だがなあ。」
「理由、なんとなく分かりますよ。」
ストックホルム大佐は、以前からあったこの組織をアメシストとして再設立した張本人だ。ちなみに設立者がいる基地があるということで、某都市はアメシストの中心となっている。
それと、アメシストは階級制ではないのだが、なぜ彼の愛称が『大佐』なのかは謎だ。
二人は地下の兵器開発研究所へ移動した。
「ところで、次郎はサイエンサーについてはまだ頭に入っているのか?」
「サイエンサー…ええ、さっきの怪物の事でしょ。実戦は初めてだったので、本物を見たのも初めてでしたけど。でも、サイエンサーは普段は人間に化けて生活していることも、それが日本だけでも10万人もいることも、覚えていますよ。」
「なるほど、賢いわけだ。」
話しているうちに二人は目的地に着いた。
「ところで博士、ガギグゲゴは誰が造ったのですか?2、3年訓練を受けているのですが、まだ教えてもらってないんですよ。僕はその人にできれば文句を言いたいですね。」
「うーん、俺も詳しくは知らないんだよな。話によると、だいぶ前からあるらしい。ぶっちゃけ言うとすべてRCが創ったんだろうけど、それは子供の夢を壊すから無視するとして…噂ではバンクーバ・ハンバーガーという技師が開発したと聞いている。ま、俺がここに来る前からあったからもっと年寄りの人に聞いてくれ。なにしろ組織自体の歴史が古すぎるんでな。」
「…確かあなた、経験上ガギグゲゴを変形させたのは今日が初めてって言ってましたよね、前の話で。」
「……」
「つまりあなたはかなりの年月使っていなかった変形機構を今日、ろくにメンテナンスもしていないのに使用したんですよね。安全に作動するという保障は何処から沸いてきたんですか?」
「…すみません。もう二度としません。許してください。お願いします。」
「…あなた本当に博士ですか?」
その時だった。
〔緊急事態、緊急事態!ポイント22831にてサイエンサー確認。ガギグゲゴ緊急スタンバイ。各員、ただちに持ち場につけ〕
「さあ、俺たちの出番だ!」
「俺はザ・ブレイカーのサイエンサーのアルミニウマンだ!さあアメシスト、勝負だ!」
アルミニウマン明記の怪物は力強く叫んでいた。
「分かりづらいから連体修飾語を2つ重ねないでほしいな。いや、それより、なんで僕がまたパイロットなんですか!?僕、候補生じゃないですよ!」
「何言ってんだ、第一話で乗った奴が以後パイロットを務めるのは、ロボットアニメの法則ではないか!」
「一体アメシストはどうなってるんですか!?まあ、しょうがないですね。僕主人公だしそれでいて±0になるから許しましょう。とにかく、早く変形させましょう。」
ガギグゲゴは要塞からロボットへと変形した。
「一気に片付けましょう。Gブラス…」
「ちょっと待て。試してみたい武器があるんだ。本部、『ギャギュギョ』をこっちに射出してくれ。」
それから1分。ガギグゲゴとアルミニウマンは激しい接近戦をしていた。
「次郎君、ギャギュギョが届いたぞ。装着だ!」
ギャギュギョというこれまた酷いネーミングの偵察機らしい乗り物は、ガギグゲゴの腕部に装着した。ギャギュギョのザ○のような一つ目からはビームの刃が出てきた。
「さあ、一撃必殺だ、ガギグゲゴ!行っけぇー!!」
博士は子供のように叫んだ。おそらくオートだろうか、ガギグゲゴは素早く動き、敵を一刀両断した。
「雷斗忍愚・舞零怒!!」
「ギャーー!!(通算3回目、以後省略)」
敵のサイエンサーは倒れたかに思えた。が、しかし…。
「…は、博士!漢字の変換に苦労したと思うけど、敵はまだ生きてます!!。」
「…なめられたものだな…」
敵の残骸は何か言っているようだった。二人の搭乗者は音声のボリュームをMAXにして聞き取ろうとした。
「…この…戦いは…今まで以上に…はげ…しい…戦いに…な…る…だろう…。…待っていろよ、アメシスト!!」
それがアルミニウマンの最後の言葉だった。
「さあ、可動範囲の少ないガギグゲゴはどうやって接近戦をしたのだろうか…?」
「少年よ、戦いが終わった後ぐらいは気分がいいからそんな哲学はやめておこうよ。」
「そういえば博士、一つ確かめたい事があります。…あなた、オタクでしょ?」
「…えっ!どうしてそれが分かった!?」
美しい夕日が二人を照らしていた。 |