第十八話 ガギグゲゴの鼓動
「サイエンサーは変態能力を持つ。彼らは神に認められた、聖なる魂なのだ。今の日本で研究をしていた私は彼らを世界中に送った。だが…」
だが、その後、彼は驚くべきことを知ってしまったのだ。
「セロファン様、じゅ、重要なご報告があります。」
彼の作った生物の一人、彼の側近のサイエンサーがそう言ったのが切欠だった。
「なんだ、申したまえ。」
「に、人間が…いたのです!」
「なんだって!?」
それは、セロファンの未来を大きく変える出来事だった。
「聞いた話なのですが、アジアとヨーロッパの境の地域に、それが存在したのです。」
詳しく聞くと、ノアという男が大洪水を推測して箱舟を作り、それに何人かの人間と動物を乗せて生き抜いたという。
「そ、そんなことが…」
その時、実験の期間に老いた彼の体は、最期のときを迎えたのだ。
「再び冥界へ来た私は、神にこう言った。」
〔神よ、人間は消し去られてはいなかったのだ。私の、この苦悩をどう対処してくれる!?〕
〔……〕
「そしたら神は…再び私と契約をしたのだ。」
〔…つまり…おまえは人間がまだ存在していたのにも関わらず、新しい高度生物を生み出したのだな…ふむ…。…よし、褒美をやろう。〕
〔褒美?〕
〔不老不死の体をやろう。だが、もしまたおまえが人間、またはサイエンサーを死に至らした場合、その体は消滅し、おまえは老衰で死ぬだろう。両者の死は…以前言った通りだ。〕
「そして、私はこの体を手に入れたのだ。一度老いてしまったため、この状態からの不老不死だ。私は有頂天に達した。だが…かだ欲望は尽きなかった。」
「じゃあ…今度は何をしたんだ?」
「…趣味の時間だ。」
「趣味…だって?」
「そうだ。夢を当分の間は手放さざるを得ない状況になった私は、それを永い年月の暇つぶしに選んだのだ。それというのも、私は『死』というものが大好物でな。それも、命の尽きるその一瞬が。私は創世者であるが故に自由に操れる彼らに、生き残った人間の抹殺を命じたのだ。…絶対に全員は殺すな、と念入りに付け加えて…。後のザ・ブレイカーの誕生だよ。」
「サイエンサーたちは、命ずるがままに生き残った人間とその子孫をを々と殺していった。同時に私は、『不死身』とは違うこの体のせいで現地にいくことこそ出来ないが、遠くはなれた場所で報告を聞きながらゆっくりと人生を過ごしていったのだ。」彼はうつむきながら続けた。
「だが、見方が高度なら敵も高度、人間はサイエンサーに立ち向かっていくようになった。その結果、人間とサイエンサーの戦力が互角になってしまった。そのために死は生まれなくなった…。サイエンサーは偶然によって生まれた生物、悪性のタイプこそ存在するもののそう簡単に強くはできない。そこで私は…人間の勢力に加勢したのだ。」
それから彼は、死なら人間でもサイエンサーでもかまわなかった、と言った。
「…ガギグゲゴか?」
「ああ。私はバンクーバ・ハンバーガーの名で人間が結集した組織に、開発した機械の巨人を託した。私はそれが終わったら、正体が明かされないうちに彼らの前から立ち去った。」
人々は謎の技師から受け取った兵器で敵をどんどん消していった。だが、敵の数は増えているらしく、全体の数はなかなか減らなかった。それは、セロファンが彼らに自ら仲間を増やす方法を伝授したためだった。故に、セロファンの役目はなくなり、彼はただ高見の見物をするだけとなったのだ。その後彼は身を隠すようになり、サイエンサーの中でさえも彼の存在を知らない者が出てくるほど、暗黒の人物と化したという。
「そして私は…おおいなる計画を考えついたのだ。」
「それは…何なんだ?」
「…今のこの現状だよ!!」
そう言うと、彼は手の中にあるものに触れた。上の空間から、ヘリウマンを含めた四人に檻が落ちてきたのだ。
「こ、これは…謀ったな!!」
「もう遅い。君たちは…私の仕掛けた罠にうまくはまったのだ。」
「わ…な!?」
「大いなる計画…それは、ガギグゲゴを再び私の手元に来させる事だ!!」
その直後、部屋の壁が大きくゆがみ、崩れた。それはあの機械の巨人がめりこんだためのものだった。
「ガギグゲゴ?なぜ勝手に…」
「私が動かしたのだ。高性能な兵器に、特定の人物の脳波で遠隔操作ができる機能が隠してあっても不思議ではなかろう?その性能にも範囲があるから、この計画が出されたのだ!!」
次郎は今起こってる現実に、ただ驚くだけだった。
「さぁ、ビッグなショーの始まりだ!!」
セロファンはガギグゲゴと共に遠く離れていった。
「一体…何をするつもりだ!?」
「分かりきっているじゃないか。…全てを破壊するのだよ!!」
彼とガギグゲゴはその言葉を最後に消え去った。
「どうにかしないと…何か案はないのか?」
次郎は問う。だが、誰一人それに答えられなかった。
「おまえ、やつの秘書ならなにか思いつかないのか!?」
ドッペルゲンガーはヘリウマンに殴りかかった。
「そ、そんな…私でさえも、この計画のことはセロファン様に教えてもらえませんでした。…何ができるっていうんですか!」
「ちぃ、役立たずめが!」
ドッペルゲンガーはうつむいた。
「…ただ、セロファン様はこう言っていただけです。」
「様なんて呼ぶな…さぁ、言ってみろ。」
「『私が何もしなくても、理想は現実へと変わる。全ては…結果なのだよ。』…と言っておりました。」
「訳がわからん。」
「…いや…なんとなく…分かる気がする。」
「え?」
次郎は何かを察したようだった。
「もしかしたら…僕たちが勝手に計画を進めていった…ということ…なのかな。」
「どういう意味だ?」
「…全ての切欠は、僕が不変薬の事を聞いた事だよね?そしてその出来事の始まりは…僕の行動なんじゃないかな?」
「…確かに。だが、おまえがサイエンサー基地に行ったのは、それだけじゃないような…」
「俺が次郎を捕らえたからだ。」
そう続けたのはジョンだった。
「あの時、サイエンサーの命令を断っておけば…ガギグゲゴはここに来る事はなかった。」
彼は深く後悔している様子だった。
「誰だって今につながる行動をしているんだ。悪いのは…セロファンただ一人だけだ。…そういえば、アンモニウマンは?次郎は一緒だったはずだが…。」
「…ねぇ、セロファンは、人間とサイエンサーが一人ずつでも共存していれば、不老不死の体が無くならないんだよね?…まさかとは思うけど、アンモニウマンはその最後のサイエンサーに使われるため、僕らと同じように捕らわれの身になってるんじゃ…。…この話、終わるの?」
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