僕の世界
短編です。
長編で行き詰まっちゃいました。
なのでどうぞ。
「今日も静かだ」
「ええ、そうね。面白みが全くない」
何も変わり映えしない景色を見ていると疲れてしまう。
こう思うことを日常にすることも退屈だ。
何か刺激が欲しい。
あったらあったで目障りに思うだろうが。
贅沢というのはやはり僕らの敵だ。
「私たちがどこかに歩み寄ろうとしたらもう少し違うのかしら」
彼女がそう言った。
確かにそうなったなら僕らはこんな退屈を忘れてしまえるのかもしれない。
そうなるくらいの楽しみを見つけられるかもしれない。
「嫌だよ」
彼女が驚いたように僕を見る。
僕は彼女をじっと見る。
「そんなことになったら君は僕から離れて行ってしまう」
これは完全に僕の都合だ。
言い訳の仕様が全くない。
「君が外に近付けば近付くほど僕は君から離れてしまう。だから嫌なんだ」
自分勝手な言葉を僕は話す。
彼女から離れてはいけないから。
引き留めるために。
縛り付けるために。
そんな言葉を彼女に言う。
それがどんなに卑怯な言葉でも。
「行かないわよ」
彼女のそんな言葉だけで僕は救われる。
彼女がどこにも行かない。
そう思えるから。
「もとからそんなつもりは無い、これからも一緒よ。ずっと」
子供をあやすように彼女がそう言う。
そんなセリフが嬉しくて僕は笑う。
心から笑えた。
僕にとってそれは珍しい。
「というか行けないわよ。あんな顔してたら」
「僕はどんな顔をしてたの?」
「母親に残された子供のようなそんな顔よ」
「僕はそんな顔をしてたかい」
「ええ、なかなか可愛かったわ」
「それは嬉しいよ」
僕はなかなか酷いやつだな。
彼女のそんな気持ちまで利用する。
僕は当たり前のようにそうした。
きっと彼女も気付いているだろう。
それでも僕を受け入れてくれた。
何よりも酷いと思うのは僕がそれをなんとも思えないことだ。
きっと最低だと思われる、そう見られるのだろう。
しかし僕はそれが悪いとは思えない。
それでいい。強くそう思える。
彼女を失わなければ後はどうとでもなる。
それが僕の心の支柱だから。
「大丈夫?」
彼女の顔が僕を向く。
心配そうなこの顔を僕はずっと見ていられる。
だからいい、何があっても。
「うん」
そう彼女に答えた。
僕と同じ気持ちになってくれればいいと思っている。
でもそれほど強くはない。
これは希望ではないから。
人は僕を見てどう思うのだろうか。
彼女を閉じ込めている悪者だろうか。
意味のないことを話す狂人だろうか。
きっとそう間違えていない。
だけどそれでもいい。
僕を倒すヒーローならいらない。
彼女をヒロインにするヒーローなら。
僕は喜んで敵になってそんなヒーローを排除しよう。
だから彼女はずっとヒロインにはなれない。
ずっと囚われの姫になるだろう。
そして人はこう言うかもしれない。
『それは愛ではない』と。
それでも僕はこう思う。
彼女が僕から離れて行ってしまうなら。
僕が見つけられなくなってしまうなら。
それを愛と呼ぶのなら。
僕らに愛なんて必要ない。
悪意だろうが狂気だろうが何でもいい。
僕のこんな気持ちに名前なんて付けなくてもいい。
名前なんて邪魔なだけだ。
僕の愛は不良品でいい。
壊れていてもいい。
彼女が隣にいるのなら。
僕はそれを"アイ"と呼ぼう。
気持ち悪かったでしょうか?
なんか純愛とは程遠い気がします。
まあいいでしょう。
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