93 一方通行
鉄板の上のものを平らげると平沼くんはトイレに立った。そこで典子に一つの疑問を投げかけてみた。
「典子って平沼くんの事好きなんだね。」
「えっ?」
明らかに動揺している。
「亜希には話したの?」
「ちょ、ちょっと何言ってるの?」
「話したの?」
「えっ?」
「違うの?」
「違うよ。」
「じゃ亜希と平沼くんが付き合っても平気なら応援しょうよ。」
「…。」
「しないの?」
「真理ってSキャラ?」
「質問きつかった?」
「大丈夫。」
「ゴメン。なんとなく典子が後悔しなきゃいいなぁと思って。」
「直樹の気持ちが違う方に向いてるんだから仕方ないでしょ…。」
「そうだね…。典子どうするの?」
「二人が…、直樹が幸せになるならそれでいい…。」
「健気だな…。後悔しないのね?」
「どうしろって言うの?」
「典子が告白したって、亜希との仲が悪くなるわけでもないし。」
「フラれるの分かってて、告白する女なんてミジメなだけじゃん。」
「伝えなきゃはじまらないでしょ。」
「…。」
「典子…。」
「二人には内緒ね。」
「…うん。」
「この話しはこれでおしまい。」
そこにノコノコ平沼くんがトイレから出てきた。
「どうしたの?二人黙って?」
「ちょっとね。鈍感な友達の話をしてただけ。」
「鈍感?恋に鈍感な友達…?亜希か?おまえら亜希の悪口言うなよ。」
「馬鹿か?」
「ん?」
「直樹追加していい?」
「典子そんなにお金ねぇって!」
「あっ、そう。真理やっぱりカラオケ行こうか?」
「えっ、…いいけど。」
「じゃ直樹ご馳走様!」
「どう致しまして…。二人共頼んだからな。」
「真理行こう。」
「う、うん。平沼くんまたね。」
「おう。」
典子と店を出た。平沼くんは中で会計をしている。
「典子ウチ来る?割と近いよ。」
「いい?」
「どうぞ。」
ウチに向かって歩くと後ろから『カラオケそっちじゃねぇだろ!』と叫んでる。叫ぶのは恥ずかしかったが『ウチ寄って行く事になったから!』と言って手を振った。向こうも手を挙げそれに応えた。
典子の方を向くと涙が一筋頬を流れ落ちたとこだった。差し出したハンカチを典子は素直に受け取った。
家に着き典子を居間へと通し、
「ゴメンね。自分の部屋無くて。コーヒーでいい?」
「うん。」
2階の部屋は幸太の私物が大半を占め、数少ない真理の私物は少し残して1階のヒロの部屋へと移してあった。 |