89 席替え
私達は結局決勝まで行けなかった。負けた試合のあと、3年生はみんな泣いていた。貴代は涙目程度で慰める方に廻っている。私達もとうとう引退するのだ。次の部長は美穂か小百合だろう。その二人も泣いていた。凄く楽しめた充実した2ヶ月半だった。
「あっという間だったなぁ…。」
「真理は試合の方が楽しそうだったね。」
「負けた試合以外はね。」
「当たり前じゃん。でも真理って底知れないよね。5試合だけど多分チームトップの得点だよ。」
「あれだけ速攻で走ったら点取るでしょ。」
「ミドルシュートも入ってたよ。」
「何?ちょっと褒めすぎで気持ち悪いよ。」
「真理がくる前はベスト8も届かなかったもん。」
「そうなの?」
「真理のおかげよ。」
「松本のリバウンドだって大きな力でしょ?」
「確かにそうだけど、なんか起爆剤というか…、」
「それ、前にも誰かに言われたな…。」
「起爆剤?」
「うん。」
「美紀でしょ?」
「そう…。何で分かったの?前にも言ってたとか?」
「真理が入ってきたときよく言ってた。爆弾娘だって。イメージと違くて残念だって。」
「どんなイメージよ。」
「クールビューティってやつ?」
「ビューティはいいけど、クールって冷たそうな感じじゃない?」
「そんな事ないよ。大人しい感じ?いや大人っぽい感じかな?」
「そう?」
「話した事なかったから、尚更そう感じたんじゃない?よくいるじゃん『誰々は喋らなきゃ美人でいいんだけどなぁ〜。』って。」
「どうせ私は喋らない方がいいですよ〜だ。それで、なんで今日はそんなに嬉しいそうなの?」
「今日夕方空いてる?」
「えっ、夕方?うん…、まぁ空いてるけど。」
「『紅葉』行こうか。」
「あー、約束覚えてた?」
「うん。」
「あれ?亜希のおごりだよね…?」
「うん。」
「亜希なんか気持ち悪いよ。おごるのに楽しそうって…。」
「そう?夕方になったら教えるって!」
「なんか気持ち悪い。熱でもあるんじゃない?」
「そうかもね〜。」
6月に入って席替えがあり、名前の順番に座っていたが、今はバラバラだ。私の前から美紀はいなくなり、うしろの席の早苗は離れた席になった。そして今回は私の前に亜希が座っているのだ。
亜希にとって浮かれるくらいいい事ってなんだろ…?まさか…男?田中さんから連絡あったとか…。もし田中さんだったら、今度は応援するんじゃなく、友達として反対しよう。 |