85 カラオケ
待ち合わせのカラオケ屋に着くとカウンターに座ってた男の人と目が合った。
「深谷っ!」
私に驚いたみたいで、声が裏返ったのか変な声だ。この子が橋本くんか?とりあえず軽くお辞儀をしながら、
「どうも。あなたが橋本くん?」
「おっ、俺は、おととし同じクラスだった山本だよ。覚えてない?」
「あっ、本当だ。バイト?」
て言うか見覚えあるわけないし…、ここは当たり障りの無い話しをして…、
「そうバイト。橋本に用?」
「うん。先に辺見さんと内野さんが来てるはずなんだけど…。」
「『もう一人来る』って深谷さんだったの。」
「何号室?」
「310だよ。」
「3階?」
「そう。バイトがもう一人くれば案内するけど、今日休みやがってさ…。」
「大丈夫。適当に探すから。」
部屋はわかりやすく中を覗くと二人がいる。ノックしたが聞こえてないようなので気にせず入ると、二人の視線がこっちに集まった。歌ってない辺見さんの横に腰かける。
「お待たせ。」
「何飲む?」
「アイスティーかな。」
どうせチェーン店のカラオケ屋は、何を飲んでも美味しくない。
「歌って欲しい曲あるんだけど、入れていい?」
「知ってる曲なら。」
「有名な曲だから多分知ってる。」
そう言うと選曲し入力してる。それが終わると飲み物のオーダーを内線でしている。
「内野さん歌上手いじゃん。」
「まぁそうなんだけど。」
「辺見さんも上手いんじゃないの?」
「人並みだよ。」
謙遜してるらしい。
「ねぇ。」
「何?」
「下の名前で呼んでもいい?」
「いいよ。私も名前で呼ぶね。名前は?」
「私は早苗。あっちはひかり。」
歌いながら私に向かってピースした。あっちも名前でいいみたいだ。
「私は真理ね。」
「知ってる、有名人だから。」
「それはどうも。」
ひかりが歌い終わりマイクを渡された。イントロは店の有線でよく流れていた曲だ。
「知ってるでしょ?」
「知ってる。」
自分で言うのもなんだが音痴ではない。かと言って特別上手いわけではない。それでも歌い終わるとお世辞を言われた。
「上手いじゃん。」
「本当。本当。声もいいしね。」
「そうかな?」
「そうだよ。次も真理ね。」
「えっ?」
と、言いつつそのあと3曲続けざまに歌わされた。途中店の従業員が飲み物を持ってきて、なにやらひかりと仲よさそうに話していた。この人が橋本くんか?別に恐そうな感じではなかった。 |