80 ビジョン
布団で寝てると何かもぞもぞと入ってくる感じがした。
「起こした?」
「ん…、何?どうした?」
「たまには一緒にいい?」
「ん…。」
「ダメ?」
「甘えん坊だな…。狭くない?」
「うん。」
「枕…、枕持ってきな…。」
「わかった。」
枕を取りに一旦布団を出たのがわかる。時計を見ると寝始めてから、そんなに時間が経ってない…。
「眠れないの?」
「考え事してたら寝付けなくて。」
「何考えてたの?戻る方法とか?」
「それは考えても答え出ないし…。」
「だったら何?」
「このまま…、ヒロのまま生活するのであれば、頑張らなくちゃ!と思って…。」
「そんなに肩肘張らなくても…。」
「ねぇ?」
「ん?」
「将来のビジョン…、ってゆうか夢みたいなものあった?」
「ビジョンか…。」
「何でもいい。例えば店大きくして従業員増やすとか。」
「店で言えば、長く続ける事かな。『あそこに行けば、あの味が食べれる。』みたいな…。店大きくするのは考えた事ない。」
「そうなんだ…。」
「一番の経費って、店の賃貸料だから。」
「ふ〜ん。」
「今くらいが一番気楽だよ。」
「そっか。プライベートは?何かない?」
「ん…、真理を幸せにする事。」
「照れるじゃん。」
「愛子と純と幸太の身の振り方。」
「何それ。せっかく幸せな気分だったのに。」
「いずれあの二人も出ていくだろう…。でもなんて言うか、『実家みたいなもんだからいつでも帰ってこい。』みたいな雰囲気にしといてあげたいんだ。」
「出て行く…。」
「真理は愛子達に、随分お世話になっただろ?」
「うん。」
「恩返ししなきゃな。」
「考えた事なかった…。でもその通りだね。」
「だから新婚生活は、二人きりってのはないけど我慢して欲しい。」
「それはもう期待してないって。」
「そうか…。」
「…。」
「で、そっちはどんなビジョン考えてたの?」
「いや、店の改装…。」
「改装?」
「いや、すぐって訳じゃなくて、ケーキ入れるガラスケースって場所とるな〜と思ってたら、どうやってもスペースが足りなくて…。」
「それ考えて眠れなくなったのか?」
「まぁ…。だから今の店だと狭いかな〜と…。」
大きくするなんて考えた事なかった。桃子との約束…、『小さくてもいいから夫婦二人でレッジーナみたいな店をやる。』でもこれからは『ヒロと真理の夢』を持つべきなのかもしれない。 |