メビウス ループ(79/179)PDFで表示縦書き表示RDF


メビウス ループ
作:優楽



79 交渉


 痴漢の件は、1週間くらいした時に案の定弁護士さんが来て示談金の提示をしてきた。相場がいくらかは知らないが、そんなに高い額ではなかった。
 こちら側は謝罪をされてない事をまず主張したが、謝罪文などもらっても紙クズになるだけだ。意図的に私の10メートル以内に入らない事を条件に、示談してあげる事になった。痴漢した男が会社を首になったと聞かされた時は、なんとも後味が悪かった。
「だからあんまりいじめなきゃよかったのに。」
「まさか首になるとは思わなかったんだから、仕方ないじゃん。」
「そうだけど。その人にだって子供いたかもしれないだろ?」
「私が悪いわけ?」
「根本の原因は相手だけど…。」
「まぁまぁ…、二人とも決着したんだからいいじゃん。それに進藤さん痴漢の肩持つなんて、女を敵に回すよ!」
「肩持ってるわけじゃなくて…。」
「じゃ、何?」
「相手の家庭の事とか…、」
 愛子が台所から3人の会話を聞いていたらしく、
「その話は終わり。真理ご飯運ぶの手伝って。」
「は〜い。」
「でも私が奥さんなら、離婚間違いないわね。」
「離婚?」
「痴漢して首になったなんて、近所の人に言えないでしょ。」
「そうだね。」
「示談したかったら、弁護士もっと早く寄越せばよかったのにね。」
「まぁ、その話は終わりって事で、ご飯食べよ。」
「そうだね。」
 始めに『示談しない。』って言った事が影響したのだろうか…。食事を終えお風呂も順番に入り、寝る前のストレッチをしていると、
「なぁ…。」
「何?」
「明日どっか行かない?」
「どっか?」
「どこでもいいからさ。」
「いいよ。何か美味しいものでも食べ行こうか?」
「よっしゃー。何食べ行く?」
「行き当たりばったりて決めようよ。」
「いいね〜。でも場所は決めようよ。どこ行く?」
「意外と神田とか築地とか?」
「どこそこ?」
「東京さ。」
「渋谷とかお台場とかじゃなくて?」
「若ぶってるけど38才のオヤジには不釣り合いだよ。」
「そう?お台場行ってみたい。」
「珍しいね、具体的に行きたいとこ言うなんて。」
「最近暇の時には雑誌見る機会あるからね。」
「そうか。」
「服見立ててあげる。」
「着せ替え人形じゃないんだから。」
「これでもセンスはある方よ。片山さんにも『最近お若いですね。』なんて言われてるんだから。」
 それは社交辞令というお世辞だ。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう