70 合宿所
結局亜希は、午後の練習も夜の練習も来なかった。夜練のシメもシュート練習だ。
「亜希どうしたのかな?」
「考えられるのは…。」
「考えられるのは?」
「…。」
「真理何?」
「田中さんのとことか…。」
「まさか…、押しかけたとか?」
「うん。もしくは誘われて、断り切れずに…。」
「…。」
「本人来たら聞こうよ。考えたって仕方ないし。」
「う、うん。」
その時、『典子。』と美紀が体育教官室の入口から典子を呼んでいる。
「なんだろ?」
「亜希の事聞かれると思うよ。」
「そうかな?」
「先生も子供達預かる責任あるし。来てない生徒心配でしょ。」
「そうか…。何て答えよう…?」
「『心辺りありません。』にしておけば…。」
「田中さんのとこは?」
「どうだろ?」
また美紀が典子を呼んでいる。『典子ダッシュ!』
「真理も来てよ。」
「えっ?」
「早く。」
「わかった。」
典子に付いて教官室に入ると、やはり話題は亜希の事を色々聞かれた。
「心配だわね…。」
「家には?」
「夕食前に連絡した時は帰ってないって…。」
「そうですか…。」
「わかった、もういいわ。お風呂入って、ゆっくり体休めて。」
「はい。失礼します。」
体育館に部員の姿はすでになく、今頃合宿所のお風呂に順番に入っているだろう。部屋に着くと、
「先に2年に入ってもらったからね。」
貴代が松本ともう1人の1年生大島と待っていた。1年でベンチ入りしない子は、通いで午前と午後の練習に来て、夜の練習には参加しないのだ。
「ゴメンね。」
「美紀は?」
「先生とまだ話してる。」
「そうなんだ…。結局亜希どうしたかわからないの?」
「うん…。」
幸太には2度電話しメールも送ったが、折り返しの電話も返信もない。しばらくして美穂がお風呂からあがってきた。
「お先にすみませんでした。」
「大丈夫。」
「もうみんな脱衣所で着るだけなんで、どうぞ。」
「わかった。」
「行こうか。」
「準備したら行くから先行ってて。」
「わかった。じゃ松本と大島行こう。」
「はい。」
バッグの中の携帯電話は不在着信も受信メールもなかった。準備し典子とお風呂へ向かった。でもよく考えてみれば、ついこの間まで38才だったオッサンが女子高生と一緒にお風呂へ入るのだ。部室で着替えを見るだけでもドキドキしたのに、今は真横で典子が一枚一枚脱いでいってる。 |