7 父親
真理の父親は、桃子の葬儀のあとしばらく日本にいた。桃子の形見わけに、俺が桃子の時にプレゼントされた指輪をもらった。二人の名前が内側に入ったシルバーの安物だ。『momo&hiro』17のクリスマスの時だ。その指輪はネックレスに通して、今だに身に付けてる。
「進藤くんには、もう一つ貰って欲しいものがあるんだ。」
「なんでしょう?」
「あの子の預金通帳なんだがね。」
「…。」
「油性ペンで書いてあって、『広志と二人の将来のための貯金。』って書いてあるんだ。」
「…。」
「モデル活動して稼いだ金だ。ほとんど手付かずで入ってる。」
俺が桃子の時、冗談で書いのだ。
「受け取れません。」
「いやこれは君のものだ。すでに名義を変えてある。相続税はこっちでもつから安心してくれ。これは彼女の意思でもあるわけだし。」
「…。」
「あと君を信用して頼みたいのだが…、」
「…。なんでしょう。」
「真理が20になったら遺産が真理に行くように、信頼出来る弁護士事務所に頼んでおいた。あの子が20の時に、うちの家内は60過ぎだ。君はまだ若い。後見人になって欲しい…。もちろん遺言にも既に記入済みだ。」
「60ならまだ元気ですよ…。」
「家内は金遣いが荒く浮気癖があってね…。あの子にもちゃんと残したいんだ。」
「…。分かりました。私でよければ。」
「書類があとで自宅に届くと思う。」
「はい。」
書類と遺言書の写しが弁護士事務所から届いたのは3日後だった。あと5百万の小切手が同封してあり、手紙には何かに使ってくれとあった。お母さんはどうしようもないが、お父さんは出来た人だった。
真理は高校を辞めたがってた。『通信制でもいいから高校くらいは卒業しろよ。』と言ったら真剣に調べだした。
「真理は将来どんな仕事したいんだ?」
「何、急に?」
「学校辞めて、したい事とかあるのか?」
「なんか父親みたい。」
「嫌か?」
「そんなわけないじゃん!私の事、気にかけてくれてる…。すごく感謝してる。」
「愛子だって、純ちゃんに幸太も気にかけてくれてるだろ。」
「そうだけど…。」
「真理の姉ちゃんも一人の事が多かったみたいだぞ。お父さんが海外で仕事して、お母さんは半年以上お父さんのとこ行っちゃってたらしいし。」
「実際その半分は、今の旦那と暮してたんだよ。私だってどっちの子だか分かったもんじゃない…。」
ため息が出る…。 |