67 懐かしい名前
観覧車を降りてしばらく歩いていると、一人の男に声をかけられた。
「あの〜、ちょっといいですか?」
「なんですか?」
ヒロが間に入ってくれた。
「すいません。別に怪しいものじゃありません。」
「十分怪しいですけど。」
「親子…、じゃないですよね。」
警察?まぁ援交してるわけじゃないから平気?でもドキッとする。
「だったらなんですか?」
「ですよね…。」
「ちょっとヒロ行こう。」
「待ってください。」
「何?」
「タレントとか興味ないですか?」
「はぁ?」
スカウトか…。少しホッとした。
「今月一人も事務所に連れていってなくて、ヤバイんですよ。」
「いい子がいなかったらしょうがないじゃん!」
「人助けだと思ってお願いしますよ。」
「名刺。」
「えっ?」
「名刺下さい。」
「あっ、はい。」
このサラリーマンはスーツの中から名刺入れを探してる。
「大手?」
「いえ、でも有名な女優も所属してます。」
「名刺ないの?」
「あります。ちょっと待って下さい。」
「早くしないと行くよ。」
「ありました。これを…。」
名刺をヒロに渡して、こっちにも一枚出してきた。
「美咲芸能プロ?それで、有名女優って?」
「最近独立したのでタレントも少ないのですが、野村涼子と三崎優子です。」
「知らないなぁ…。」
「知らないですか?野村の方は若くしてフルヌードになって、当時としては結構話題だったんですが…。」
「へ〜。」
「知らないですか?」
「えっ?」
野村さんだ。
「何?真理どうしたの?知ってるの?」
「なんでもない。」
「三崎優子はちょっと前まで、その名刺の『美咲』って漢字の名前で芸能活動してたんです。昔はモデルとして有名だったんですけど、ご存知ないですかね?」
「知ってる。」
「知ってますか?」
「はい。」
「どうです?興味出てきました?」
「よろしくお伝えください。」
「えっ?」
「『よろしくお伝えください。』って言ったんです。」
「知り合いですか?」
「いえ、私の姉が…。」
「お姉さん?」
「深谷桃子の妹です。そう言えばわかるはずです。」
「はぁ、それにやるなら2人の元所属事務所と決めてますから…。栗原さんってマネージャーが知り合いなんで。」
「栗原さんとも知り合いですか…?」
「栗原知ってるの?」
「そちらの方も知ってらっしゃるんですか…。」
「まぁ…。あなたも栗原の事知ってるみたいね。」
「栗原さんの下で働いていましたから…。部が悪いので諦めます。お手間とらせました。お名前もう一度聞いてよろしいですか?」
「深谷真理です。」 |