66 眺め
結局『そんなのいつでもいけるだろ。
』と言って渋り、また今度の機会という事になった。そして少し足を延ばし、観覧車のあるデートスポットに向かう事にした。広志の時に真理としたデートは、数えるだけしかない。片手の指を折れば足りるだろう。それに観覧車に乗るデートなんてしなかった。そもそも観覧車に乗ったのは何年振りだろう。桃子とも乗った記憶はない。
「高いね。」
「でも、いい眺め。」
「なぁ真理?」
「珍しい。」
「何が?」
「そっちが『真理』って名前で呼ぶのが。」
「まだ慣れなくて、そっちはよく順応してるって思う。」
「そう?」
「うん。」
「で、何?」
「もう戻れないのかなぁ…。」
「どうだろ?」
桃子とも入れ替わった事があるのを話すのはまだ早いだろう。
「そもそも何で入れ替わったのかな?」
「そんな事分かったら、とっくに元に戻れてるよ。」
「そうだよね。」
「そうだよ。」
「真理。」
「何?名前の安売りでもはじめたの?急に名前で呼び始めたね。」
「慣れないと。それよりそろそろ頂上だよ。」
「高いな〜。」
「だね。あっ!」
「何?」
「真理の後ろの観覧車のカップルがキスしてた。」
「まぁ、カップルなんだからいいんじゃない?」
「また!」
「昼間からお熱いね〜。」
するとヒロが横に移動してきた。
「何?ヒロもしたいの?」
「デートなんだし、いいじゃん?」
「まぁ…。」
ヒロの方を少し向きを変え目を閉じると、少し長めのキスしてきた。この間のような照れはないようだ。
「今度はそっちからしてきてよ。」
「気がむいたらね。」
「そうじゃなくて今!」
「今〜?」
「そう。」
まったく〜、しょうがないな〜と思いつつ軽くキスした。
「元自分に自分からするって変な感じじゃない?」
「まぁ…、そうだね。」
「この先永遠に戻らなかったら、ずっとこの感覚なんだよ。」
「そうかな?ずっとこのままだったら、昔から…、産まれた時から今の性別だったって錯覚するんじゃない?」
「何年たったら、そう思うのかな?」
「どうだろね?ウエディングドレス着たら思うかもね。」
「1年ないじゃん。」
「子供が出来て成人したら思うかもよ。」
「20年後?もう60じゃん。」
「60?」
「真理が高校卒業して専門学校2年行って、そこで子供仕込んだら約4年でしょ。」
今が38才だから、62才か。世間的にはお爺さんだ。 |