63 春?
真理の母親が昼間店に顔を出したらしい。不動産屋との手続きも終り、挨拶に来たとの事だ。帰り際に『真理の事、本当によろしく頼みます。』と言って頭を下げていった母親をみて、涙を堪えるのに必死だったみたいだ。震災の被害はなかったらしく、妹の美雪も無事との事だ。
最近の亜希は話かけても何か上の空だ。
「ねぇ真理?」
「何?」
「最近の亜希って気持ち悪くない?」
「やっぱり?付き合い短い私でもそう思う。」
「私なんか幼稚園から知ってるけど、あんな亜希見た事ない。」
「練習の時も怒鳴らなくなったしね。」
「亜希が大きい声でプレーしてないと気合い入らないよね。」
「休み時間のたびにメールの問い合わせしてるし。典子がなんとかしなよ。」
「真理が亜希と田中さん引き合わせたんだから、真理がひっぱたいて気合い入れてきてよ。」
「叩くの?私が?」
「一発でも二発でもいいから。」
「やだよ。それより亜希が失恋したらどんな感じ?」
「彼氏いた事ないから、それは未知数かな…。」
「そっちの方が大変そうじゃない…。」
「わかんない。」
「私叩く方にする。」
「何それ?」
「典子は励ます方頼むよ。」
「なんか真理ずるくない?」
「一緒に通学してるんでしょ。」
「そうだけど…。」
そんなボーッとしてる亜希にボールが当たった。逆のハーフコートで練習中の男子部からボールが飛んできたのだ。しかも見事な顔面キャッチ。みんなが心配して亜希の回りに集まりだした。男子部の女子マネージャーがティッシュを持って行った。どうやら鼻血を出しているみたいだ。私も典子と様子を見に行く事にした。
「亜希平気?」
「ダメみたい…。」
「鼻曲がったんじゃない?ぶつけた子に責任とってもらいなね。」
「嘘?曲がった?」
「亜希じっとしてて。」
マネージャーに怒られてる。女子部にマネージャーはいない。
何とか立ち上がり、マネージャーとぶつけたらしき男子が付き添って保健室に向かった。
「亜希重症だね。」
「大丈夫でしょ。」
「恋の病の話。」
「確かにそっちは重症だ。」
「山下先輩に頼んでよ。」
「食事会?」
「じゃなくて田中さんと亜希の事。」
「一応言っておく。」
「ちゃんと分かってる?」
「突き放せでしょ?」
「逆!ちゃんと亜希の事考えてあげる様に話してあげて!」
恋愛に発展するしないはまだまだ先の話だ。私は発展しないと思う。 |