6 顔合わせ
「進藤さん!」
「よう早かったな。」
「話あるって?」
「ちょっと奥のテーブル座って待ってろ。真理。悪いけど皿洗っといてくれ。」
「はい。マスター。」
「幸太話ってな…。」
「ちょっと今マスターって言わなかった?」
「気のせいだよ。」
変なとこだけ敏感だ。
愛子は幸太が大学に行く事を希望している。その話をしたあと、モデルの仕事の話をした。男だから大変だけど、うまくいけば自分で大学の学費だって稼げる…。全部理解した上でやってみる気ないか聞いてみた。
「やりたい。」
「幸太。お前が生まれた時の話をする。」
その話は何度も喋ってる。
「お前のために健二は大学を辞めた。愛子はそれを自分が『産む』って言ったせいだと、まだ自分を責めてる。」
「…。」
「だから幸太には、高校だけじゃなく大学に行かせたいんだ。」
「知ってる…。」
「だから勉強もすると誓えるな。」
「やるさ。」
「信じてるからな。」
頷いている。
「今度の土曜空けといてくれ。」
「分かった。」
「マスターすごいね。芸能事務所とコネあるんだ。」
「真理の姉ちゃんがいた事務所さ。」
「もしかして、マスターもお姉ちゃんのファンだったとか?」
間違いなく一番のファンだ。
「まぁね。」
「私似てる?」
「あぁ…。」
「じゃ私も芸能人になれたりして…。」
「なりたいのか?」
「いや無理!人前で水着になって、セクシーポーズなんて出来ない。普通のお嫁さんで十分!」
「それがいい。」
「ところで進藤さん俺ってモデルじゃ小さくない?」
「将来役者転向とかあるかもしれないから大丈夫さ。回りの女優も小さいから、幸太くらいで十分さ。何センチ?」
「175。」
「それで十分だよ。」
「そうなんだ。」
自分で生活出来る分だけでもいいから、頑張って欲しかった。
土曜日に栗原と山桃花で顔合わせをさせ、月曜には事務所で社長と面接する事になった。
「進藤さん。」
「はい。」
「幸太くんかっこよく成長しましたね。」
「中身がまだガキでね。よろしくお願いします。」
「愛子の息子だもん強い子ですよ。それにしても子供の成長は早いですね。」
「確かに…、栗原が健二と愛子の披露宴でスピーチしたのが、ついこの間のように感じるけどね。」
「えっ?私がスピーチしたこと覚えてる人なんていないですよ。進藤さんくらいです。」
いい結婚式だった。 |