44 オーナー
愛子は昼の仕事が終わると直接帰ってくるようになった。バイト先だった居酒屋の再開のメドがつかないみたいだ。純は彼氏と飲んで帰ってくるらしい。
「ねぇ真理。」
「何?」
「広志くん遅いね。」
「片付け手間取ってるのかな?」
「広志くんが?そんなわけないでしょ!先食べる?」
「私は待つ。愛子さん先食べて。」
「だったら私も待つよ。」
「電話してみようか?」
「うん。」
ちょっと心配になったので、部屋に置いてきた携帯で電話する事にした。
「今どこ?」
「店だよ。」
「閉めてないの?」
「店はとりあえず閉めたけどお客さんが1人いて…。」
「誰?知ってる人?」
「恵理さん。」
「恵理さん?」
「昼間からビール頼んでて…。酔っ払ってカウンターで寝ちゃってる。」
「マジ?浅野くんの携帯に電話して迎えきてもらいな!」
「番号は?」
「携帯に入ってる。」
「わかった。」
「決まったら電話してよ。時間かかりそうなら行くから。」
「うん。ありがと。」
そう言って電話を切り、居間へと戻った。
「時間かかりそうだから先に食べよう。」
「何かあったの?」
「恵理さんが店で酔い潰れたらしい。」
「恵理さん?」
「レッジーナの娘さん。」
「あ〜、娘さんっていうか今はオーナーじゃん。」
そうだった。
「なんかあったかな?」
「旦那さんの浮気じゃない?」
「浅野さん真面目そうな人だったけどな〜。」
「そう?」
「まぁいいや食べよ。」
愛子は健二と結婚する前に料理した事がなく、結婚当初はお世辞にも上手いと言えなかった。でも主婦を20年近くやっていると、さすがに上達してる。
「多分レッジーナのラストオーダーの後で迎えにくるから、10時近くになっちゃうよ。」
「あらら。」
「食べたらちょっと行ってくるね。」
「何?恵理さんの事襲っちゃうか心配?」
「心配…。って、そんなわけないじゃん!そうじゃなくて…、」
「真理、若い子が夜出歩くもんじゃないわよ!」
「若い子って…。」
「広志くんなら心配ないって!」
「うっ、うん…。」
愛子にとって真理はまだまだ子供のようだ。そこに電話がかかってきた。
「広志くん?」
「うん。」
液晶には広志と表示されている。
「もしもし。」
「連絡ついたよ。」
「うん。なんだって?」
「すぐ来るって。」
「あっ、そう…。行かなくて平気?」
「大丈夫!」
「わかった。気をつけて帰ってきてね。」
「おう。」 |