40 顧問
翌日、バスケ部の練習を体育館に覗きに行くと、人数は少ないが活気よく声を出している。まずは体育教官室に顔を出す。そこには15年振りにこの学校に戻ってきた青木先生がいた。
「失礼します。」
「どうぞ。あら深谷さん、どうしたの?」
「えーとバスケ部の顧問がどなたか聞きたくて…。」
「今年から私の予定よ。」
「そうなんですか?」
「今から入るの?」
「ダメですか?」
「ダメじゃないけど経験は?」
「自慢じゃないけど運動音痴です。」
「そう…。まぁいいでしょ。」
「よろしくお願いします。」
「はい、よろしく。今日は?見学して行く?」
「いえ、参加するつもりで着替え持ってきました。」
「あら、やる気ねぇ。」
「はい。」
「じゃ、そこの更衣室使っていいわよ。」
「お借りします。」
着替えといっても体育の授業で使う短パンに半袖にジャージだ。靴に至っては体育館履きである。
「バッシュはないの?」
「近いうち買ってきます。」
「サイズいくつ?」
「23です。」
「私のお古でよければ貸すわよ。」
「あっ、ありがとうございます。」
そこにバスケ部の子らしき女の子が一人入ってきた。どこかで見た顔だ。
「失礼します。」
「どうぞ。」
「長谷川です。」
私の前の席の長谷川美紀だ。
「はじめまして、今年から女子部の顧問をする青木です。」
「部長の長谷川です。よろしくお願いします。」
「早速なんだけど、今日はいつも通りの練習メニューをこなしてもらって、変えるものがあれば明日以降相談しながらメニューを変えましょう。」
「はい。」
「それと、深谷さんと面識ある?」
「はぁ…、今年から同じクラスみたいです。」
「バスケやりたいみたいだから、面倒みてあげてね。」
「えっ、あっはい。」
「よろしく。」
「じゃ練習見させてもらおうかな。」
「はい。」
と3人で体育館に入っていった。先生は簡単な挨拶を済ませ、ステージの上に移動しパイプ椅子に腰掛けた。挨拶の時に私の紹介もあったが緊張する間もなく終わってしまった。
練習は再開されているが、私はその横でストレッチをしている。
「深谷さん。ボール持って上がってきて。」
ステージ上の先生に呼ばれた。何だろうと思ったがパスの練習相手をしてくれるようだ。久しぶりの感触に楽しくなってきた。
「とても運動音痴には思えないわね。」
これには笑うしかなかった。 |