4 約束
健二は、幸太が17になるまでもたなかった。結局俺が最後に会ったのは、『愛子と純ちゃんの事を頼む。』と言われた日だ。
「教え子の葬式に出るのは辛いわね…。」
青木先生に会うのは、桃子の葬式以来だ。
「先生今度ゆっくりメシでも食いに行きましょう。」
「楽しみにしてる。年とると楽しみが減っちゃって…。あんたも早く結婚しなさい。」
「先生だって独身じゃないですか。」
「そうね。どこで間違ったのかしら?」
50過ぎると喋りにも余裕がある。
「栗原とか新井覚えてます?」
「栗原は私が教えた子の中で一番バスケが上手だったわ。」
「いると思うので、控え室顔出してみてください。色々の手伝ってるはずなんで…。」
「行ってみる。」
栗原には俺も話がある。
葬式にはレッジーナの奥さんも来ていた。愛子の母親が昔パートしていたからだ。店は浅野くんが娘の恵理さんと結婚して継いでいる。浅野くんはたまにコーヒーを飲みにきて、嫁とお義母さんの愚痴をこぼしていくのだ。恵理さんも別で来て、『進藤くんと結婚したかった!すればよかった!』などと愚痴るのだ。二人ともいいお客だ…。
もう一人葬式に参加してる、うちの常連がいる。久美だ。こっちも質が悪い。なんか結婚相手として狙われてる気がする。
葬式が終わったあとで、栗原を店に呼んで話をしてみた。店は臨時休業中だ。
話してみると意外と反応がよく、あとは本人のやる気次第だ。愛子の説得はなんとかなる。
健二達の結婚式の時にフリーターだった栗原が、デスクマネージャーをやってる。ただこいつも結婚してない…。まったく桃子の回りは不幸な女が多い…。栗原は真理もモデルにしたいと言ってたが、『それは…、桃子を思い出して辛い…。ただ本人がどうしてもと言った時は栗原に頼むから…。』と断った。
身近に置いておいて、辛いと言える立場じゃないかもしれない。でも真理が嫁に行くその日まで、見守ってやりたいのだ。栗原には後日連絡する事にして、電話番号を交換し、名刺をもらって別れた。
俺は桃子の『将来何になりたかったの?』の問いに、『夫婦二人でレッジーナより小さな店やりたい。』と答えた。約束したわけじゃない…。でも俺にとってはそれは約束であり、生きる支えであった。これを目標にし立ち直れたのだ。
愛子はすぐに立ち直れるだろうか? |