38 覚悟
風呂からあがったヒロは憂鬱そうだった。
「男の人のアレって、すごく気持ち悪いね。」
「そう?生まれてから付いてるから、そんな事思った事ないけど。」
「すごい違和感。それに朝立ちってやつ?なんなのあれ?」
「健康な男の生理現象さ。そのうち慣れるよ。」
「そのうちね…。」
「なぁ…。」
俺は迷っていた。入れ替わった経験がある事を話そうか、話すまいか…。
「何?」
「ずっとこのままだったらどうする?」
「ずっと…。」
「あぁ…。」
やや沈黙の後に、
「ヒロと一緒にいられるなら…。ヒロじゃないね、ずっと二人でいれるなら、頑張れるかな…。」
「いるさ。それにしても楽観的な言い方だな。」
「戻れるなら戻りたいけど…、」
「声でかいよ!」
「ゴメン…。」
「そこでなんだけどさ。」
「うん。」
「今のところ、本人に成り切るというか、今の体の生活を全うするっていうか、その本人の人生を、自分のものとしてやっていくしかないんじゃないかな?」
「本人の人生…。」
「戻れれば一番イイんだろうが…、なんていうか覚悟っていうか…。」
「覚悟…。じゃ、こっちは始めから進藤広志だったみたいな感じ?」
「まぁ、そんな感じかな…。」
「もう制服も着れないかもしれないって事か…。」
「まぁ…。」
「ウェディングドレスも着れないのかな…。」
『可能性がないわけじゃないだろ。』と言いかけたが、変に期待させるのは止めた。
「代わりに着て見せてやる。それにお姫様ダッコもさせてやる。」
「お姫様ダッコかぁ…。」
「その前に腰直さないとだけどな。」
「そうだ。」
そう言った瞬間、久々に笑えた。
「その前に戻れるといいな…。」
「そうだな…。」
プロポーズしたのが1ヶ月前なのに、嘘のような不思議な感じだ。
桃子と入れ替わってた事を話すのは、もう少し先延ばしにした。
「でも自分の事『真理』って呼ぶのすごく不思議。」
「慣れるさ。」
「慣れか…。」
「ところで、学校で仲良くしてる子はどんな感じだ。」
「そんなにいないかな…。」
「一人もか?」
「上辺だけかな…。4月の時に近くに座った子とは仲良くして、一緒にトイレ行ったり、お昼ご飯を食べたり。親友って呼べる子はいないな…。」
「だったら新しく友達作ってもいいよな?」
「いいけど、変なのと付き合わないでよね。」
「わかってるって。」 |