33 もう一人の家族
さすがに1時間歩くと疲れる。店に入って電気のスイッチをオンにするがダメだった。水とガスは平気なのに…。8時までには時間があるので、待とうかと思ったが、こっちからかけてみる。一般電話や携帯からの発信は制限されてるが、着信の制限はないだろう。
「幸太?」
「おう。あれ?携帯…?」
「着信はいいみたい。栗原さんどう?」
「あぁ、平気だよ。うちのお袋は?」
「幸太にかける前に携帯鳴らしたけど出ない。」
「鳴るのか?」
「鳴る。」
確かに鳴るのに出ないのはおかしい…。マナーモードで気付かないのか?
「そうか…。進藤さんは?」
「家にいる。急に重い荷物持ったから腰痛めたみたい。」
「真理ん家片付けた時は平気だったのに?」
「そう。しばらく家の片付けだから、店にはしばらく来ないけど。」
「その頃には携帯使えるようになってるだろ。」
「そうだね。でも元旦みたいにつながらないかもよ。」
「そうか…。」
「電池の無駄使いしないように。」
「そういえば充電器持って無いや。」
そんな会話をして電話を切った。
懐中電灯をつけながら、冷蔵庫の食材をチェックするが、このまま捨てるのはもったいな。そこで調理して体育館に持っていくことにした。とりあえず鳥肉を唐揚げにする。まずはボウルに調味料を入れ鳥肉を付け込む。豚肉をどうするか迷ってるとドアをノックする音が聞こえる。誰だろ?ガラスから見える姿は女性みたいだ。外が暗くて誰か分からない。
「あっ!」
懐中電灯をドアの方に向けながら近づくと、知ってる顔がそこに立っている。ドアを開けたら、冷えきった体に抱きつかれた。
「苦しいよ。」
「ゴメン。ついうれしくなって…、」
目に涙を浮かべてる。
「どこに居たの?連絡付かなくてみんな心配したんだから…。」
「バイトしてた居酒屋さん建物古くて、今朝行ったら全壊してて…。財布から携帯から瓦礫の中なの。」
確かに居酒屋さんのエプロンをしている。
「何回鳴らしても出ないはずだ。」
「携帯使えるようになったの?」
「着信はね。そこの電話からならかかるよ。幸太に電話する?」
「あの子大丈夫だったの?」
「栗原さんがケガしたみたいだけど。」
「そう…。純と広志くんは?」
「純ちゃん高校でボランティア中で、もうたぶん家かな?ヒロは家にいる。」
「よかったみんな無事で…。ところで真理は何してるの?」 |