32 抱擁
都合のいい事に純の事は二人とも『純ちゃん』と呼んでいた。
「お姉ちゃんと連絡は?」
ヒロが首を横に振る。
「そう…。」
まだ腰のあたりに手をまわしてる純がこっちをみて、慌てて手を解いた。ちょっと動揺してる。
「真理ちゃんゴメンね進藤さんに抱きついたりして…。」
「う…、大丈夫。」
コメントしずらい。
「え〜と、これから家の中を片付けてくるけど、純ちゃんはまだ手伝いあるのか?」
「おにぎり配るくらいかな。」
「分かった。終わったら家に来い。あと幸太は連絡あって無事だから心配すんな!」
普段の俺より男前だ。
「よかった…。終わったらすぐ行くね。」
家に向かう途中に純の事をどう話せばいいか迷った。
「純ちゃんと付き合ってた?」
逆に質問された。答えに迷う。付き合ってた事にした方が楽か?それとも本当の事を言うべきか?
「どうなの?」
「付き合ってはない…。」
「てはない?」
「昔の話だからあまり気にしないで聞いてよ。」
頷いている。
「昔、付き合ってはないが、エッチはしたことがある。」
「何それ?」
「昔の話だ。」
「…。」
「38年生きてきた。俺だって色々あるさ。」
「好きなの?」
「だったかもしれない…。」
「そう…。」
「今は真理の事しか考えてない…。入れ替わってしまったから、複雑だけど…。」
「その…、私たちは結婚するんだよね。」
「だな…。」
「隠し事ほかにはない?」
「隠してたわけじゃない。過去の事だ。恋愛もせず38年も童貞なわけないだろ。」
「そうだけど…。知ってたら、一緒に住まなかったかもしれない…。」
いつしか家の前に着いていた。
「悪かった。色々あるんだよ俺だって…。」
「わかった…、とりあえず入ろうよ。」
頭では理解してくれてるだろう。でも感情的には押さえきれないようだ。
中に入り片付けの役割を分担し作業にかかった。まずは玄関を頼み、こっちはキッチンに取り掛かったが、食器は結構割れている。途中から純も片付けに参加し、なんとか夕方までに一階は片付いた。重たいものを持ったせいか、ヒロは腰を押さえ痛たがっている。
「そろそろ店に行ってくるね。」
「何しに?」
「幸太からの電話が店の電話にかかってくるから。」
「そう…。私は一度夕飯の手伝いに学校に戻るね。」
ヒロは家で休ませ、店に向かい歩きだした。 |