メビウス ループ(30/179)PDFで表示縦書き表示RDF


メビウス ループ
作:優楽



30 朝食2


 幸太は、『他のみんなは?』と聞いてきた。
「純ちゃんは高校の体育館に避難したはず、愛子さんは連絡ない…。」
「そうか、今日はどうするの?」
「家見てくる。」
「進藤さんと二人でか?」
「うん。」
「代わってくれ!」
「今トイレ。」
 実際はカウンターでメシを食ってる。
「お前残ってそこで電話番やれよ。」
 確かに今連絡取れるのは、この店舗用の電話だけだ。幸太は病院の公衆電話らしい。
「ちょっと待って今代わる。」
 受話器を押さえて、
「幸太からだ。『夕方には帰るから夜8時以降に電話してこい。』といって励まして適当に切るんだ。」
「分かった。」
 真理は俺になるのが、昨日より上達してる。うまく話して電話を切った。
「なんて言ってた?」
「『真理を電話番に店に残そう。』ってうるさかったから、『店壊れて下敷きになったら後悔しないのか?』って言ったら、分かってくれたみたい。」
「そうか。」
「なんか私と…、私の時と喋る態度がと随分違うからびっくりした。」
「3人から頼られるから覚悟しとけ。俺がいない時はお前が判断して答えるんだぞ。」
「なんか責任重大だね。」
「俺の気持ちになってな。」
「分かった…。やっぱり私が『俺』って言ってるの変だから止めてよ。」
「言ってた?」
「うん…。二人の時から意識しようよ?」
 確かにそうだ。たとえば普段の俺は、愛子を呼び捨てにしてたが、真理の体の今では不自然だ。『愛子さん』と呼称もいちいち変えなくてはならない。
「幸太との電話で自信ついた?」
「そうじゃないけど、その方がよくない?」
「そうだな。」
「『そうだね。』でしょ!」
「分かったよ、『ヒロ。』」
「まぁ…、いいか…。」
「何が不満なんだよ?」
「いや…、不満…、これって、いつか戻れるよね?」
「分からない。」
 桃子の時とケースが違う。同じパターンなら、同じショックで戻る可能性はある。でも今回の場合は事故じゃなく自然災害だ。震災に限られるかもしれない。
「…。嘘でもいいから、戻れるって言ってよ。」
「戻れるかもしれない。けど、俺には…、私には、それをボタン一つで切り替えられる力はない。」
「…。そうだけど…。」
「それも一緒に考えていこう。」
「うん。」
 俺達二人は、歩いて家を目指した。二人ともスニーカーだ。ヒールの高い靴じゃなくてよかった。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう