3 健二
真理は桃子に似てる…。でも、間違いを起こす事はないだろう。
健二を見舞いに行ったら、真理をバイトに使うのを反対された。店の名前に『桃』の字を入れた時も反対された。『気持ちは分かるが、一生結婚しないつもりか?』と怒られたものだ。
「広志、お願いしたい事があるんだ…。」
「なんだよ改まって、気持ち悪いな…。」
「俺が死んだら、愛子と純ちゃんの事頼みたいんだ。」
「お前、ふざけた事言ってるとぶっ飛ばすぞ。」
「いや、俺はもう長くねぇ…。」
「…。」
「うちもあいつん家も、もう両親はいない…。兄貴も熊本だし…、幸太は男だからなんとかなるだろうけど…。」
「そんな事言うな、俺より早死にしたら承知しねえからな…。」
健二が長くない事は愛子から聞いて知ってた。それでもそう言わずにはいられなかった。
「無理言うな。告知希望してたんだ。愛子に聞いたよ。広志にも相談したって言ってたぞ。」
「…。」
「あいつらの事頼むよ。頼めるのお前しかいねーんだよ。」
「…。」
「『うん。』って言ってくれよ。」
「あぁ‥、任せろ…。」
涙が出ていた。
「泣くなよ。まだ死んでねぇぞ。」
「うるせぇよ。」
「お前は不死身だからな。2回とも大事故だったじゃねえか。」
「2回目は見てないだろ…。」
「けどお前は足がついてる…。運が強い。任せたからな。」
「しつこいよ。」
「念を押しときたいんだ。出来れば何回でも聞きたい。」
「分かった。その未亡人は俺のカミサンにしてやる。」
冗談で言ったつもりが、軽く笑って、
「そのくらい言ってくれたら安心だ。」
「冗談だよ。」
「分かってる…、それでもいいさ。同じ事だ。」
「あの世でヤキモチ妬くんじゃねぇよ。」
「あの世で深谷と仲良くするさ…。」
「ふざけんな。」
「懐かしいな。」
「思い出話をするのは、年食った証拠さ。」
「俺はもう年とらねぇから平気だ。」
「口だけは達者だ。」
「当たり前だ。親父さんは元気か?」
「らしいよ。老人ホームで彼女が出来たって、電話で自慢してたよ。」
「羨ましい話だ。広志に見習わせたいくらいだな。」
「まったく…。」
「なぁ広志…。純ちゃんとじゃ考えられないか?」
「また、その話か。」
「ダメか…。」
「また来る。夕方から店開けないと生活出来ないからな…。」
「呼んで悪かった。」
「いいさ。」 |