16 合否
あっと言う間に幸太が高校を卒業する日が間近となった。受験して合格したが、大学には進まずモデルとタレントの仕事を選んだ。デスクマネージャーの栗原のおかげで、雑誌やテレビにと結構目にする機会が増えた。
「進藤さん、引っ越す前にお願いがあるんだけど。」
「無茶言わない限り聞いてやるぞ。」
「たいした事じゃないよ。」
「俺とお前じゃ物差しが違うよ。聞いてみない事には…、で、なんだ?」
「俺もたまに帰ってくるけど、お袋とおばさんの事頼みます。」
「へっ、そんなの去年お前の親父に頼まれてるからな…。今更だ。」
「親父が…。」
「まぁ…、約束は守る方だから心配すんな。」
「よかった。お願いします。あと欲しいものがあって…。」
「おねだりかよ。ちょっとは大人になったかと思えば…。何が欲しい?」
「茶の間にあるギターもらってっていいかな?」
「あれは…。」
あれは桃子が買ったギターだった。俺は弾けない…。
「あれは、桃子の形見みたいなものだ…。大事に使えよ。」
「いいの?」
「たまにお前が弾いてて羨ましかったよ。大事にしろ。」
「うん。」
「あと…、」
「まだあんのかよ。」
少し幸太が顔を寄せ、小声になった。
「真理の事幸せにしてやってくれよ。」
「この野郎が生意気言ってんじゃねぇよ。」
「真理に聞こえるだろ!」
真理を見たが会話は聞こえてないようだ。
「あいつ…、淋しがりなんだよ。」
「知ってるよ。」
「それならいい…。あと借金俺が返すから。」
「それは、お前がお母さん達の住む家を建ててやってからでいいぞ!」
「それじゃいつまでたっても返済出来ないじゃんよ。」
「お前は目標が小っちぇんだよ。そんなんじゃ本当に借金なんて返せないからな!」
「…。わかったよ。」
「あとアドバイスだ!」
「おう!」
「出る杭は打たれるから、ほどほどにやれば長く頑張れるはずさ。」
「頑張るよ。」
「そっちで食べるの?カウンターにしない?」
「カウンター行くよ!」
「じゃ来てよ。」
「おし食うか幸太!」
「はい。」
「おまたせ〜。カルボナーラ真理の愛情入り。」
「真理、受け皿取ってくれ。」
「はい。」
真理は少しずつ取り分け俺と幸太に渡した。
「あとは自分で取ってね〜。」
食べてみたけど悪くない。
「どう?」
「俺は美味いと思う。」
「マスターは?」
「まぁいいだろ。」
真理はうれしそうだ。 |