10 本気
鏡の中の真理は、一瞬俺の頭を混乱させた。『桃子』と口にでそうになった。
「背中洗ってあげる。」
「お前な〜。」
「そのお前って響きいいかも。」
「怒るぞ。」
「家ではダーリンって呼ぶね。」
「真理ふざけすぎだ。」
「えっ…。」
「スポンジよこせ。」
「後見人だかなんだか知らないけど、そんなの関係ないんだから…。」
「好きでいてくれる事には感謝してる。でも俺は真理の親父さんとも約束してるわけ!解る?」
「そんな大人の都合なんか関係ない…。」
「真理まだ3月に16才になったばかりだろ。」
「絶対私の事振り向かせてみせるから。」
真理が風呂から出ていった。俺が風呂から出た時にはすで家にいなかった。
「昨日から今朝にかけて、そんな事があったんだ…。」
「純ちゃんどう思う?若い子特有の恋愛ハシカだよな?」
「進藤さん押しに弱いタイプ?」
「いや…、」
「誰にでもやさしくするからですよ…、自業自得。」
「そんな事言わないで助けてよ。」
「私と結婚すれば問題解決じゃない。」
「純ちゃんまで、そんな事言って…。」
「冗談ですよ。」
「幸太とはどうかな?あいつなら安心なんだけど…。」
「現状だと私と進藤さんが付き合う以上に厳しい。」
「そうか…。」
「そこは納得するんだ?」
「ん?」
「なんでもない…。やっぱり真理にもってかれるのか。」
「もってかれる。って…。そうゆう事じゃなくて…。」
「いや、進藤さんって、真理がここに戻ってきてから変わりましたよ。」
「変わった?」
「笑うようになった。」
「人を鉄仮面みたいに言わないでよ…。」
「お母さんが真理を連れて来た時は固まってましたよ。鉄の顔でした。」
真理に桃子の面影があったからだ。年を重ねる事に似てくる。
「その後は笑顔が絶えなくなったし…。」
「そうかな…。」
「真理は、友達もいなかったし、お姉ちゃんも働きながら看病あったし、よくここに来てたよね。」
「あぁ、よく控え室で寝てた。」
「始めは幸太とも喋らなかったしね。」
「7,8年振りに会ったんだから当然だよ。」
「進藤さん一つ言っておきますけど…、真理本気ですよ。」
「…。」
「バイトだって、毎日いれるからでしょ。あの子お金じゃないのよ。ここにいる理由が欲しいのよ。」
真理が家族に飢えてるのはわかる。でも俺は、父親の立場側だと言い聞かせてた。
|