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どくんどくん2 〜あの空の向こう〜
作: reY



第5話(第3回H講座)


ゆうじと大野君の歌に酔いしれたその夜。

帰り際には、雪がチラついていた。

胸の奥から込み上げる感動で体が火照っていた。

ゆうじと大野君の優しさ、友情に僕らは涙した。


ユキのお父さんが、ゆうじと大野君を車で送ってくれた。



僕らは、駅までの道のりの間、寒さも忘れていたようだ。


「俺、あいつらの歌聞くと、すっげー切なくなるんだ。」

シンは、久しぶりに会うユミちゃんと並んで歩く。

やっぱりお似合いだな・・と、懐かしい記憶がよみがえる。

何かが少し違ったら、2人は付き合っていただろう。


「うん。高校を思い出すよね。な〜んか、高校に戻りたいよね。今は自由すぎて疲れる。」

ユミちゃんの言いたいことがよくわかった。

高校を卒業し、僕らは自由を手にした。

勉強したくなかったら、しなくていい。

やりたいことがあるならそれをやればいい。

自由ってことは、自分自身で全部責任取るってことなんだ。

いろんな決断を自分でするんだ。

時間もある。

さぼりたければいくらでもさぼればいい。

でも、その分ツケは回ってくる。

やる気のないヤツにうるさく言ってくれる先生はもういない。

学ランが短いと怒鳴ってくれる先生もいない。

掃除の時間もない。

当番もない。

掃除のおばさんが掃除してくれたトイレで用を足す僕ら。

汚しても、何も感じなくなる僕ら。

掃除のおばさんに対する態度は、自分で考える。

態度が悪い僕らを叱ってくれる先生は・・・もういないんだ。


僕らの未来は、僕らで選んでゆくんだ。


「どした〜?しんみりしちゃって!ハルっぺ。お前だけユキちゃんとこ泊まれば良かったのに。」

後ろから僕に抱き付いてきた水野さんは、あったかいホットオーレを僕にくれた。

「どう?最近。もう俺のアドバイスはいらないくらい大人になったか?ハルっぺも・・」

「まだまだですよ。僕は永遠に水野さんに助けてもらいたい・・。」

「お前ら、初めて同士だったよな?俺、そのことがちょっと心配なんだ。」

初めて同士ってなんかいい感じじゃないの?

「え?初めて同士って何がダメなの?下手ってこと?」

僕の馬鹿な質問に横で笑い出すみずきさん。

「お前もいつかわかるよ。このまま、お前らに結婚して欲しいって願ってる。でも、そうなるとお互いに生涯一人とだけってことになるよな?お前も浮気するタイプじゃね〜しさ。」

「生涯一人ってめっちゃんこかっこいくない?」

僕の一言一言に笑ってるみずきさんも頷いてくれた。

「うんうん。私もそう思うんだけど。私も亮ちゃんだけだから。」

亮ちゃんっていうのは水野さんのこと。

水野亮。僕の師匠の名前。エロ師匠だけどね。

「俺はみずきと付き合う前に、何人か彼女がいたから、もうこれからの人生みずきだけって思う。でも、みずきにとっては俺しか知らないわけじゃん?いつか、他の男ってどんなのかしら?なんて思っちゃう可能性もあるわけよ。それが俺は心配なんだ。」

奥が深い。今日の講座もすごく濃いな・・。

「そんなこと思わないって言ってるのに。私は亮ちゃん以外の男に興味ないもん。これからも一生ね。」

「そうか〜〜??照れるな〜。みずきぃ〜今日も俺頑張っちゃおうかな!!」

みずきさんにくっつく水野さんに、逃げるみずきさん。

「ばか!!ほんとにばかなんだから!」


「僕もいつかそんな不安が来るのかな。そんなこと思わせないように水野さんみたいにいい男にならなきゃな。」

「ふふふ。よくわかってるじゃないか・・。そうなんだよ。その不安が、より男を頑張らせるのかもしれないから、良いのかもな。今は、お前も大事に大事に愛してあげてると思う。でも、何年もたって、結婚もしたらだんだん手抜きになってくいるのが世の定め・・・そこで、彼女は思うんだ。あれ?なんか昔と違う・・。もしかして、私に飽きたのかしら?ってね。同じように彼女も不安になるかもしれない。私以外の女の人はどんなんだろうって考えてたらどうしよう?って。でも大体そう思う時ってお互い同じ時期だと俺は思う。どこか、2人の関係に溝ができてきたりしたら要注意!」

す・すごいこの人・・・!

「ってゆうか、水野さんって一体何者ですか?本でも出したらどうですか?」

「ははは、これはお前にだけの講座なの。かわいいお前にだけ!言っといてやる!お前は男だ。いつか必ず、他の女とやりたいって思う日が来る!」

なんてハッキリ言うんだ・・。
僕にはありえない。


「絶対ないです!!!僕は一生ユキとだけで満足です。」

「そういうハルっぺの純粋なとこ好きだな。そう思ってるうちは大丈夫。ちょっと脅かしてみただけだよ。男って言うのは生まれつきそういう性質があるってこと。特にお前はユキちゃんとだけだからさ。もし、ユキちゃんに男の影がチラついたりしたときにやけ起こしたりしそうで心配だったんだ。愛のないHは、後悔するぜ〜〜!」

「ちょっと!!亮ちゃんそんな経験あるの?」

みずきさんが水野さんの腕をつかむ。

「ないない!俺真面目だもん。俺は、ある程度経験してきたからみずきが一番だって思う。Hもなかなか重要な結婚の条件なんだから。」

「え??何それ?相性とか?」

また爆笑する2人。

「相性って何のだよ?ま、そういう相性ではなくて2人の考え方かな。例えば、俺みたいに毎日でもOKって男と、Hはキライなんですって女の人が結婚したら、お互い無理してることになる。そういう気分になったから、するっていう本来の俺の考えを抑えなきゃならないだろ?女の人の方も、本当はしたくないけどかわいそうだし・・みたいな。そんなんじゃ、夫婦とは言えないと俺は思うんだ。みずきは俺が調教しちゃったのかもしれないけど、毎日俺がしたいって言っても笑顔で受け入れてくれる女なんだ。」

「ちょっと!そんなこと言わないでよ。エロ女みたいじゃん!」

「だってエロじゃん、お前も。」

2人は今夜も・・・ふふふ。僕も早く一緒になりたいと強く思った。

「なるほど・・・じゃあ僕らも相性バッチリだ。僕がしたいときはユキもしたいから。」

「大人になったね〜〜。俺は嬉しいよ。俺の言ったこと、心の片隅にでも置いといて。決して、手抜きにならないこと!毎日毎日100%の力を出す必要はないけど、ここっていう時は最初のHを思い出して、相手を不安にさせないようにな!」

「亮ちゃん・・・そんなこと思ってくれてたんだ。やっぱり結婚してよかった。」

手をつないだ2人は、見つめあい、照れくさそうに笑ってた。

「あ、やべ。俺ビンビンしてきた・・!!!」

「ばか!せっかく惚れ直したとこだったのに!」


シンはユミちゃんと真剣な表情で話していた。

僕は一人で電車に乗り、寂しい部屋へ帰った。

『おかえり』を言ってくれる家族はこの部屋にはいない。

さっきまでみんなといたせいで、なんだか寂しくなってきた。

真っ暗な部屋に帰るって、寂しいものだ。

僕の帰りを待つ人はいない。


もし、ユキが待っていてくれたら・・・。

そう考えると、顔がニヤける。

いつか、そんな日が来ることを僕ははっきりと感じながら毎日を過ごす。


ユキの『おかえり』、早く聞きたいな。

おかえりのチューをしてくれるユキの姿想像しながら、僕は冷たいフトンにもぐり込んだ。

今日、水野さんが言ってたことが頭の中でぐるぐると回る。


そんなことは絶対ない!そう自分自身に強く言い聞かせているようだった。

怖かった。

僕らの関係がいつかそんな風に、そこらへんにある愛に変わってしまうことが・・・。














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