第29話:ヒットマン
阿笠博士が珍しく庭の掃除をしていると、
「ぎゃああああああ!」
と、大きな悲鳴をあげた。
その悲鳴を学校帰りにたまたま通り掛かった綾が聞き付け、阿笠邸に入って来た。
「どうかしましたか?」
「ひ、人が、人が死んでるんじゃ!」
と、幽霊でも見た様な顔で、茂みを指差す阿笠。仏さんが茂みに隠れている様に横たわっている。
「お爺さん、警察に電話して下さい。」
「よし分かった。」
と、家の中に入って行った。
「歳じゃないぞい!」
と、文句を言いながら。
日も暮れ掛かった頃、灰原は倉庫が立ち並ぶ港にいた。
ヒットマンを待って・・・。
(んっ、誰か来た!?)
人の気配を感じた灰原は、鞄を置いて素早く身を隠した。
するとその鞄に近寄る人影。
その人影は辺りを見回すと鞄を拾った。
奴がヒットマンに違いない。
灰原はそう思って、蝶ネクタイ型変声機を取り出した。
「お前がヒットマンか?」
その言葉は、変声機で新一の声になっていた。
「残念だが、お前の逃げ道は無い。」
その言葉に、ヒットマンと思われる男は、辺りを見回す。
「工藤 新一か。何処にいる?」
ヒットマンは問うが、答えは返って来ない。その代わりに、灰原が姿を現した。
「江戸川君は無事かしら?」
「その声は電話の餓鬼だな?」
その問いに頷く灰原。
ヒットマンはその灰原に、コナンが無事である事を伝える。
「無事で良かったわ。
所で、私が隠した女性を殺したのって貴方かしら?」
「ああ。」
「あの人、手掛りを残していたわ。」
「何?」
「貴方の袖のボタン、左にはあるのに、右には無い・・・。あの人がボタンを握っていたわ。その袖のボタンをね。」
その言葉に、ヒットマンは袖を触ってみせる。
「!?」
「ついでに言っておくと、そのボタンはまだ被害者の手の中よ。
それより、早く江戸川君を解放してくれない?」
「それは出来ない。」
ヒットマンはそう言って、懐から拳銃を取り出した。
「何故なら、あの餓鬼には死んで貰うからだ。」
そう言って、横の倉庫の扉を開けるヒットマン。
「ついでだ、お前にもこいつと一緒に死んで貰う。こっちへ来い。」
灰原は両手をあげ、ヒットマンの前にやって来た。
(灰原!?)
灰原は、猿ぐつわをされ、両手、両足をしっかり縛られたコナンを倉庫の中に見付けた。
カチャッ
──銃口が灰原の頭に触れる。
「中に入れ。」
と、ヒットマン。
灰原はヒットマンに従い、倉庫に入って行く。
「コナンとか言ったか。
お前は俺が人を殺す所を見た。だから死んで貰う。
そしてお前・・・。」
と、灰原に銃口を向ける。
「灰原 哀。」
「お前は真実を知った。だから死んで貰う。」
コナン、灰原超ピーンチ!
その時突然、新一の声が聞こえて来た。
「俺の前で人殺しか?ヒットマン・・・いや、加山 充さん。」
しかしその声は、灰原の変声機では無かった。
そしてその声の主が顔を見せた。
「くっ、工藤 新一!?
(録音テープじゃなかったのか!?)」
と、驚く加山。
「そう言えばあんた、杯戸町で男性と話していたな。大方、被害者・・・──一ノ瀬 三樹の殺害についての依頼か何かだろ?」
「み、見ていたのか!?」
「いや、被害者の事辿っていたら、そう言う情報が得られただけだ。」
と、自慢気に言う新一。
「そうそう、あんたが殺した一ノ瀬 三樹が、俺の家の隣の阿笠邸で発見されたぜ。」
「見付かったのか。
まあ良い。俺には捕まらない自信があるからな。」
加山がそう言うと、加山の背後に数十人の警官が配置された。
「子供達を解放して貰おうか?」
すると加山、倉庫の中に入り、コナンと灰原を抱え、銃を付きつけて出て来た。
「動くとこいつらを殺す。」
その言葉に動きを封じられた新一と警官隊。
その時、灰原が加山に麻酔銃を撃った。
加山は一瞬で眠り、倒れてしまった。
こうして、コナンと灰原は解放され、ヒットマンこと加山 充は逮捕された。
めでたしで・・・ある。
因みに、この新一は、綾が変装した姿だと言う事が後に解った。 |