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お久しぶりです(-"-)
執筆自体が久しぶりなため、ただでさえ下手な文章がもっとひどいことになっております(ToT)

もっと早く更新するはずだったんだけどなぁ………
第二章 二つの選択肢
第三話:ギルド
 翌日、夜になっても目を覚まさなかったらしく、部屋から出てくる気配を見せなかったミズキをよほど疲れが溜まっていたのだろうとそっとしておいていたアリスは、昨夜の判断を悔いた。
 朝日が完全に姿を見せても未だに部屋から出てこない彼女を不審に思い部屋を覗いて見ると、息を荒くさせ魘されている姿が見えたのだ。慌てて駆けつけてみれば、高い発熱と通常ではない発汗量。その様子に慌てて宿の主人に医者の居場所を聞きに行き、偶然そこに居合わせた有名らしい薬師が診てやろうということになった。

「誰かと思ったら、かの有名な天才騎士様じゃないか」

 急いでアリスの案内でミズキの部屋に向かった薬師は、ベッドで魘される彼女を見て一瞬だけ驚きの表情を見せる。しかし、すぐ様表情を引き締めると、ミズキに近寄り診察を始めた。

「………ふむ。どうやら、かなり無理をしたようだな。だが、症状を見る限りただの風邪だから、安心するといい。これなら手持ちの薬で十分だ」

 少し離れたところから不安げにその様子を見ていたアリスは、薬師の言葉にホッとため息を吐く。

「……ありがとうございます」

 そう言って頭を下げた頭は、ハッとしたように顔を上げる。

「あの、お代は今すぐじゃないとだめですか?」

 いくら善意で診てくれたとしても、それにかかる薬の費用はただではないはず。一応数日分は凌げるお金はあるが、それだけでは払えるかどうかと言った額だ。
 それを計算し、やはり足りないと考えたアリスは今日中にそれなりの額を稼げる依頼をギルドから受けようと頭の隅で決心する。別に、そこまでミズキと関わらなくてもいいはずなのだが、どうしても放っておけないのだ。
 深く被ったフードから垣間見える可愛らしい顔が浮かべる真剣な表情を見た薬師は、可笑しそうに笑って言う。

「お代なんて気にしなくていいさ。見たところ、君にそんな余裕があるとは思えないし、君が払わなくてはいけないという訳でもないだろう」
「あっ………で、でも」
「それに、今から出す薬は元々近くの村に売りに行ったものの売れ残りでね。このまま店に持ち帰って誰かが買うのを待つより、今使う方がいいと思うだろう?」

 薬師の言葉に納得しかけたアリスだが、どうしても気になるのかしぶしぶながらと言った様子で小さく頷いた。

「まあ、何よりあの有名な騎士様に貸しを一つ作れるっていう下心も少しあるが」

 そう言っていたずらっぽく笑う薬師に、アリスは曖昧な笑みを浮かべる。そんなアリスの反応に薬師は小さく笑い、パンと両手を小気味良く鳴らした。

「さあ、まずは薬を飲ませよう。次いでに栄養剤も作るから、水を持ってきてくれないかな?」

 薬師の言葉でミズキの容態を思い出したアリスは、言われた通り急いで水を調達しに走る。薬師はそんな彼女の姿を微笑ましく見送った。










 お代は払わなくていい、そう言われてもやはりアリスは素直に納得出来なかった。
 殺しにかかった敵のはずなのに、そんなことなどなかったかのように自分に良くしてくれた彼女に恩返しでもしたくなったのだろう。
 おかしな話だ、とアリスはくすりと笑う。

 あの男には何の目的も明かされず拾われたが、言う通りに働き期待に応えてきたつもりだ。
 森で目覚めた時から胸を苛む虚無感は、相変わらず重く付きまとっている。この虚無感を埋められるかもしれないと期待してあの男に付いていき、必要とされることで僅ながらも幸せを感じてはいたが、結局は満たされないまま捨てられてしまった。

 もし、この虚無感が誰かに尽くすことで埋められるのなら、今後は彼女に尽してみるのもいいかもしれない。暗殺者である自分を必要としてくれるならの話ではあるが、そうなれば自分の身を捧げてみせよう。

 きっと、今回もそれに期待して彼女に恩返しをしようとしているのだから。

「………あ」

 そんな事を考えているうちにギルドに着いたようだ。
 アリスは深く被ったローブをずらすと、目の前の建物を見上げた。
 こうして見上げるのは二度目になるが、よく見れば細かいところに装飾が行き渡っていてなかなかにお洒落だ。周りの建物と比べると存在感も段違いであり、一人で入っていくのだと思うと少し尻込みしてしまう。
 アリスは二度深呼吸すると、ギルドの扉をくぐっていった。



 扉を潜ると一斉に視線が集まるのを感じた。深くローブを被った怪しい姿なのでここに来るまでの間も訝るような視線を浴びていたが、この場にいるほとんどが屈強な冒険者たちのせいか身に感じる威圧感が桁違いだ。
 とは言え、何人かの達人を相手にしてきたアリスにとっては一瞬呑まれそうになったとしてもその程度。すぐに周りなど気にならなくなったアリスは、早速頭の中でどのような依頼を受けるべきか考えながらカウンターに向かって歩いていく。

「冒険者ギルドへようこそ。ギルド証をお持ちですか?」

 昨日とは違う受付嬢が応対してくれたが、いかにも怪しいアリスの姿を見ても怪訝な表情などひとつも見せない。職業柄そういうのに慣れているのだろうが、誰を相手にしても笑顔を見せれるというのはすごい。
 アリスは昨日作ったばかりのギルド証を受付嬢に手渡し、どこかそわそわした様子で待つ。
 さっとギルド証を確認し終えた受付嬢は、カウンターの棚から依頼目録を取り出すとそれと一緒にギルド証をアリスに返す。

 ざっと見る限り、魔獣討伐系の依頼が多い。一応対魔獣の訓練を受けてはいるが、手持ちの武器はナイフ一本だけだ。魔獣を相手にするのは心許ない。
 受けられそうな依頼は討伐ぐらいしかないが、幸いナイフ一本でもこなせそうな討伐依頼があった。報酬額に不安はあるものの、無理をするよりは断然マシだろう。











 南東の森に現れたオークの討伐。報酬額は、討伐系では低めの銀貨3枚。中央都市からくる隊商のルートがこの森を突っ切る形になっているらしく、本日中に片付けてくれたら銅貨20枚の追加報酬が約束されている。
 薬の代金が一体どれぐらいかわからないが、ちゃんとした剣一本は買えるこの額なら大丈夫だろう。少なく見積もっても数日分の食費は残る。
 オークの数は確認されている限りでは四体らしく、うち一体は隊商の護衛が放った矢で負傷しているとのこと。
 新米冒険者にとっては最初の難関となるオークだが、怪力と徒党を組むことだけに注意していればよほどでない限り乗り越えられる壁だ。

「そこの君、ちょっといいかい?」

 もうそろそろ町の関所に辿り着くところで、アリスはふと背後から声をかけられた。
 ギルドからつけられていたのはわかっていた為、さほど驚きもせずゆっくり振り返り、そこにいた二人組の男を見てアリスは首を傾げた。

「何かご用ですか?」
「いや、対した用があるわけじゃないんだけど」

 最初に声をかけてきた槍を持った男の背後から、優しげな笑みを浮かべながら剣を携えた男が歩みよってくる。男はアリスの目の前でしゃがむとどこか心配そうに眉を垂れ、言う。

「君、昨日ギルドカード作ってもらったばっかりだよね?」
「そうですけど……あの、それが何か?」
「いや、ギルドの依頼受けるの初めてみたいだし、いきなりオーク討伐なんて受けて大丈夫かなって思ってね」

 大丈夫かどうかで言えば大丈夫なのだが、とりあえずこの二人は自分を心配してくれているらしい。

「大丈夫ですよ? 心配してくださってありがとうございますね」
「いや、まあ、うん」

 怪しい格好とは言え、背格好はどう見ても子供。そんな自分を心配してくれているらしい男達に、アリスは満面の笑みで頭を下げた。
 そんなアリスに、男は苦笑を浮かべる。

「えと、それで、もし君が良かったらパーティー組まない?」
「俺らなかなか腕が立つから、依頼も大分楽になると思うんだけど」
「はぁ……えーと」

 本当に大丈夫なのだが、それでもこの二人は自分を心配してくれているようだ。さすがにそんな二人の好意を無為にする訳にはいかない。しかし、誰かと組むなんて今までになかったから足を引っ張ってしまいそうだ。
 とは言え、初めての依頼に少し不安を抱いていたアリスにとって二人の誘いは非常に魅力的だった。パーティー戦を体験してみるいい機械でもある。

「……じゃあ、よろしくお願いいたします」

 二人に内心で感謝しつつ、アリスは深々と頭を下げる。

「んじゃ、決まりだな」

 聞こえてきた男の声は楽しげなもので、アリスもそれに釣られるように笑みを浮かべた。











 舗装された道が通った南東の森はアリスが知っている森と比べると大分明るいところであった。とはいえ、道から少し離れた先は樹々によって光が遮られているせいか薄暗く、息を潜められれば発見は難しくなる。
 槍の男アルドーと剣士のブレッドはここに来るまで色々なことをアリスに話してきた。曰く、駆け出し冒険者の為になる話、それぞれの依頼のアドバイス、良い宿の見つけ方、果てには出身地やら自分たちのことまで。
 森についてからはさすがに警戒しはじめたのか口数が減り、見知らぬ者との会話に疲れていたアリスにとってこの沈黙は嬉しいものであった。会話自体は楽しんでいたが、会ったばかりの彼らの相手は必要以上に疲れるのだ。

「……来るぞ」

 やはり一人の方が気楽だ、そう考えたその時アルドーが銀色に輝く槍を構えた。アルドーの注意でブレッドが剣を抜き、アリスが僅かに重心を落として身構える。

 間もなく、藪の中から四体のオークが出てきた。情報通り、一体のオークが左足を引き摺っている。
 アリスたちを見つけたオークは皆威嚇の声を上げると、すぐさま一体が真っ直ぐこちらに向かって走ってきた。あとの三体は様子見か、もしくは負傷した一体を庇っているのかその場から動かない。

「アリスちゃんはそこで見ときな!」

 そう叫んだブレッドが、オークの懐に飛び込んでいく。
 負傷した一体に向かおうと足に力を込めていたアリスは、ピクリと身体の動きを止めて2、3歩下がった。連携を知らない自分が迂闊に飛び込むのはよくないと判断し、彼の言葉に甘えることにしたアリスは後方の三体に注意しながら二人の動きを観察する。

 一足先に踏み込んだブレッドはオークの拳を剣の腹で受け、その反動を利用するように脚を斬りつけ、バランスを崩したオークの背中を袈裟型に斬り下ろす。背中の傷は浅いものではあったが、脚の傷は深く確実にオークの機動力を奪っている。
 オークの絶叫が森に響くや否や、怒りを称えたオークがブレッドに向かって怪力を秘めた拳を振るうがあっさり避けられ、そこに横から迫ったアルドーがオークの首元に渾身の突きを放つ。
 潰れたような鳴き声と血が吹き出す音が深い森に吸い込まれ、呆気なくオークは崩れ落ちた。
 息が合った連携に思わず見とれてしまったアリスだが、その奥のオーク三体が一斉に動き出すのを見て気を引き締める。

 仲間を殺されて頭に血が上ったオークが真っ直ぐに突撃してきた。単純な動作故に行動は読みやすいが、巨体が三体も突っ込んでくるのはそれだけでも十分脅威だ。

 三体のうち、唯一斧を持ったオークがブレッドに向かう。アルドーも負傷した一体に貼り付いたが、横から来たもう一体の蹴りを避けるべく大きく後退。それを見て負傷した一体が一番小柄なアリスへと目標を変え、ぎこちなくもこちらに向かって走ってきた。

 いくら負傷したオークとはいえ、力の強さは身体の小さなアリスとは比べものにならない。
 その怪力が振るう拳は掠っただけでも相当なダメージになる。小柄な身体でまともに防御するなんてできるはずもないし、単純な力比べに出れば数秒も持たずに潰されるだろう。

 アリスはすうっと息を吸うと、オークの動きを見極めるように目を細めオークが近づくのを待つ。
 そして、いよいよ目の前まで迫ったオークが叩き潰すかのように拳を振り下ろしてきた。アリスは負傷した脚の方に向かってそれを躱したが、すぐに横殴りの追撃が視界に入る。落ち着いて回避行動を取るアリスだが、負傷した脚に負担がかかったのか途中でガクンと膝が曲がり、しゃがんで避けようとしていたアリスの肩口にオークの左腕が迫った。しかし、間一髪オークの曲がった膝を蹴って身を捻りながら飛んで躱したアリスは、空中で体制を立て直す最中にオークの頭に両手を添えると雷の初級魔術を行使。
 ピンと身体を直立させ、尋常ではない痙攣を起こしたオークは声にならない断末魔を上げながらどさりと地面へと倒れた。まるで重さを感じさせない動きでそれと同時に着地したアリスは、残る二体へと目を向ける。

「……ふぅ」
「やるじゃないかアリスちゃん!」

 どうやら残る二体も片付いたようで、血を吹きながら倒れる姿が見えた。
 返り血を浴びたブレッドの意外そうな声に照れたような笑みを返し、無事アリスのギルドの初依頼は終了したのだった。


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