「最近、元気がないね」
と芳江ちゃんに言われた時、オレは泣きそうになった。
「いや、はははは。そんなことねえよ」
オレはムリして笑顔を作った。
すると、芳江ちゃんはほっとした。
「大丈夫そうね。それじゃ」
去ろうとした。
「ちょっと待って」
芳江ちゃんが立ち止まった。
「なに?」
「いや、なにというか、ははははは」
オレはムリして作った笑顔を強調した。本当は大丈夫じゃない、という所を強調した。
「なに? なにか用なの?」
なんだか、芳江ちゃんは怒ってる。
「あの、その、実は、先日、犬のジョンが死んだんだ」
「そう」
オレは悲しそうな顔をあえて作った。
「大丈夫?」
芳江ちゃんはやさしく尋ねた。
「ジョンってすごく辰夫くんになついてたでしょ。辰夫くん、落ち込んでない?」
「いや、ははははは」
オレはまたムリした笑顔を作った。
「はは。大丈夫だよ。大丈夫。オレがそんなことでヘコむと思う?」
「そう。よかった」
芳江ちゃんはほっとした。
「それじゃ」
立ち去ろうとした。
「ちょっと待てよ!!!」
オレは大声で怒鳴った。
そしたら芳江ちゃんも大声で返してきた。
「なによ!!!!!!」
「なによじゃないよ! なんだよ。さっきからその態度は!」
「は?」
「こっちはムリして笑ってるんだ。ほんとは大丈夫じゃないんだよ。なのに慰めてくれないなんてそれでも女かよ!」
「うるさい! 男のくせにグダグダ言うんじゃないよ! どう見たって大丈夫じゃないの、そんな口たたくくらいなら。あたしだって忙しいのよ!」
「な、なにい!」
二人はにらみ合った。
はっけよい、のこった!
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