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第20話:スーパー
阿笠邸に帰り、ドアを開けようとしたが、鍵がかかっていた。
合鍵を用いて中に入り、一声かけてみたもののやはり返答はない。
どうやら博士は出かけているようだ。
そういえば、今朝博士に昼過ぎから出かけると言われていたのをすっかり忘れていた。
私は荷物を置いて白衣に着替えるなり、いつものように早速地下の研究室へ向かった。


いつものように……。


いったいどれほどこの繰り返しを続けてきたのだろうか。
学校から戻れば、即座にこの部屋に閉じこもり、PCと向かい合って作業を進める。

もちろん、そんな繰り返しが嫌なわけではない。
APTX4869という私が開発した薬によって、工藤くんの日常を破壊してしまったことは紛れもない事実。
彼は、お前のせいじゃないと言って笑ってくれたけれど、その解毒剤を開発することが私の義務であることに違いはないから。

しかし、今日も格別な収穫を得ることはなかった。
もうその開発は頭打ちともいえる状況まで進んでいるのが事実であった。

一時的に元の姿に戻せる解毒剤ならば完成した。
けれどもその効果はあくまで一時的であり、一日とすらもたない。
いや、既に幾度か戻ったことのある工藤くんでは半日が限界かもしれない。

体内に解毒剤に対する耐性ができてしまえば、もう元の姿へと戻ることは不可能になる。
正直、工藤くんはその一歩手前まできている。
きっと彼のことだから、工藤新一の姿で蘭さんにいいところを見せたいのだろうけど……。

このままでは、完璧な解毒剤が完成したとしても、一生江戸川コナンの姿で過ごすことになってしまう。
だから一刻も早く完成品を作りたいのだけれども、そのためには手元の資料では不十分だ。
やはり組織を壊滅させて、APTX4869に関するデータを全て集めないことにはどうにもできない。
しかし、それがどれほど難しいことであるかは、組織の一員だった私自身が一番よく分かっている。


そんなことをあれこれと考えていたら、結局ほとんど何も進まないうちに、時刻は17時を回っていた。
博士はまだ帰ってきていないが、そろそろ夕飯の支度を始めなければ。
研究室を出て階段を上がり、再び外出着に着替え買い物の準備をした。

外に出ると既に日は落ち、冷たい北風が打ち付けてくる。
その寒さに耐えるように両手を擦り合わせ、スーパーの方へと進んでいった。

住宅街を抜け、繁華街に出ると街は一面クリスマスイルミネーションに彩られていた。

もう12月だものね……。

そんな一抹の寂しさを覚え、気付けばスーパーの前に到着した。

入口の自動ドアを通り、買物かごを手にした瞬間、

ビクッ……

背筋の凍るような悪寒が体を走り抜けた。
そう、それは組織の人間が近くにいるときに感じる私特有の感覚。


誰、いったい誰なの!?
私、見張られてる?


しかし、その思いとは裏腹に、あまりの恐怖ゆえに辺りを見回すことすらできない。
慌てて携帯電話をポケットから取り出し、震える手で発信履歴からコナンの番号を探しだした。
そして助けを求めようと、発信ボタンを押そうとした瞬間、別の考えが頭を過った。


今ここに工藤くんを呼んで、彼まで組織に見つかるわけにはいかない。
やっぱりこの場は私一人で……。


そう思い直すと、携帯電話を再びポケットに戻し、周囲に怪しまれないよう買い物を始めた。

しかし、内心それどころではない。
周りの様子ばかりに気を取られ、何をかごに入れればいいのかすら分からないほどの混乱状態まで陥っていた。

結局、材料ではなく出来上がった弁当を二つだけ入れ、急いでレジに並んだ。

とにかくこの場から少しでも早く離れたい。

しかし、そんな一心を裏切るかのごとく、夕刻のスーパーは主婦たちで溢れかえり、どこのレジも長い行列を作っている。
仕方なく中程の列の最後に並び、祈るような気持ちで順番を待った。

そして一人目が会計を済ませ、一歩前に進んだところで肩を叩かれた。

「君は……」
いつも読んでくださいまして、本当にありがとうございます。20話まできましたが、全然話が進まずに申し訳ありません。これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。