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第四章『遥かなる戦記』
第四章『遥かなる戦記』

十数年という歳月は子供世代を完全に入れ替える。
戦争を肌で知る子供は当たり前だが一人もいない。
戦争は記憶から知識、歴史へと姿を変えていく。

三十四年に創刊された『マガジン』『サンデー』をはじめとする
少年週刊誌はグラマンのごとく速度と物量で月刊誌を駆逐していった。
ニュータイプの戦記まんがと『大特集』『大図解』が数年前とは
比べ物にならない量の軍事知識を子供たちに与えていく。

大空のちかい…加藤隼戦闘隊に属する少年空中勤務者の活躍を描く。
一式戦の武装の非力さを感じさせず頑張る。きめのシーンではバックの空に
加藤隼戦闘隊の歌の歌詞が流れる…いや、流れはしないけど…
吉田竜夫?久里一平?いずれにせよ竜の子プロ作品

零戦レッド…特攻を拒否して脱走…すごい!…した五人の少年航空兵が
 孤島の秘密基地から真っ赤に塗った零戦で出撃、連合軍機を撃ち落とす。
なぜかはじめのライバルはカーチスP-40…特攻が始まってるんだから
十九年秋以降だもの、P-40はないだろう。好きで乗ってるといわれれば仕方ないが。
後述の『紫電改のタカ』でも最初のライバルジョージ君の愛機はP-40…
どうも初期の中ボスとして手頃らしくそれなりに戦い
しっかり負けてくれる。作者は貝塚ひろし

ゼロ戦太郎、はやと、仮面…基本的に皆同じ。少年航空兵がゼロ戦にうちまたがり、
ばったばったと敵機を撃ち落とす。違いは名前が太郎かはやとか、仮面で顔を隠した
謎の人物…うーん、すごい!…かということ。はやとはアニメになった。
作者はタイガーマスクのあの人

二世部隊シリーズ…後に松本あきら(零士)が描くまで欧州ものは
ほとんどなかったから新鮮だった。収容所の家族のために奮闘する
ミッキー軍曹以下の日系二世の少年兵士たち。ちょっとバタ臭い絵がよくマッチしてた。
ドイツ軍も頑張るがTVドラマのコンバット並みに念入りに負けてくれる。
ワイルド7の望月さん

紫電改のタカ…敗色濃い太平洋戦線、少年航空兵の滝城太郎は新鋭の局地戦闘機
紫電、紫電改を操り米軍に戦いを挑む。それまで子供達にあまり知られてなかった
紫電改はインパクトがあった。緒戦の優越がくずれた零戦の末路…という
知識はあったから、ああ、紫電改が一年半ぐらい早く登場していれば…と
妄想を抱かせるに十分だった。
ストリーは全体に妄想度が高いのだが、射撃時に飛び散る薬莢など
本物っぽさを感じさせてしまう絵の力技で読者を引っ張っていった。
それにしても、主人公の滝は空戦時単独行動を好みかなり好き勝手やって
いたのだが、最後指揮官のくさい泣き落としで割とあっさり特攻に
いってしまうのが納得いかなかった。真っ白になるまで戦ってほしかった。
ちばてつやさん

あかつき戦闘隊…反戦とまでは言わなくても、どう読んでも戦争の悲惨さを
描いているこの作品が、戦争漫画というだけで悪書にあげられている新聞記事を
読んだとき、世の教育者や反戦運動家と言われる人たちに深い疑惑をいだいた
ものである。『こいつらは馬鹿でなければ無能だ』…と。
作者は『紅き血のイレブン』の園田光慶そのだみつよし
この人はあることで漫画の歴史に名を残している。
デビューしてしばらくは『ありかわ栄一』というペンネームだったのを
何を思ったか上記の名前に変えたのだ。
ペンネームの変更が珍しいことなのかはわからないが、異様だったのは
それからしばらく掲載作品に、いちいち『ありかわ栄一あらため園田光慶』と
断り書きを入れていたことだった。どういうこだわりだったんだろう。
のちにギャグ漫画の喜国雅彦が麻雀劇画誌に描いたパロディ
『ばかつき戦闘隊』は傑作だった。

サブマリン707…潜水艦まんがの嚆矢。人間ドラマの部分はおまけ。
敵の動きを読み発射される魚雷、逆に迫り来る敵の魚雷。
米軍払い下げとおぼしき海上自衛隊のおんぼろ潜水艦707こと
うずしおが秘密結社(最初はドイツ系、後アメリカ系とかいろいろ)の
潜水艦と繰り広げる激闘がすべて!面白かったー…特に初期は。

同じ作者の『海底戦隊』も途中で終わってしまったがなかなかだった。
こちらは護衛艦と秘密結社…こればっか…の潜水艦との激闘。
不利になった護衛艦が体当たり。ドラマが希薄な分、映画の
『眼下の敵』よりいさぎよかったりして。
小沢さとるさんの作品

少年が初めて潜水艦を知ったのは5、6歳のとき。
『沈んでもまた浮かぶ』というものだった。
それなら無敵なのでは…という誤解が解けたあとは失せていた興味を
取り戻させたまんがだった。

『戦艦大和の秘密』『零戦の秘密』果ては『第一航空艦隊の秘密』なんて
かなりマニアックなとこまでいった『大図解』は知識にビジュアル面での
肉付けをしてくれた。

真珠湾攻撃から始まる戦記もばらついていた知識をあるべき場所に
順序立ててはめ込んでいってくれた。

マレー沖で沈んだ英戦艦はプリンスとオブとウェールズ…ではなく、
一隻の名前だったということ。

そして、嗚呼……ミッドウェー
もし利根四号機が…もし…
架空戦記の必修課程

ガダルカナル戦…三川艦隊の65点の答案…

…で、なぜかマリアナはとばして(つらすぎるから?)レイテ沖海戦

『回天』『桜花』などの特攻兵器、B-29.大和の最期…

ブームが去っていった頃
満腹した?少年はこのあとしばらく戦記からはなれることになる。

実際の戦争…と、実際になるかもしれない『最終戦争』の足音が
新たな妄想を呼び起こすまで…

つづく


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